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いやー、ここ1週間呑みすぎました。
実は先週の金曜日から出張に行っておりました。福岡から大阪、神戸に行き、最後に名古屋。で、昨日東京に到着(でそのまま呑み)。
どのエリアも人でわんさか賑わっていました。福岡空港では、保安検査場を通るまでに30分以上の長蛇の列ができていましたし、大阪のホテルはチェックインするのにやはり30分待ちの列ができていました。
ワクワクする注射を打つとホテル代が安くなるキャンペーンのおかげで(せいで)、すごい人出。つまり誰ももう新コ□を怖がっていませんよ。
ちなみに、ワクワクする注射を打つと安くなるけど、打たない人のホテル代はどこも逆に値上げしているようです(安くなった分を打たない人で補填している)。これって差別のはじまりでは?(まあホテル代安くなるのは陰性証明でもいいらしいけど。)
この程度ならまだいいかとも思ってしまうけれど、こういうのが他にも色々出てくると明らかな差別になります。
だから、ワクワク注射を打った人だけ安くなるというのは「この程度ならまあいいか」という程度問題で済ますべきではなく、仕組みとして、構造として明確に反対。「この程度なら・・・」でどんどんエスカレートしていくパターンです。気がついたら取り返しがつかなくなるパターン。
ちなみにこの1週間でも感じるシーンが多かったのですが、勘のいい経営者はやっぱり打っていない人けっこういます。Facebookなどで見たり、直接聞いたり。
というわけでコロコロニュース。
日本もこうならないとは限らない(動画つき元のツイートはこちら)
さて、本題です。
本日は人間の五感とデザイン(見た目)のお話をしてみます。人間は知らず知らずのうちに五感から無意識的に影響を受けていて、それで行動まで変わってしまうことがあるよというお話。
●スーツの柄はなぜ縦じまなのか
●数ミクロンが決めるサンドイッチの売れ行き
●コーヒーの味をかえてしまう見た目の力
●なぜ「サントリーモルツ」は売れ行きが悪かったのか?
●面接希望者に逃げられた話
の5本立てでございます。それでは行ってみましょう!
●スーツの柄はなぜ縦じまなのか
スーツの柄ってなんで縦じまなのでしょう?
そもそも横じまのスーツって見たことありますか?もちろんゼロではないでしょうが、ほとんど見かけないですよね。来ている人はたいていお笑い芸人さんとか、喜劇俳優さんだったりしませんか?
そう、なんでかはわかりませんが、世のスーツの柄のほとんどは「縦じま」なのです。理由を考察してみましょう。
縦じま(ストライプ)や横じま(ボーダー)が人にどのような印象を与えるか考えてみます。
縦のラインを強調すると、人はこのように感じると考えます。
【縦じまのポジティブな意味】 | 【縦じまのネガティブな意味】 |
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次に、横のラインを強調した時の印象は
【横じまのポジティブな意味】 | 【横じまのネガティブな意味】 |
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これらは当然、使う色や背景などのまわりのデザインにも大きく影響されますが、大雑把にこのように考えて大丈夫でしょう。
さて、スーツを着るシーンを考えてみると、「きちんとした場面」が多いことがほとんどです。そういう「きちんとした場面」では、人は優秀さ、まじめさ、洗練などを表現したいことがほとんど。なので、縦じまを使うのでしょう。
では横じまの服って何があるでしょうか?
ひとつは、ラガーシャツ。実際は横じまの入っていないラガーシャツもあるはずですが「ラガーシャツのイメージと言えば?」と質問されると横じまのシャツを連想してしまうケースは多くないですか?
ラガーシャツが横じまの理由は、少しでも相手よりも大きく強く見せたいからです。
ちなみにヤ◯ザのスーツ姿を思い浮かべると、やはり縦じま(ストライプ)です。が、大きくも見せたい心理が働くのか、ストライプの幅が大きいです(=ストライプの本数が少ない)。
つまり縦じまと横じまのいいとこ取りということでしょう。
具体的には以下のような感じ。
こちら、わかりやすかったため、写真を楽天ショップのこちらのお店から拝借しました。なるかわからないけどお店の宣伝をさせていただきます。ちょいワルなお洋服を購入する際はぜひ。
横じまの服はラガーシャツの他にもあります。たとえば「囚人服」。
「囚人服のイメージは?」と聞かれれば、これではないですか?
