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4月ももう終わりですね。あっという間に2024年も3分の1が終了しました。
さて、本日はちょっとデザインとかブランディングとかとは離れたお話になってしまっているかもしれません。
でも、ぜんぜん関係なくもないですよ。本質的にはむしろ深〜いところでつながっているので、役に立つお話にはなっているかと思います。
しかしながら、好き嫌いが分かれるお話なので、イヤだなと思ったら読まないでも大丈夫です。
今日は「媒体」というものについてお話したいと思います。
コロコロニュースをかねて早速本題です。
政府がお注射を推奨する動画をYouTuberにつくってくれ、お金を出すよ、といっていたことが判明してしまいました。
これは、以前も行政が広告代理店に発注していた記録が出てきたとして紹介しましたが、なんとつい最近、役人が国会答弁で「動画9本で3200万払った」とペロリンチョしてしまったのです。
で、ネットはこのニュースで大炎上です。当然地上波ではほとんどやっていません(ちょっとやったっぽいけど)。
では、なぜこれが問題なのか、なぜお役人さんはYouTuberにそれを依頼しようと考えたのか。そして、それがブランディングとどう関係するのか、というお話をしてみたいです。
●まずは、何があったのか?どんな騒動なのか?
テレビでほとんどやらない、ということは、何があったか知らない方も多いと思います。ここで、どんなことがあったかをまとめてみましょう。
まず前述のように、どうやら行政が広告代理店を使ってお注射を推奨するプロモーションをYouTuberにさせていたのではないか、という証拠らしい書類が出てきてしまいました。
この書類には厚労省の役人の名前が記載されています。
政府や厚労省が税金を使ってインフルエンサーにプロモーションさせていたのではないか、ということは以前から疑われていたことで、厚労省はそれはないと過去の国会答弁で否定していました。
その後、私もチャンネル登録しているYouTuberが、「そういう話が来たことがある。過去2番目くらいに高い報酬(動画1本でおそらく1000万近い)だったが、自分が良いと思えないものは勧められないので断った」と暴露してしまいました。
これはたいへんだとなり、ネット上ではさまざまな追求がはじまりました。そんな中、つい先日参政党の神谷氏が国会質疑でその疑いを質問した際、お役人さんが動画9本で3200万支払ったとペロリンチョしてしまったのです。
しかしながら、これは氷山の一角だろうと見られています。こんな情報も。
これを受けて、多くの「怪しい」YouTuberが当時のお注射推奨動画を非表示にしたり削除しだしたのです。
2億回打っても大丈夫!(100人乗っても大丈夫的な笑)といったデマ太郎は、こんな言い訳をしております。
しかし、なぜ国や行政はYouTuberを使おうと思ったのか?なぜテレビはこれをほとんど報道しないのか?
これは、なぜテレビCMでは有名なタレントを起用するのかということと、実は本質的には同じ答えなのです。だからこそ、ブランディングと関係してくるお話なわけです。
その答えとは何かというと、有名なタレントやYouTuberは「媒体」だからです。
●「媒体」とは?とても恐ろしい「媒体」のもつ力
「媒体」とは、「媒介するもの」なわけですが、これだと本質を捉えられない表現です。まるで、英語の直訳のような感じ。
ちなみに「媒体」はワタクシの大好物の「フワフワ語」です。「ブランディング」とか「コンセプト」とか、こういう意味がはっきりしづらいフワフワした言葉を定義づけするのがワタクシのライフワークです。
「媒体」をもう少し具体的な表現に変えるならば、「情報をなかだち(媒介)するもの」です。ただ、これでもまだ私は本質的な表現ではないと考えます。
さらにもう少し具体的に考えてみます。「媒体」をそれこそ英語に直訳すると、「メディア」となります。
こうなってくると具体例がイメージできると思います。そうです。新聞やテレビなどの「メディア」は媒体です。まさに「情報をなかだち(媒介)するもの」ですね。
で、「媒介」のほうをもう少し掘り下げて辞書で調べてみると、ちょっと難しい言葉で説明されています。そのうちのひとつがこちら。
- ヘーゲル哲学で、存在や認識が他のものによって条件づけられて成り立っていること
「ちょっと何言ってるかわからない(サンドイッチマン)」と思うかもしれません。これを読み解くならば
- 「存在や認識(=その価値や価値の認識)」が「他のもの(=媒体の持つイメージ)」で条件づけられて成り立っている
となります。でもまだわかりづらいですね。
たとえばある商品があったとして、この商品がお昼のワイドショーで取り上げられたらどうでしょう?多くの人が「良い商品に違いない」と信用するのではないでしょうか?
