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最近、コラムを書くのに時間がかかりすぎてまして、コロコロニュースをあまりお伝えできておりません。今日もFacebookからひとつだけ。
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もっとも「こうなるよ」というのは私はワク◯ンの「ワ」の字がでる前(昨年5月ころ)からずっと言ってきました。何も予言でもなんでもなく、ちょっと調べれば多くの人が早い段階で同じ結論にたどりついていました。日本も遅かれ早かれかもしれません。。。
さて、今週のお話です。
今週はちょっとエッセイっぽくて、とてもくだらないお話です。なので読まなくてもいいです(笑)。
ただ、先週のお話のつづきに近いというか、「感じる言葉」といったテーマでお話します。
その前にちょっと先週のおさらいを。
- ビズアップでは「感じる言葉」という商標を取得した
- 「感じる」のメカニズムとは何なのか?
- 「考える」と「感じる」の違いは?
- 「画(え)」を見ると何かを感じてしまう
- 「画(え)」は「感じる」、「言葉」は「考える」と思われがちだけど本当?
- 実際には言葉を聞いただけで「感じてしまう」という現象もある
- 「ブランディング」とは言葉と画(え)を使って「感じる」をコントロールすることとも言える
こんなお話でした。
前述のとおり、今週はこの「言葉で感じる」ということをテーマに、だいぶくだらないエッセイっぽいお話をしてみます。
●ポケベルのCMソング
「ポケベル」という、もはや化石のような通信デバイスが主流だったころのテレビCMに、次のようなBGMが流れていたことがあります。
♪あなたを 感じていたい
♪たとえ遠く 離れていても
最近の方はポケベルと同じくらい知らないと思いますが、ZARDというバンド(?)の「あなたを感じていたい」という曲です。どうやら1995年にリリースされた曲のようですね。私は大学1年生でした。
当時の私は基本的にJ-POPと呼ばれる音楽はほとんど聴いていませんでしたが、この曲はテレビCMで流れていたときにとても印象的だったので覚えていました。
そもそも歌というのは、
- 情景を思い出す
- 情景をつくり出す
- 情景を連想させる
という3つの効果があると考えます。
ある曲を聴けば、何かのシーンがよみがえったり、何かのシーンがつくり出されたり、連想されたりします。昔の名曲を流すテレビ番組では、視聴者は曲を聴くたびに昔を思い出すし、テレビドラマのクライマックスでは主題歌が流れシーンをつくり出します。
そして、テレビコマーシャルでは曲を使うことで生活者にシーンを連想させ、購買につなげているというわけです。この「思い出す」「つくり出す」「連想させる」というのが、つまるところ「感じさせる」ということです。
♪たとえ遠く 離れていても
この曲のこの部分、つまりコマーシャルで使われていた部分しか私は知らないのですが、なぜ私がこの曲を覚えていたかというと、ポケベルの使用シーンが明確に連想できる優れた曲だと思ったからです。離れている二人がポケベルを使うことでお互いの存在を感じあえる、という打ち出しを見事にこの短い歌詞で表現しています。
つづいて、次の曲はどうでしょう?この曲が使われるほんの少し前に、やはりポケベルのCMソングとして使用されていた歌です。
♪ポケベルが鳴らなくて 恋が待ちぼうけしている
♪ねえ あなたは今どこで なにをしてるの?