でも、よくよく考えてみるとこの横じまの囚人服を来ている囚人って、現代社会ではおそらくいないですよね。日本でいえば本当はネズミ色の作業服みたいなものが囚人服ですから(他のもあるみたいですけど)。
で、横じまの囚人服が登場するシーンを思い浮かべると。。。ほとんどがコントやマンガなどのお笑い、コメディのシーンで登場するんです。ドリフに出てくる囚人服もこの横じまの囚人服です。
つまり、横じまの囚人服は「コミカル」を表現したい場合に登場するんですね。
このように、当たり前だと思っていたことも実は無意識に働きかけるデザインが潜んでいます。
●数ミクロンが決めるサンドイッチの売れ行き
今から20年近く前のことでしょうか。セブンイレブンのサンドイッチが他のコンビニに比べて異様に売れた時期があります。
当時、セブンイレブンはお弁当や惣菜、おにぎりなどの日配品に力を入れはじめた時期でした。サンドイッチも同様に、他のコンビニよりも開発、改善、改良に尽力していたことと思います。
実は、売上に貢献していた要因として、サンドイッチそのもの(味)よりもパッケージが大きく関係しているというウワサがありました。
私が当時勤めていた会社はデザインだけでなく印刷も行なっていました。サンドイッチに使うようなフィルム素材のパッケージ印刷もやっていました。
セブンイレブンのサンドイッチの包装フィルムを印刷している会社の担当さんに直接聞いた話ですが、セブンイレブンはこの時期から、パッケージに使うフィルムを他社に比べて数ミクロン厚くしました。
フィルム包材というのは、その機能だけでなく厚みによっても原料コストが変わります。当然、厚くするとコストは上がります。
セブンイレブンのように全国にものすごい数の店舗があって、そこに何十個、何百個とサンドイッチが毎日並ぶような企業にとって、厚みを数ミクロン上げるということはものすごい金額のコスト増になることを意味します。
しかし、この作戦が功を奏します。たった数ミクロンですが、消費者が手にした時の印象が違ったのです。数ミクロン増しただけで、手にした時の重厚感や高級感などの質感がしっかりと出たのです。
実は、重みや硬さと高級感はある意味比例します。人間は重いものを高級と感じるのです。だから、高級な商品は重さや硬さを感じる色(黒や濃紺、濃紫)をパッケージに使うことが多いわけです。
力を入れて中身のサンドイッチの味にこだわっても、持った時に軽くてフニャフニャだったらこだわりが伝わらない可能性があるわけです。力を入れて開発したのに、他のコンビニのサンドイッチと同じ価値だと感じられてしまう危険性があるわけです。
結果、前述のようにセブンイレブンのサンドイッチは他のコンビニよりも数十円高いにもかかわらず、他のコンビニよりも売れたのでした。
そして、その後他のコンビニがセブンイレブンに追随するようにフィルムの厚みを上げたのは言うまでもありません。
ただのコストでしかなかったフィルムが無意識に働きかける力を持っていたことに気づいたセブンイレブンはやはりすごいです。
ちなみにビズアップでは名刺の印刷も承っていますが、上記の理由から、一番安い紙質の名刺でも他社より厚いものを使用しています。
ペラペラの名刺としっかりした厚みのある名刺、渡したときにどちらの名刺を使っている会社のほうが「価値が高い」と感じてもらえるかはもうおわかりですね。
●コーヒーの味をかえてしまう見た目の力
師匠の伊吹卓先生にお聞きしたお話です。
あるアメリカの大学で行われた実験で、「視覚が味覚に与える影響」について調べたものがあります。
赤、黄、緑の紙コップを用意して中にコーヒーを入れ、それぞれ大学生に試飲してもらい味の違いを聞く、というものだったのですが、実は中に入っているコーヒーはすべて同じ、大学生側はそれを知りません。
視覚が味覚に影響を与えることがなければ、理論上はすべて同じコーヒーだということに気づけるはずです。
で、結果はどうだったか。なんと、多くの大学生が
- 赤の紙コップ :もっともおいしい
- 黄色の紙コップ:酸っぱい
- 緑の紙コップ :苦い
と回答したのです。視覚は確かに味覚に影響を与えているのです。
同じような話で、デパ地下のお惣菜店アール・エフ・ワンの社長は「料理はデザインの時代だ」といったようなことをテレビ東京カンブリア宮殿に出演した際に言っていました。
アール・エフ・ワンといえば、デパ地下ブームの先駆け、火付け役といってもよいほどのお店(ブランド)です。アール・エフ・ワンは料理をデザインと捉え、素材の色や盛り付けなどに徹底的にこだわった結果、ものすごい人気を博し、デパ地下惣菜ブームを起こしました。
「見た目よりも味のほうが大事だ!」という意見もあるでしょうが、結局はどちらも大事です。
これはまさしくデザインと商品力の関係と同じです。
どんなに良い商品でも、「体験してみたい」と感じてもらえるデザインでなければ、商品を購入してもらうこと=商品力を感じてもらうことはできません。そして商品力を感じなければリピートされることはありません。すべての入り口は見た目なのです。
●なぜ「サントリーモルツ」は売れ行きが悪かったのか?
