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2022年09月16日 ブランディング メールマガジン 法則・ノウハウ 【第640回】日本人に刺さるブランドメッセージとは?

このコラムでちょくちょくお伝えしておりましたが、実は今年の3月頭から体を鍛えておりました。

理由は、ベストボディ・ジャパンというボディメイクの大会に出るためです。

そんなベストボディ・ジャパンの新潟大会に9月10日に出場しました。半年間の成果を発揮するときがきたのです。

新潟大会、私は40代の部(マスターズクラス)というものに参加。参加者は12名。そのうち決勝戦に行けるのは6名です(さらにそこから3名が日本大会に進む)。

半年がんばったんだから、それなりに良い結果を残したい。そう思って意気揚々と参加者控室に入ってすぐに感じましたね。「あ、これムリだわ」と。「ムリ」という言葉は好きじゃないのですが、さすがに「かめはめ波を打つ前の亀仙人」みたいな人ばかりで直感的に「ムリ」と思ってしまいました。

で、あえなく予選敗退。ステージに立ったのはたったの5分。そのために半年間、厳しい食事制限と筋トレをしてきましたし、お金もそれなりに使いました。

ただ、「たった半年」だということも実感しました。大会に出ている人たちは半年どころじゃなくずっと継続して鍛えている人ばかり。「愛と筋肉はお金では買えない」わけです(愛は買える説ありますけど笑)。

それにしても良い経験になりました。何か新しいこと、少したいへんなことをはじめようと思ったら、勇気がいります。私はこういうときは外堀を埋めます。環境を変えてしまう。今回やったのは「人と約束する」ということでした。

大会に出ると約束してしまったから最後までやりきる。こうしてつづけることができ、世界が広がりました。オススメです。

というわけで私の肉体美(?)をここに載せるのははばかられますので、見たい方はFacebookの私の投稿をご覧ください。ビフォーアフター的なものも載せています。こちらです(照)

今週のコロコロニュースですが、ネタがあまりない。もう何度も言われていることばかり。というわけでお休みです。

個人的に心配なのはやはり世界情勢ですかね。経済と戦争。第三次世界大戦が起こるかもしれません。これがシナリオ通りなのか。いわゆる西側諸国とその向こう側の金融マフィア≒戦争屋が悪なのは個人的には決定的なのですが、ロシアもグルなのかどうかが気になるところです。ロシアもグルなら救いようがないです。本当にとんでもない時代だ。。。

さて、本日はブランドについてお話します。「ブランディング」というよりも「ブランド」についてです。いわゆる「ハイブランド」と言われるようなものからそうでないものまで含みます。

日本人はよく「ブランド好きだ」と言われますが、これは本当なのか、日本人に限った話なのか。

ヤフー知恵袋で面白いやり取りを見つけたので、今日はこれを題材に日本人のブランド観や世界の人々のブランド観について考察してみたいと思います。

 

●日本人のブランド観、世界の人々のブランド観

ヤフー知恵袋で以下のような質問があがっていました。

日本人のブランド好きは異常と、知恵袋でも良く見ます。
実際海外に暮らしている方から見て、そうですか?
例えば、近所のスーパーにジャージ、つっかけで買い物に行って、でも手にはヴィ○ンの財布という例があると
すごい叩かれています。そんなおばちゃんは○○だ。みたいに・・・。

それで欧米の例もよく見るんですが、実際の欧米はどうなんだろうって思いました。

欧と米はまた違うと思いますが、ブランド発祥の地ではブランドってどういう位置にあるんですか?
日本みたいに我も我もではないと思うけど、でも「一般人は全然興味ないもの。全く違う世界だし、普通の人が持ってても何のステータスでもない。」みたいな書き込みがありました。でもそれも信じにくくて・・・。