作詞した秋元先生には失礼ですが、ポケベルのCMで使ってはいけない曲だと思います。私であれば、こんな歌を聴いたらポケベルはまず買いません。ポケベルを買って恋が待ちぼうけしてしまったら、なんともやりきれないのです。このポケベル、まったく役に立っていないですよね(笑)。
日本語の歌と洋楽を比較したときに、「感じる」ということにおいては、実は日本人にとって明らかに不利な点が日本の歌にはあります。
それは「言葉の意味がダイレクトに伝わってしまう」ということです。言葉の意味がダイレクトに伝わりすぎると「感じる」よりも「考える」のほうに脳の機能が傾きがちです。そうすると歌詞の内容によってはさめざめした気持ちにすらなります。だから日本語の歌詞は難しい。
先週お伝えしたとおり、中学時代の音楽の成績は「2×」で、バンドをやっていたくせに楽譜がいまだに読めない私ですが、少し専門的な話をします。
英語の歌の場合、単語(正確には音節)ひとつに対して基本的には音はひとつです。例えば「You」という単語に対しては「ド」の音がついたり「ミ」の音がついたりします。しかし、日本語の場合「あなた」という単語に対して、音が3つつく。「あ」「な」「た」のそれぞれの文字に「ド・レ・ミ」や「ミ・ソ・ラ」といった音がついてしまうわけです。
これをうまく操れないとどうなるかというと、「ゴロ」が悪くなります。「ゴロ」というのは、「考える」よりも「感じる」ことを強くアシストしてくれます。
つまり、ゴロの悪い歌詞ほど「感じる」より「考える」が優先されて、意味がダイレクトに伝わってしまいます。ここが日本語の歌詞の難しいところで、本来歌は「考えさせる」ものではなく「感じさせるもの」のほうがよいわけです。
なので、ちょっと聴いただけでは意味がわからない洋楽でも、ゴロ(音感)の良さをもってして何かを「感じ」ていて、それは意味がわかるけど感じない言葉の歌よりも人間にとってはるかに心地良いというわけです。
だから、歌詞の意味は聴き手に連想させるような少しぼやけたもの(抽象的なもの)のほうが、意味がダイレクトに伝わりすぎずに感じる歌になりやすい。これがメロディーの音感とあっているとさらに「感じる」わけです。
サザンオールスターズの「YaYa〜あの時代を忘れない〜」という曲のサビはどうやらフランス語のようです。
♪Pleasure, pleasure, la la, voulez vous(プレジャプレジャ ララ ヴレヴ)
ネットで調べると歌詞の意味はあるようなないようなという感じらしいですが、この歌詞の意味がわからなくても、このサビを「ステキだ」と「感じる」人は多いと思います。歌詞のゴロ(音感)と曲調が「感じる」を織りなしているわけです。桑田佳祐さんは天才ですね(若い方は知らない曲かもしれませんが、You Tubeなどでぜひ聴いてみてください)。
一時J−POPの歌のサビで英語を使うことが主流となりだしましたが、これは意味が伝わりづらくても「ゴロ」に頼って「感じさせる」という効果を狙っていると解釈できます。意地悪な言い方をするならば「日本語で感じさせる歌詞(言葉)を考えることをサボりはじめた」ということです。
時代が昭和から平成になり、「歌謡曲」が「J−POP」と呼ばれるようになりはじめたころから、日本の歌は言葉で「感じさせる」ことが下手になったと私は考えています。
「感じる言葉」にするにはゴロの良さともうひとつ、ある程度の「抽象度」が必要だと考えます。
たとえば「コンビニ」や「ケイタイ」、「スマホ」など、意味を伝えようとしすぎるあまりにゴロが悪い上にダイレクトな(具体的すぎる)単語を多く使っているため、聴き手の連想力(感じる力)に制限を設けてしまう。「感じる」前に「考えさせ」てしまう。歌詞とまったく同じ経験がないと感情移入のしようがないわけです。
ところが、
♪キスに打たれて眠りたいぜ(吉川晃司)
と歌われれば、男性諸君ならだれでも思わず「そうそう」と感情を移入してしまうから、その後の「オーイエー」というちょっと恥ずかしい歌詞も自然といえてしまうわけです(何じゃこのたとえ!笑)。よく「考えて」見てください。「キス」に「打たれ」て「眠る」ってどういう状況?冷静に考えるとおかしいのに、「考える」のではなく「感じる」から成立するわけです。「考えさせる」前に「感じさせる」言葉になっているということ。
たとえば「花」とか「香り」とか「海」とか「空」とか「雨」とか「部屋」といった言葉はどうでしょう?ある種の情緒や広がりや含みを持つ単語であり、聴き手の想像の幅を制限しない、「感じる言葉」だと思います。
こういった点でいえば昭和の「ニューミュージック」といわれたころの日本の歌は本当に優れていたと私は思います。阿久悠や松本隆や伊達歩、筒美京平などに代表されるような作詞家や作曲家の書いた曲ですね。
例えば、松田聖子さんが歌っていた「赤いスイートピー」は松本隆氏の作詞の曲です。
よく考えてみてください。これをいい大人の男(おっさん)が書くのだから、はっきりいって気持ち悪いです(笑)。さらによく考えれば「心の岸辺ってどこだ?」ということになるわけですが、ゴロもよく抽象度も適切でメロディーの甘さとあいまって人々に心地よい情景を連想させます。連想の幅のあるすばらしい歌詞となっているわけです。