15年ほどまえでしょうか。私が売れるパッケージデザイン(特に色使い)の調査をした時のお話です。5つの商品ジャンルでそのパッケージを調べたのですが、そのうちのひとつが缶ビールでした。
缶ビールは「売れる色はこれ!」という結論は出ませんでしたが、「売れない色」に関しては確実にあるだろうという結果が出ました。
ベージュから茶色をメインカラーとして使うと缶ビールは売れない、というものです。
そして当時、この売れない色を使っていたのが、なんと超大手飲料メーカーサントリーでした。今でこそ、サントリーはメガヒット商品の「プレミアムモルツ」がありますが、当時はただの「モルツ」でした。
私たちが調べた結果では、モルツは販売不振でした。サントリーという一流メーカーがつくっていたため、健闘はしていたと思います。
しかし、調査したどのエリア(全国で8ヶ所くらい)でも上位3位以内には入ってこず、エリアによってはなんと「売れないベスト3」に入ってしまっていたのです。
「なぜモルツほどのブランドが売れないのか?この調査結果は本当なのか?」と思い、近所の酒屋のおじさんにも聞いてみましたが、「モルツはあんまり売れてないよ」という回答が返ってきました。
その時のパッケージがこれです。
私たちは、なぜ売れないのだろうと頭を悩ませました。その結果、「ビールじゃないものに見えるのではないか?」という仮説を立てました。
そこで、見て「ビールだ」と認識できるデザイン要素、たとえば「BEER」という文字などを隠してみたら何に見えるかを調べる方法を思いつきました。
これを後に「ダイレクトイメージブラインド法」と名づけたのですが、簡単にいえばダイレクトに連想させる要素をデザインソフトで画像加工して消してしまえ、そして、それが何に見えるか調べよう、こんな手法になります。
で、当時画像加工したモルツのパッケージがこちらです(ちょっと見づらいかもしれませんが)。
これ、何に見えますでしょうか?
私はカフェオレなどの乳飲料に見えます。つまり甘い飲み物です。
で、売れていない他のビールを調べてみるとことごとくこの傾向がありました。茶色やベージュをメインカラーに使い、ビール以外の飲み物、特に甘い飲み物に見えてしまうという傾向です。
また、色にかぎらず文字がPOPな雰囲気のものなども同様の理由でことごとく売れておらず、売れていない商品の中のかなりの割合がサントリー商品でした(汗)。当時、サントリーはパッケージで迷走していたと思います。
ビールだと思って商品を見ていても脳みそは無意識的に違和感を持っている、だから購入されないというわけです。
●面接希望者に逃げられた話
ここからがもっとも主張したいポイントなのですが、「自分たちのビジネスには関係ない」と思ったら大間違いです。
スーツを売っているわけでも、コーヒーを売っているわけでも、ビールを売っているわけでも、パッケージデザインが必要な商品を売っているわけでもないよ。こんなふうに考えるのは危険です。ましてや、何色が良いとか悪いとかそういう話でもありません。
このコラムで何度もお話していますが、人は見たものから何かしらの印象を必ず感じてしまいます。
これを「デザインの無拒否性©」と私は名付けています。
その印象が良いものか悪いものかで人の感覚、もっと言えば行動まで変わってしまうわけです。これは、集客やマーケティングなどのシーンに限りません。
どんな会社、お店でもあり得る「人材採用」で考えてみましょう。
「ぜひ来てほしい!」と感じる人材が、御社の印象だけで入社を拒否したら?印象が悪いがために求人広告がまったく反応していなかったとしたら?
たいへんな機会損失なわけです。
実際に今のオフィスに引っ越す前のビズアップでは、面接に来た人が事務所の前から電話してきて、面接を辞退するということがありました。
当時のビズアップの事務所は、住宅街の中のマンションの半地下のようなところにあって、お世辞にもオフィス感はありませんでした。
オフィスの外観、内装やその他の見た目は、面接希望者に限らず働いているスタッフにも影響があります。無意識のうちに彼らを良くも悪くもしています。
弊社では毎月ご採用いただいたロゴをプリントアウトして壁に貼るようにしたところ、売上が上がりました。これも視覚が人に影響を与えたパターンのひとつ。
よく考えると、これらってすごく恐ろしいことですよね。
人間はその情報の実に8割以上(数値は諸説ありますが)を目から受け取っていると言われています。
目を開けていれば何らかの情報が飛び込んできてしまう、こんな状況でいちいち顕在意識で情報を処理していたら脳みそがパンクしてしまいます。
なので、目からの情報は無意識的に処理されることが多く、自然と何らかの影響を受けているケースが多いというわけです。
つまり、見た目をおろそかにするのも見た目を大切にするのも、無意識なので知らず知らずのうちにほんのちょっとずつ影響が出ます。
そして気がついたときには結果に大きな差が出てしまっているというわけです。
それほどお金を掛ける必要はありません。今すぐできるちょっとした改善はどんなことかをぜひ考えてみてください。
今回はここまでです!
津久井
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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