今とか、以前海外に長期に住んだ事のある方、いらっしゃいましたら、生の情報を聞かせてください。

ここでいう「ブランド」は、ルイヴィトンに代表されるような、いわゆる「ハイブランド」です。

たしかに「日本人はブランド好き」というのはよく聞く話です。ただ、世界の人々がどうなのかと比較したことはありませんでした。

この質問に対する回答として、実際に海外に住んでいる人などが情報を提供しています。これも見てみましょう。

サンフランシスコ郊外とパリに住んでいます。ブランド物に関しては、日本人ばかりがいつもたたかれますが、アメリカ人もかなりのブランド物好きですよ。

カリフォルニアはご存知のように見た目を気にする人口の多い所なので、ブランド物を持ったアメリカ人は沢山います。それも、見てすぐにブランド物と判る物が人気です。例えばルイヴィトンでも、エピシリーズの様にあまりアメリカではあまり知られていないデザインは滅多に見ません。ロゴがバーンと付いている物に人気があるようです。唯一日本と違う点は、ブランド物を持つ社会経済クラスの人々は、それなりに大きな家を持ち、高い車を運転しているという点です。貧乏なアメリカ人はブランド物の名前も聞いたことがないという人もいると思います。

アメリカと比べると、パリではやはり“身分相応さ”が見られると思います。その辺を歩いているフランス人があまり高価なブランド物を持っていないのは、そのフランス人が“歩いてどこかへ行かなければならない階級”のフランス人だからです。高価なブランド品を沢山持っている本当のお金持ちのフランス人には運転手が付いているので、滅多にお目にかからないのです。

私個人の意見は、日本人が何を買おうが、結局は自分のお金で買うのだから他人からアレコレ言われる筋合いはないと思います。

駅から遠いアパートに住むOLが、エルメスのバッグを自転車に乗せて通勤したっていいじゃないですか。彼女が一生懸命働いて買ったエルメスのバッグなんだから。ジャージのおばさんがヴィトンの財布を持っていようが、その人がそれでいいなら、他人が口出しする問題ではありません。

外国から見るとちょっとおかしいとは思いますが…

私は東南アジアに住んでいるのですが こちらのブランド好きは日本と同じです。コピー品がいっぱい出回っていますが コピーだとわかっていても買います。街を歩いていると本物よりコピーを持っている人のほうが多いんじゃないでしょうか。それまでしてもブランドの名前が大事なようです。

アメリカはある程度我が国と似たところがあります。
と言うよりも、戦後、何かにつけて我が国の西洋化の先生だったワケ、とでも言うのでしょうか。
ご承知のようにアメリカには身分制度はありませんが、優れて「金本位社会」です。
ちょっと成功して富を掴むと、アメリカ人自身、自国ブランドには目を向けません。
コーチのバッグを持ったお金持ち風アメリカ女性と言うのは見ないのです。

叩かれるオバちゃんと言うのは、ヨーロッパに比べて、と言うことでは無いでしょうか。
確かに、表立って見えなくなってもヨーロッパに身分制度は色濃く残っています。
実際、冬になると近所のスーパーに買い物に行くだけなのに、バッチリメイクに立派な毛皮のコートを着たオバハンもいます。

面白い体験をしたのは20年ほど前のパリでです。
あるブランドショップで、次の店の場所と行き方を訊いたら、「それはナンでしょう?」、「聞いたことがありません」「知りません」と言う反応でした。
住所を言うと懇切丁寧に説明してくれたので、嫌味で言ったわけでは無いようでした。
つまり、お店の売り子程度では他のブランド名さえ知らないと言うことです。

今はブランド巡りもしないし、他人に訊くまでも無いので事情は知りませんが、確かに一般庶民とブランドはあまり関係の無いものです。
それでも、モンテヴァルキのプラダのアウトレットなどは、バーゲン時期には朝から長い行列が出来るようです。
マァ、プラダ自体が有産階級を狙ったブランドではありませんが。

これらを読み解いてまずわかることは、以下のことではないでしょうか。

  • 日本人に限らず、欧米の人も東南アジアの人もブランド物は好き
  • 欧米、東南アジア、日本でブランドに対する価値観みたいなものが違う

ヤフー知恵袋の情報を信じるならば、別に日本人だけがブランド物が好きなわけではないとなります。しかし、その在り方、価値観というか、漠然とした「存在意義」的なものが違うとは言えそうです。

これもざっくりまとめるならば以下のようになるのではないでしょうか。

  • 欧米人は金銭的、社会的地位が認められた人が好んでブランド物を持つ(お金持ち以外はブランド物に興味なし??)
  • 東南アジアの人は偽物(コピー品)でもお構いなしで身につける
  • 日本人はお金のあるなしに関わらずブランド物を持とうとする

