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6月に入りました。私、来週には47歳になってしまいます。
起業したのは30歳でした。当時は「(30代の社長だなんて)若いですねー」と言われていましたが、当然ながら今は誰も言ってくれません(笑)。
今は見た目だけでも若いと言ってもらえるように筋トレにいそしんでいます。
さて、今週のコロコロニュース。
このまま日本はどうなってしまうのか。私たちの子どもの時代は、自分が努力さえすれば幸せを勝ち取れる時代なのか?それともどうあがいてもムリなのか?
私の師匠である故伊吹卓先生が教えてくれた理論があります。それは、
- 親、苦労する → 子、楽する → 孫、貧乏する
というものです。時代はこの3つを繰り返すと。。。さて、今の時代はどこでしょうかね。
今の時代=私たち世代は「孫、貧乏する」に当たると私は考えています。
私のおじいさんの時代は、戦争がありました。それは大変な苦労だったでしょう。我々の父親世代は、生まれたときは戦後で大変だったかもしれませんが、非常に楽な時代だったと考えています。
だって、高度経済成長の時代ですからね。頭を使わずに体だけ動かしておけば、生活がどんどん豊かになった。豊かになればなるほど、自分たちの時代が「正解」だと考えます。
そのウラでは、「教育」を使ってバカが量産されます。「バカ」とは「自分で考えられない人」です。答えは先生や上司がくれたり、教科書や本に載っていると思い込んでいる人です。
実際に戦後の日本の教育は、考えることよりも記憶することに重きが置かれました。
そして今の時代、確実に貧乏ですよね。日本は30年間、平均給与が上がっていません。増税や社会保険料のアップで、実質賃金は下がっています。そして今、考える力を失った日本人をさらに貧乏にするための施策が行われています。
こうなると、私たちの子どもの時代はどうなるか。「親、苦労する」の時代に戻るというわけです。
これらは、大きな時代のくくりとしても起こりますが、家族単位でも起こります。いくら時代が良くても、「子」がバカだと、つまり、親が子を甘やかして苦労させないと、その子の子(つまり孫)は貧乏になります。
昔の人は偉大ですね。「若いうちの苦労は買ってでもしろ」。そのとおりで、これは、自分を常に「親、苦労する」のポジションに置いておきなさいよ、という意味だと私は解釈しています。
「苦労しない」ということは、「楽する」か「貧乏する」なわけですから、その子どもは「貧乏する」か「苦労する」のどちらかになります。
だから私は、自分の子どもたちに悪い影響を及ぼさないために「苦労する」を選ぼうと、この話を聞いたときからずっと決めてきました。
おそらくですが、どの時代の人間でも常に「苦労する」ことを厭わないメンタリティが、健全な世の中をつくるのではないでしょうか。
だいぶ前置きが長くなりましたが、今日のお話。
みなさんはコーヒーはお好きですか?
私は好きです。日に1〜2杯くらい飲むでしょうか。現場仕事をしていたときは外出も多かったため、1日に3〜5杯くらい飲んでいたかもしれません。
このコラムを書くときも、いつもだいたい会社の近くのエクセルシオールカフェに入って書いています。
今日は喫茶店とデザインのお話です。
で、いきなり問題発言をしてみたいと思います。
●繰り返す3つの時代「モノ→デザイン→色」
スターバックスの話をする前に、冒頭の話に絡めて。。。
伊吹先生が「時代は3つを繰り返す」という意味において、もうひとつ私に教えてくれたことがあります。それはこのコラムで何度かお話していますが、ビジネスにおいては、時代は、
- モノの時代 → デザインの時代 → 色の時代
と移りゆくというものです。
「食べ物を腐らせずに保管する機能」や「洗濯板でゴシゴシしなくても洗濯できる機能」がなかった時代があります。この後、新しい技術をもった商品として「冷蔵庫」や「洗濯機」が発売されました。
このころの商品は、デザイン性は問われません。「機能そのもの」をほしいと感じる人にとって、デザインは関係がないからです。
ほどなくすると競合商品が表れます。そして比較されます。比較されるから差別化の必要が出る。差別化はその多くがデザインで行われました。
もちろん、オプションの機能や価格によっても比較されますが、オプションの機能も価格も、技術が伴ってはじめて成立します(利益が出る)。デザインで差別化するほうがコストと時間がかからないわけです。
デザインも飽和になると、人は「みんなと同じだけどちょっと違うもの」をほしがります。機能もデザインも損ないたくありませんが、他の人とちょっと違いを出したくなります。その代表格が「色」でした。
「色」は私の解釈では「バリエーション」とも言いかえられます。
少し整理すると、
新しい技術により、今までになかった革新的な商品が登場する。デザイン性はほとんどなくても売れた。
↓
【デザインの時代】
モノが飽和状態になってくる。どのメーカーからも同じような機能のモノが販売される。つまり、比較される。結果、デザインで差別化されているものが評価される。
↓
【色の時代】
色は「バリエーション」。デザインも飽和状態になると、バリエーションによる差別化を試みるようになる。
↓
新しいものを切望し、またモノの時代へ