ここで、商品の価値はよくよく考えたらテレビに出ようが出まいが変わりません。もしかしたらその商品より良い商品が存在するかもしれません。しかし、多くの人が錯覚します。「いい商品だ(ろう)」。
これは言い換えるならば、「価値(の受け取り方=人々の認識)に変化が起こっている」ということになります。つまり、「媒体」とは「価値に変化をもたらすもの」と言い換えられます。
そして、これは誰もが想像できることだと思いますが、テレビや新聞に取り上げられたら「認知」が圧倒的に加速します。それはまるでブースターのようです。
まとめると、「媒体」とは
1.価値(の受け取り方=人々の認識)に変化をもたらし
2.その変化した価値をブーストさせる(拡散させる)
こういったものであるということです。「情報を媒介するもの」だとちょっと浅い解釈なわけですね。
さて、他にも「媒体」はたくさんあります。
小さいところだと、「紙」も媒体です。「紙媒体」とか言われますよね。何らかの情報を伝達(媒介)しているわけです。
「紙」が価値やその受け取り方に変化を与えることがあるのでしょうか?実はあるんです。
人間の脳の機能から、厚い紙や質の良い紙を触ったときと、薄い紙や質の悪い紙を触ったときとでは、その解釈が変わります。
つまり、そこに書かれている情報や情報の発信者に対する印象が変わるということです。
ビジネスの現場でいえば、パンフレットや名刺、封筒、パッケージなどに使われている紙の質は、企業価値や商品価値に影響を及ぼす、ということです。これは脳科学からわかっていることです。
他にも、たとえば「本」。これも媒体です。「ブックマーケティング」という言葉がありますが、本はマーケティングにも活用されます。
人々が本を読み、認識を変化させる。発行部数の数だけ拡散する、これが本の本質です。
よくビジネス書にアンケートハガキ的なものとか、オファー(特典)が書かれたはがきが入っていることがありますが、あれは本を使ってマーケティングを仕掛けているわけです。
歴史上もっとも成功したブックマーケティングは、おそらく「聖書」でしょう。
このような本の「媒体力」を恐れた人たちが何をやったかは、こちらのショート動画を見るとわかります。
「媒体とは価値(正確には価値の認識)を変えてしまう力を持つもの」という定義に着目したときに、実は他にも「こんなものも媒体なんだ!」というものがあります。
たとえば、ショッピングモールなどの施設。
そのショッピングモールが、大手が郊外などでやっている新しくてきれいで大きなショッピングモール(たとえば三井アウトレットパークなど)なのと、地元のお年寄りばかり来る小さくてくらい感じのショッピングモールだったら、どちらで買い物したいですか?
多くの人が前者だと回答すると思います。
実際に私たちのオフィスがある笹塚というエリアの駅前には、古くて小さいショッピングモールがあります。
弊社スタッフがここのショッピングモールに入っている店が「やばい」とよく言っていました。
「やばい」とは、そこのショッピングモールの店で売っているものの価値が「やばい(低い、ダサい)」という意味です。
よくよく考えてみましょう。たとえば三井アウトレットパークで売っているナイキのスニーカーも、そのショッピングモールで売っているナイキのスニーカーも、同じモデルの商品なら価値は同じはずなんです。
でも、そのスタッフがいうこともよくわかります。私もここでは買わないなと思ってしまいます。そこで買い物をしていることがイヤなのでしょう。
商品そのものというより、買い物するという価値に着目したときに、三井アウトレットパークと笹塚のショッピングモールでは違う価値の認識が発生してしまうのです。
ということは、やはりこういった施設も「媒体」といえます。
他にも「場所」も立派な媒体です。何のお店か聞かないで、経営するお店が
- 「表参道」にある
- 「新橋」にある
と言われると、それぞれ想像する店が違うと思います。業種が違うかもしれないし、業種は同じでも店の雰囲気などは違うものを想像するのではないでしょうか?