こんな傾向があるように思います。

ちなみに私が大学生のとき、両親が香港に旅行に行き、ヴィトンの財布のコピー品を買ってきました。ニセモノは嫌だったので私が難色を示したところ、父親が言いました。

「何いってんだ!!おまえ、これA級コピー品だぞ!!プロでも本物となかなか見分けがつかないんだぞ!!」

コピー品にもランクがあるんですよね。その中で一番いいのを買ってきてやったのにということなんでしょうけど、どこを自慢しているんだと(笑)

そんな「A級コピー品」のヴィトンのお財布ちゃんですが、仕方なく使っていたところ、当時高校1年生のいとこに「あ、これニセモノっしょ」と一発で見抜かれました(爆)

 

●そもそもなぜ人はブランド物を欲しがるのか?

それにしてもなぜ人はブランド物を欲しがるのでしょうか?私はそもそもそんなにブランド物を身につけるほうではありません。どちらかというと古着が好きだし、ユニクロやZARAなんかでも買い物をします。

それでも確かに靴と腕時計と財布だけはそこそこのものを持ちたいなとは思ったりもします。

この「そもそもなぜ人はブランド物を欲しがるのか?」の問いにもっとも明確な答えを与えてくれているのではないかと個人的に感じるのが、「マズローの欲求5段階説」です。

ご存知の方も多いと思いますが、ざっくり解説。

マズローの欲求5段階説は、人の欲求について定義されたもので、その名のとおり「人の欲求は5段階の層になっている」というものです。その5段階とは、

  1. 生理的欲求
  2. 安全の欲求
  3. 社会的欲求
  4. 承認欲求
  5. 自己実現欲求

というものです。

生理的欲求は食事や睡眠、排泄など、動物としての本能的な欲求を指します。安全の欲求は、これも読んで字のごとく、身の危険を感じたくない、感じるようならその環境から出たい、といったものです。平たくいうと「不安になりたくない」「不安な状況にいたくないし陥りたくない」といったものですかね。身体的なことに限らず経済的なことなども含みます。

これらは比較的動物的というか、生命維持の観点を含むものになっています。次の段階からが人間ならではというか。。。

社会的欲求は、集団に所属したり仲間をつくりたい、仲良くしたいという欲求です。「帰属欲求」「所属の欲求」などとも言われます。受け入れられ、愛を感じたいという欲求です。「集団」とは、家族や仲間、学校、会社などですね。

承認欲求は、他者から認められたいという欲求です。尊敬されたい、一目置かれたい、特別な人だと思われたい、などなど。SNSが流行っているのは、「いいね」がつくことで承認欲求を満たそうとしているからです。

最後の自己実現欲求は急に抽象的になりますが、「自分らしく生きたい」とか「理想の自分になりたい」といったものです。以下はマズローが実際に自己実現欲求について解説しているものらしいです。これを読んでもらうと、自己実現欲求の輪郭が少しわかるかもしれません。

  • 「自己実現の欲求」は、他の四つの基本的欲求が満たされると現われるものであり、他の動物には見られない人間特有の欲求と言える
  • 「自己実現」の姿かたちは十人十色であり、必ずしも仕事や職業に限定されたものではない
  • 自己実現の欲求で生きる人は行動が感謝に基づいており、周りの人に対しても愛情深い気持ちで接することができる
  • 自己実現とは、ゴールを達成することでなくその過程を味わうものであり、欠乏を満たすことや社会的な成功・他人からの評価を得ることでもなければ、苦しい努力を伴うものでもない
  • 自己実現とは、自分の内側にある個性を創出するという、自然界や子どもにみられるようなとてもナチュラルな状態のことである
  • 以上のことも踏まえ、「自己実現の欲求」を一言で表現するなら、「ありのままの自分としての可能性を最大限に発揮したい」という欲求である

こちらから引用

というのがマズローの欲求5段階説です。

で、ポイントがあります。それは、「より低次の欲求を満たさいないと高次の欲求が現れない」ということです。たとえば、生理的欲求が満たされていなければ安全の欲求や社会的欲求などは芽生えないということです。わりと重要。

さて、ここで思考実験です。アフリカの貧困国の一般市民は、ヴィトンのかばんや財布を欲しがるでしょうか。「盗んで売るから欲しがる」というとんちクイズみたいな答えはナシにして、おそらく欲しがらないわけです。かばんとしての機能、財布としての機能だけを求めるならば、ヴィトンでなくても良いわけです。

