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面白そうなテレビドラマがまたはじまってしまいました(テレビはドラマとお笑いとスポーツしか見ませんが)。
「日本沈没」です。
TBSの日曜劇場(日曜夜9時)の枠ではじまったこのドラマ。演出は半沢直樹シリーズの制作チームっぽいような。同じ枠でついこの間放送していた「ドラゴン桜2」も同様に演出が似ています。
何が面白いって、「日本沈没」は地震の話ですが、おそらく今のコ□ナ騒動と重ね合わせているだろうと思われる点。
具体的には、国が用意した専門家がデータを改ざんしたり本当のことを国民に伝えようとしていない、と受け取れる描写があることです。このあたりはまだ1話目が放送されただけなので確定的にそうとは言えませんが、おそらく話が進んでいくうちにそのあたりも明るみになりそう。
TBSってたまにこういうことやるんですよね。以前は東日本大震災を予告したのではないかと受け取れる描写があるドラマを放送していました(2010年の秋)。このドラマの映画版でも、コ□ナ騒動のかなり前に「あるウイルスが撒かれるが、それは実はただのインフルエンザだった」という描写があります。
ドラゴン桜2では、「本質を見抜く力をつけろ!」と主人公の桜木先生が熱弁するシーンがありましたが、これも今回の騒動に対してのセリフだろうと受け取れます。結構な問題提起をドラマを通してしてくれている気がします。
さて、今週のコロコロニュースです。こちらのブログをご紹介します。
実は今、「コ□ナワク◯ソ特例承認取り消しを求める裁判」というのが行われているのをご存知でしょうか?
ワク◯ソ推奨派の人、すでに打った人からは「何してくれてんねん」という声が挙がりそうですが、問題はそこではないです。
記事を読むと、司法とメディアの在り方に疑問を呈さずに入られません。もはやワク◯ソが効く効かないの話ではないのです。
これがワク◯ソだからピンとこない人も多いでしょうが、国民に何かを強制できる構造を是とすることを司法が認めたら、この国は終わります。徴兵制だって強制労働だって、構造的にはまったく違憲ではなくなってしまいます。人権なんてどこへやら。。。
なので、すでにワク◯ソを打った人ですら、この司法とメディアの在り方には異を唱えないといけないです。そもそも本当に恐ろしい病気なら、強制などする必要はほとんどないですし(お願いベースでもみんな言うことを聞く)。
「大衆はいつも間違っている」
これはマーケッター(今は不動産のプロ)の金森重樹さんの言葉ですが、私も残念ながらそう思います。そしてバカのほうが多ければ多数決の結果は間違ったものになります。これこそが民主主義の弱点。なので健全な民主主義を維持するためには、桜木先生が言うとおり一人ひとりが本質を見抜く力を持とうとすることを怠ってはいけないわけですね(もちろん私もまだまだですが)。
会社経営もまったく同じではないでしょうか。
その会社の社員一人ひとりが本質を見抜く力を持っていないのであれば、ワンマン経営や寡頭政治的な経営のほうがよっぽどうまくいくでしょう。
私が会社の幹部にする人間や、経営者で尊敬できる人はみな、思い込みを極力排除して本質を見つめようとする力を持っていると感じる人たちです。
と考えると、今回の一連の騒動は「本質を見抜く力を鍛える」という役割りを持たせることができるかもしれませんね。
さて、本日のお話。本日は「ヒット商品」の法則についてお話してみたいと思います。
「MAYA段階」
という言葉を聞いたことはありますか?聞き慣れない言葉かと思いますが、ヒット商品を生み出すにはこの「MAYA段階」を理解することが大切だよというお話です。
●MAYA段階とは?
デザインにおいて、デザイナーと一般の方々(デザインに関わる仕事をされていない方とします)との間には、「感性のライン」とも言うべき境界線のようなものが存在するというのをこの仕事をする前からずっと感じていました。
ビズアップはのべ20,000社以上のお客さまからロゴのご依頼をいただいてきましたが、ビズアップ創業前の早い段階からこの「感性のライン」の存在を認識していました。そして起業したことで当時漠然としていたものが少しずつ輪郭を得るようになってきていた中、確証に変わったのが「MAYA段階」という言葉を知ったときです。
デザイナーの感性が行き過ぎると、一般の方々には理解ができません。
その行き過ぎた感性でパッケージデザインや広告等々をつくっても、一般の方々が理解できないので売上には貢献しません。パッケージデザインや広告は最終的には売上に貢献することがツールミッション(C)ですから。
なのでパッケージデザインや広告のデザインにおいてはデザイナーの感性が正しいかというと一概にそうとは言えず、結果(売れたかどうか)を持ってしか正しさは証明できません。
この「感性のライン」、ずっと漠然と持っていてやっと輪郭を得てきたとお話しましたが、私がそれに気づくずっと前からすでにそれを提唱していたのが「MAYA段階」という言葉を考えたレイモンド・ローウィという昔のデザイナーです(すでに亡くなっています)。
当時、レイモンド・ローウィがデザインした商品はほとんどがヒットしていて、高額でのデザインの依頼がたくさん来ていました(当時の日本円で1億円とかだったかな?)。
- シェル石油のロゴ
- 不二家のロゴ