戦後の動きから現代までを見てみましょう。
「白物家電」などなど。テレビ、冷蔵庫、洗濯機、掃除機などが登場。
↓
【デザインの時代】
テレビに木目調のデザインが施され、爆発的に売れるetc
↓
【色の時代】
松下電器が冷蔵庫に好みの色を付けられるキャンペーンをする。カラフルなマーカーや文房具がやたらと売れるetc
↓
【モノの時代】
パソコン、携帯などの登場。デザインは通り一辺倒。パソコンならほとんどがアイボリーのバカでかい箱だった。
↓
【デザインの時代】
アップルがiMacを販売。携帯メーカーが2つ折り携帯などデザイン性を追求。
↓
【色の時代】
アップルがiMacのカラーバリエーションを展開。PANTONE携帯が発売される。PSPやDSなどの携帯ゲーム機のカラー展開。デコレーション携帯なども流行る。
ざっくりいうとこんな感じでしょうか。
ちなみに「PANTONE携帯」ってわからない人も多いかもなので、グーグル先生の画像検索結果を載せておきます。
色の時代を象徴するような、イロチ(色違い)だらけの携帯
iMac以降のアップルの戦略は秀逸ですよね。当時かっこよすぎて爆発的に売れましたが、カラーリングは1色のみでした。そして頃合いを見計らって、カラー展開されました。
青いのが初代、カラフルなのがカラー展開のもの(こちらもグーグル先生より)
これ、iPhoneもまったく同じです。発売当初はブラックのみ。すぐにホワイトが出ましたが、基本はその2色でした。つづいてゴールドがでました。
今のようにカラーがたくさんになったのは、わりとつい最近です。私の好きなバイきんぐというお笑い芸人のコントでも、
「風のうわさで聞いたんですけど、あいつiPhoneに変えたらしいですよ、色は黄色だそうです」
「それiPhoneじゃないねえ!!」
というクダリがあり、当時大爆笑しました。今は通じないネタになってしまいました。
補足しておくと、「モノ→デザイン→色」は「時代」という大きなうねりにも影響されますし、「商品(業界)単位」の小さなうねりにも影響されます。「親、苦労する→子、楽する→孫、貧乏する」が時代でも家族単位でも起こるのと同じです。
●問題発言「コーヒーがおいしいから流行ったのではない」の真意
これは何を表しているかというと、ものすごい重要なのですが、人間は
「ないものを補いたい」
「足りないものに意識が向く」
という、「補完の原理」という心理があります。
つまり超絶平たくいうならば、自分の会社や商品を売れるようにしたければ、相対的に足りていないと思われているものを「満たせまっせ」と伝えればよいとなります。
モノが足りない時代にはモノを補うことに集中し、モノがあふれると、心を満たしたくなる。その気持ちを補うのがデザインの役割だった。そして、デザイン的に満たされると「オリジナリティ」で心を満たしたくなるというわけです。
で、スターバックスの話へと入っていくわけですが、もう一度、問題発言をおさらいしましょう。
さて、「スターバックスは何を補ったのか」、これが問題発言の真意だというわけです。
スターバックスが補ったもの、なんだと思いますか?それは問題発言にもあるとおり「おいしいコーヒー」では断じてありません。
もちろんスターバックスのコーヒーがまずい、というつもりはさらさらありません。まあ、私は飲みませんけど。
理由は遺伝子組換えのコーヒー豆を使っているというウワサだからです。アメリカのモンサント社という遺伝子組換えで有名な悪名高い企業からコーヒー豆を買っていたそうです。モンサントは今はドイツのバイエルに買収されました。史上最悪の除草剤「ラウンドアップ(成分はベトナム戦争の枯葉剤で使われた)」を販売している会社です。ラウンドアップは世界中で禁止されています。日本を除いて。。。(怖)
それはいいとして、味としては「マズい」と感じるものにはなっていないはずです。世界中にユーザーがいるわけですから。
しかしながら、おいしいコーヒーならば、スターバックスが日本に上陸する前から多くのコーヒー専門店が提供していました。
エクセルシオールカフェを展開するドトールのコーヒーは、個人的にはかなりおいしいです(遺伝子組換えじゃないことを願う)。
ドトールは、コーヒー豆を直接買い付けたり、自社農園を持っていたりします。自分たちで管理していますから、焙煎の方法は違いがあれど品質管理はしっかりしているはずです(くどいけど遺伝子組換えじゃないことを願う)。
私が独立する前の会社の元上司は、その会社から転職し、30代にしてドトールコーヒーの役員一歩手前まで行きました(今は起業して社長です)。
その元上司がコーヒー通の知人によく言われたのが、「ドトールのコーヒーはうまい」らしいです。元上司はそれほどコーヒーが好きなわけでも詳しいわけでもありませんでしたが(笑)。
他にもこだわりのコーヒーを出す喫茶店など、ゴマンとあったはずです。髭を蓄えたマスターがポットからコーヒーを注いでいるイメージとかありますよね。おいしいコーヒーを出しそうですよね。
こう考えてみると、スターバックスが補ったものは「おいしいコーヒー」では断じてない、ということがわかると思います。それはすでにドトールや既存の喫茶店が提供していたわけですから。
スターバックスが「ドトールよりおいしいコーヒーです!」というメッセージを発信していたら、今のようになっていたでしょうか?