おそらくこれは、国全体が(国を構成している一般市民全体の傾向が)マズローの欲求5段階説の中で低い欲求しか満たされていないことが原因だと考えています。

そうです。ブランド物というのは、マズローの欲求5段階説でいうところの高次の欲求なんだと考えられるわけです。わかりやすいと思いますが、ブランド物を欲しがる理由は、マズローの欲求5段階説でいうところの「承認欲求」であろうということです。

しかし、実は日本人だけは少し毛色が違うと私は考えています。これを考える上では、「ブランド」というものをもう少し分解して考える必要があります。

 

●日本人はブランド物を持つことで本当は何を手にしているのか?

ここまでのお話を先に少しまとめておきます。

「人はなぜブランド物が好きなのか」をまとめると、マズローの欲求5段階説的な解釈だと「承認欲求」となります。承認欲求よりも低次の欲求が満たされきっていない国やエリアでは、おそらくブランド物を欲しがる人はいないか極端に少ないと考えられます。

「ブランド物を欲しがる理由」は「承認欲求を満たすため」、これをもう少しわかりやすい言葉にするならば、「ステータス(を得る)」となります。

つまり、ブランド(物)の役割は、それを持っている人に「ステータスを与える」となります。

ところが、ブランドの役割は「ステータス」だけではないと私は考えています。もうひとつ重要な役割、特に日本人にとって重要な役割があります。それは「保証」です。

ブランドの役割のひとつが「保証」、これはどういうことか。ここでハイブランドのお話から一度離れます。

ファミリーレストランを思い浮かべてください。「ファミレスといえば?」の答えは何でしょう。いくつかあると思います。デニーズ、ロイヤルホスト、ガスト、などなど。これらも「ハイ」かどうかを置いておけば、立派なブランドです。

では、ステータスを感じたくてファミレスに行く人はいるでしょうか?美しい女性を口説くために、デニーズを予約する男性はいるでしょうか?(いるかもしれないけど笑)

人はなぜファミレスに行くのか?それは「失敗したくないから」です。

チェーン店に人が行く理由の大半は、「どこに行っても同じ値段で同じ味で同じ居心地」だからです。変に冒険するよりも、失敗しない「いつもと同じ」が日本人にとっては重要。日本人は定番好きなわけです(海外の人がどうか知らんけど)。

そう、日本人は失敗を極端に恐れる民族なのです。そんな日本人がブランドに求める役割は、ステータスだけでなく「失敗しないよ」という「保証」だというわけです。

で、日本人にとってとても恐ろしい「失敗」があります。それは何かわかりますか?これは私の推測ですが、日本人が最も恐れる「失敗」、それは「仲間はずれ」です。

おそらく縄文時代からつづく日本人の特性なのではないかと私は考えているのですが、「村八分」などの言葉もあるとおり、日本人は集団から外れることを非常に恐れる民族だと考えています。「悪いことをしたら村から追い出す」のが「懲罰」として成立するのは「みんないっしょ」が日本人にとって重要だからではないでしょうか。

ちょっと前まではスーツにネクタイで満員電車に乗り、日本人の大半がいい大学とサラリーマンを目指していました。今では意味がないとわかっていてもマスクがやめられません。それが日本人。

だから、日本人はお金持ちじゃなくてもヴィトンを買いに行くわけです。ハイブランドを持っているステータスだけじゃなく、「仲間として認めてもらう」ためにヴィトンを、グッチを買う。つまりブランドは保証書です。

コピー品ではだめな理由もこれです。バレたときに、「仲間としての資格がないと思われる」のを恐れていると考えます。

これって、承認欲求というよりは実はひとつ低次の社会的欲求のほうですよね。日本人がブランド物を求める心理には、承認欲求だけではなく社会的欲求も含まれていた、むしろそちらのほうが色濃い。これが世界の人々と毛色が違うと言った理由です。

そうすると、私たちビジネスマンはどんなブランドメッセージ、マーケティングメッセージを発していけばよいでしょう?この日本人の特性を考えたとき、どんなメッセージならば効果を発揮するでしょう?そんな問題提起で今日のコラムを終えたいと思います。

 

今回はここまでです!

津久井

投稿者プロフィール

津久井 将信
津久井 将信
ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。

かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。

2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。

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