これが「心の岸部シローに咲いた赤いスイートピー」になると、少々「こと」です。「(故)岸部シロー」はダイレクトすぎるため、連想の幅も制限されてしまい、借金まみれでおかしくなってしまった岸部シローの頭に赤いスイートピーが咲いているといった程度の想像しかできないわけで、何も共感を生まないわけです(なんじゃそりゃ)。
冗談はさておき、日本人は「遠まわしの表現やあいまいさ」に「奥ゆかしさ」を「感じる」人種だから、ダイレクトな表現(岸部シロー)ではあまり「感じない」のです。
J−POP以降のミュージシャンは、どんな言葉だと抽象的でかつゴロがよく、「感じやすいか」というところから目を背けるようになったのではないかと考えます。その結果何が起きたかというと、先ほどのサビを英語で逃げる、という現象と、ダイレクトな言葉を多用し「感じづらい歌詞」になってしまうという現象だというわけです。
もっともこれは、何も歌に限った話ではありません。企業のタグライン、キャッチコピーなども本質は同じです。
ちなみに私が強く共感した近藤真彦の「ギンギラギンにさりげなく」の歌詞の一節をご紹介します。
命がけですっとぼけつづけるこの姿勢に男としては深く感情移入せずに入られないわけです(笑)。
●ある教会の張り紙
大丈夫でしょうか?今週はこんな調子でどんどんくだらなくなっていきます(汗)。
前半は「感じる」と「考える」という切り口からお話しました。次は「何を感じさせるか?」という切り口でお話してみます。
「感じる言葉」をつけたとしても、それが狙った通りの「感じる」になっていなければやはり意味はありません。
いつも「何を感じさせたいのだろう?」と不思議に思うのが、教会の入り口などに掲げられた「お言葉」です。たとえば
- お生まれだ!イエス様が!
これでどんな気分になればいいのか本当にわかりませんが、倒置法を使うあたり、相当強調したいのだろうということはわかります(笑)。※キリスト教を批判しているわけではないので悪しからず。
あるとき、自宅の近くの雑居ビルの中にある教会の入口付近に、次のような「お言葉」が真っ白い紙に力強い立派な墨文字で書かれていました。
- 走りよる神様
これを見たとき、私は唸りました。
そもそも、神様は走りよってきてはいけない気がします。そんな焦りとか必死さを感じさせる神様は祈ってはいけない気がするのです(笑)。失礼かもしれませんが、本当にそう「感じ」てしまったんですよね。
その後、私の妄想はおそらく教会の方々の狙いとはぜんぜん違う、あらぬ方向に行ってしまいました。
雑居ビルの神様はわりとそういうタイプの神様なのだろうか、「庶民の味方」的なイメージ戦略をとっているのだろうか、と。。。
そして、「そうであれば、次のような神様がいてもよいはずだ」と考えました。
- 靴を揃える神様
なんとなく好感が持てるのは私だけではないのではないでしょうか。たいていの神様が壮大で傲慢なはずなのに、この神様はとても礼儀正しいわけです。「お邪魔します」とかいうはずです。
また、次の場合はどうでしょう。
- 電車の切符をどのポケットに入れたかわからなくなる神様
「そういうことってよくあるよね~」
「あるある~」
などと神様同士で会話している声が今にも聞こえそうです。
言葉はすごいです。神様との距離感すらなくしてしまう。。。身近な神様のシーンを思い浮かべると、集会タイトル(「お言葉」)は止め処もなくあふれ出てきました。
- レシートをもらう神様
- 便座をふく神様
- 寝相のいい神様
- ごみ収集車を追いかける神様
- からまれる神様
- 神様、ちょっとそれとって
- 神様、この味どうかしら?
- モチベーションが上がらない神様
- 駐輪場が空いていなくて困る神様
- スーパーで2割引のお惣菜を買う神様
- 在庫の山を見て呆然とする神様
神様との距離がグッと縮んだはずです(笑)。なんだか、神様とは友達になれそうです。
くだらない。。。くだらないのですが、何が言いたいかというと「走りよる神様」からは本来の神様感は「感じない」ということがひとつ。そして、「走りよる」というなんとなく庶民的なイメージを、他の「庶民的イメージを感じる」言葉に置き換えてみたらどうなるか、というお話です。
こんなアホな連想をするのは私だけかもしれませんが、「走りよる神様」は本当に狙ったものを「感じさせているのか?」ということなんです。
いかがでしょう。これが言葉の持つ力です。そして、私たちはこの言葉の持つ力を使って、商品やサービスをブランディングするお手伝いをしているわけです(あれ?説得力ない?)。
ちなみに、「在庫の山を見て呆然とする神様」は次のように言葉を変えるとまた感じるものが違うから面白いです。
- 神様の在庫が山
祈っても何もはじまらないのでした(笑)。
今回はここまでです!
津久井
投稿者プロフィール
-
ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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