「差」ではなく「違い」で勝負しなければならない、これは私のブランディング理論の重要なポイントのひとつです。
●ドトールコーヒーとスターバックスは、業界に対しそれぞれどんなインパクトを与えたのか?
では、スターバックスは何を補ったのでしょうか?
それは、「コーヒー業界」「喫茶店業界」の3つの時代をつぶさにみていくとよくわかります。
ドトールコーヒーが登場する前にも、おいしいコーヒーを出す店は当然ありました。おしゃれな喫茶店もあったでしょう。
ドトールコーヒー登場以前の「喫茶店」という業界は、その専門店の多さからもすでに3つの時代の「色」の時代に突入していたと私は考えています。
そして一周回って「喫茶店業界」で新しい「モノ」を提供したのがドトールコーヒーでした。
ドトールコーヒーは、喫茶店の中でも価格の安さと早い回転をウリにした「喫茶店のファスト化」でポジションをつくった業態でした。
それまでの喫茶店は、価格もそこそこだし、時間をとってゆっくりと行く店がほとんど。それに対し、お昼の合間や仕事の合間においしいコーヒーをサクッと飲めるのがドトールコーヒーだったというわけです。
この「喫茶店のファスト化」という、一周回って「モノの時代」に戻った喫茶店を「デザインの時代」に引き上げたのがスターバックスだったというのが、私の見解です。
スターバックスが日本に上陸したばかりの話ですが、当時大学4年生だった私はスターバックスのお店になかなか入れなかったことを覚えています。
「おしゃれすぎて入れない」
お客さんもみなおしゃれに敏感な人やプチセレブのような人ばかり。スターバックスは今までの喫茶店では表現していないことをしていて、その「表現していないこと」を足りないと感じていた人がお客さんだったのです。
コーヒー業界は「ファスト化(というモノの時代)」が飽和し、その当時の「ファスト化」したコーヒー業界にはない革新的なデザインをスターバックスは持っていました。スターバックスの登場をもってして、この業界は2周目の「デザインの時代」に入りました。
もちろん、表面的なビジュアルの話だけではなく、その向こうには
「ファッショナブルな店で上質のコーヒーを提供し、コーヒーを飲む時間そのものをファッショナブルにする」
という意図を持っていたはずです(ちなみにスターバックスのコンセプトは、家でも職場でもない「サードプレイス」というものです)。
これをデザインで目に見える形にした結果、既存のコーヒー店に「足りなさ」を感じていた人たちが一気に集うことになりました。相対的にもかなり目立つことになり、通常のコーヒー店でも特にもの足りなさを感じていなかった人々へも影響を及ぼしました。
今では定番のブランドとなりましたが、当時は人々はおいしいコーヒーを飲むことに満足感を覚えたのではなく、スターバックスのロゴ入りのカップを持ってコーヒーを飲んでいることに優越感を感じることで補われたのです。
スターバックスの常連客がみんな「コーヒー通」だとは考えづらいですし、日本人の「コーヒー通」人口がそんなに多いとは思えません。なのにみんなスターバックスに行く。おいしいコーヒー好きな「コーヒー通」だけをターゲットにしていたらこうはならなかったはずです。
スターバックスがコーヒー以外の商品をラインナップしていて、それが売れるのも、コーヒーがおいしい店だからではありませんよね。
ちなみに、だからといってコーヒーがまずくてもいいわけではありません。商品力がなければそもそもリピートされませんから。
おいしいコーヒーで満たされた後、次は何で満たされたいかという話で、おいしいコーヒーは大前提となってしまったということです。私はスタバ飲みませんけど(くどい)。
さて、御社の業界は今は何の時代ですか?
今回はここまでです。
津久井
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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