「表参道のカリスマ美容師」と言われるのと、「新橋のカリスマ美容師」と言われるのとでは、これもちょっと感じるものが違いますよね。「新橋のカリスマ美容師ってなんだよw」とすら思っていしまいます(笑)。
ちなみに、「媒体」が変化させる価値は「高いか低いか」ということだけではありません。
たとえば「らしさ」。こういったものも価値のひとつであり、「高いか低いか」では測れないものです。
「新橋」より「表参道」のほうが一般的に「価値が高そう」とイメージされやすいと思いますが(私は新橋大好きですよ笑)、たとえば「表参道」と「成城」だったらどうでしょう?
どちらもネガティブなイメージはないですよね(新橋も別にネガティブじゃないかもだけど笑)。そこにあるのは「らしさ」の違いになります。
価値の変化は「高いか低いか」だけでなく「らしさ」にも影響するというわけです。
●「〇〇」も媒体のひとつ
もう何が言いたいかおわかりかもしれませんが、前述したように有名なタレントやYouTuberを政府が使いたがるのは、彼らが「媒体」だからです。
お注射がとんでもないものだったことは、統計的にみても、多くのテレビにはでない有識者の研究からしても明白です。だからこそ、「媒体」を使って価値を操作したかったわけです。
ここで、過去のある事件が思い起こされます。「ペニーオークション事件」です。
覚えていますでしょうか?有名芸能人がある商品を愛用しているとブログで紹介して商品購入を促したものです。
CMとは違い、あくまでリアル、プライベートな情報だと装って、ウラでは芸能人がその商品の会社からキックバックをもらっていることが明るみになってしまい、騒動となりました。
これはまさに芸能人を「媒体」として商品の価値を高め、拡散して起きた事件でした。
心理学では「ハロー効果」というものがあります。
まさにこれが「媒体」の正体だと言っても過言ではないわけですが、有名人を起用した多くのテレビCMは、見る側もそれが「広告だ」と認識していますので、ハロー効果もまだ限定的だったでしょう。
ペニオク事件はそういう意味では「広告というリミッター」が外れ、人々の価値とその認識に大きな変化をもたらしてしまいました。
今回のYouTuberを使ったお注射プロモーションも、これとまったく同じ仕掛けであった上に、ペニオク事件と同様にちゃんと報酬も出ていたということがわかってしまったわけです。
さて、ここで、なぜ一部の芸能人が「干されるのか」「命を狙われるのか」を考えてみましょう。もうおわかりですね。彼らの「媒体力」には世の中を変えてしまうかもしれない大きなポテンシャルがあるからです。
たとえば最近であれば、「青汁王子」こと三崎優太さん。
彼はかねてよりネット上でお注射の危険などを訴えていました。最近では小林製薬の紅麹問題の欺瞞なども言及していました。
つい先日、バイク事故にあわれましたが、本当にただの事故なのかということが疑われています(煽り運転をされたらしい)。
他にも、ダウンタウンの松本人志さん(まっちゃん)。
彼はテレビで「子どもにお注射を打たせろなんて、とんでもない」といった趣旨の発言や、「コ□ナ関連予算の使途不明金を明らかにしろ」とテレビのワイドショーで発言していたからではないかということが疑われています(真相はわかりませんけどね)。
彼がやったことが、本当にメディアで報道されているとおりならば(本当にそうならば)、決して褒められたことではないかもしれません。しかし、「けしからん!」と怒っている人には直接的な被害はありません。
それよりも、お注射や政治家の裏金のほうが私たちに直接的な被害があり、よっぽど悪どいですよね。しかしながら、これもテレビという媒体力を使って価値の認識に変化を起こされてしまっています。
ちなみに一昔前の「不適切な時代(笑)」には、芸人や歌舞伎役者などは「浮気は芸の肥やし」くらいに言われていて、社会的にも比較的受け入れられていた様子がありました。
そういう意味では、「時代」というものもひとつの「媒体」と呼べるかもしれません。
さて、なんだかずっとコロコロニュースをやっている感じの回になってしまいました。もう少しブランディングについて絡めてお話すればよかったかもしれません(すんません)。
ひとつビジネスに役立てるとしたら、自社や自社の商品は、どんな媒体の影響を受けているかを洗い出す、というのは大切です。
その際に、「媒体」とはいわゆる一般的な「メディア」だけとは限らないよ、ということがポイントとなる、というお話でした。
今回はここまでです!
津久井
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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