- ナビスコリッツのパッケージ
- タバコのラッキーストライク
- タバコのピース
他にもたくさんあるんですが、こういったものが彼のデザインしたものでそのほとんどはまだマイナーチェンジ程度しかされていないものばかりです。
女性は口紅やリップを使うと思いますが、ひねると中身が出てくるあの構造を考えた人でもあります。
実はこのメルマガによく登場する私の師匠、伊吹卓先生は、このレイモンド・ローウィの最後の弟子と言われていたそうです。伊吹先生はデザイナーではありませんが、売れるデザインを研究するに当たり最終的に行き着いたのがローウィだったようです。
私自身、「MAYA段階」を知ったのはローウィについて調べようとWikipediaを見ていたときでした。その中に「MAYA段階」の表記があり、雷に打たれたような衝撃がありました(いやほんとに)。
「MAYA段階」はある英文の頭文字を取ったものです(伊吹先生の「メリコの法則」も頭文字ですね)。
「Most Advanced Yet Acceptable」
この英文を訳すなら、「受け入れられるか受け入れられないかギリギリの前衛、先進性」みたいな意味です。Wikipediaには
とあります。
さて、「デザインの話か」と思われたらお待ちください。
これがどうやらデザインに限った話ではないということがわかってきたのです。
●「感性のライン」はデザインに限った話ではない
実は「感性のライン」がデザインに限った話ではないということも前からうすうすは気づいていました。
私は一応、元バンドマンでして名前を聞けば誰でも知っているような大手のレコード会社からフルアルバムをリリースしたことがあります(インディーズでしたが)。
私たちのバンドは、
- ミュージシャン仲間
- ライブハウスの店長やスタッフさん
- 音楽に詳しい人
- その他音楽関係者
などにかなり評価されていました(自分で言うのもどうかと思いますが)。でも、全然売れませんでした。評価してくれるのはその道の人ばかり。ちょっとマニアックだったんですね。
その時から感じていたんです。
自分たちがつくりたいものと、オーディエンスが聞きたいもの、2つの間には隔たりがあると。行き過ぎた感性は聴衆を「ポカン」とさせるだけだと。
デザインの話の例になりますが、師匠の伊吹先生は、
「売れるデザインが知りたければ、スーパーに1日立っとけ」
という人でした。
そこで、サラリーマン時代の私は仕事を抜けだしてスーパーが忙しい時間帯(夕方5時くらい)に売り場に数日立っていたことがあります(さすがに1日中はしんどかった)。当時の社長に「お前どこで何やっとんじゃ!」と電話で怒られたりもしました。
まがりなりにもデザインのディレクションをやっている人間です。
「何が売れるか = デザイン的な優劣(と当時思っていた)はわかるぜ」
と思っていました。
しかし、自分がデザイン的に良いと感じるデザインではないパッケージデザインの商品が売れていきます。正しいと思っていた自分のデザインセンスは、「売れる」という目的の前では正しくありませんでした。
この「ライン」は前述のとおり、デザインにかぎらず他の業種や商材にもある、と私は考えています。
たとえばお笑い芸人もそうです。
彼らが本当に面白いと思っていることとテレビの前のお茶の間の人々が笑うポイントは違うわけです。特にゴールデンタイムの番組の笑いは広く浅い層にウケるように出演者も放送作家さんも考えます。「楽屋ネタ」なんていう言葉があること自体がそれを物語っています。
アパレルで言えば、パリコレなどは完全に「感性のライン」のはるか向こう側過ぎて理解できません。「それ着て街は歩けないだろ」的な。
映画なんかもそうですよね。プロや映画関係者、映画オタクが評価するからといって興行的に成功するとは限りません。
料理も同じではないでしょうか。行き過ぎた感性の料理、たしかに食べたら美味しいのでしょう。でも、居酒屋のほうがお客さんの数は多いです。みんな、焼き鳥や煮込みが好きなんです。
家などの建築物もやっぱり感性のラインがありますよね。
渋谷駅の東急線の乗り場付近をデザインした安藤忠雄氏は、一時ネットでかなり叩かれていました。利用者の利便性より自身の感性(たいてい行き過ぎている)を優先させてしまったからです。
簡単に言えばビジネスに限っていえばこの「感性のライン」をギリギリ越えるか越えないかのところがヒット商品となるということなんです。
●御社のお客さまの「感性のライン」はどこにある?
御社の商材にもこの「感性のライン」はありませんか?それはどこなのでしょうか?
私はレイモンド・ローウィのことを師匠の伊吹先生から聞いていました。伊吹先生から聞く以外のローウィに関する知識はあまりありませんでした。
しかし、以前たまたま購入した本にローウィのことや「MAYA段階」のことが書いてあって、しかもヒット商品の原則は「MAYA段階にある」とまで書いてあってまたまたびっくりしました。
→ ヒットの設計図 ――ポケモンGOからトランプ現象まで デレク トンプソン (著)
本にはこう書いてあります。
人間はつねに
- 新しいもの好き
- 新しいものに対する恐怖
の両方を抱えている生き物で、心の中で常にこの2つの心理が綱引きをしている状態だと。
そして、
- 最適レベルの新しさ
を求めている、ということなんだそうです。
言い換えれば、「なじみ感」と「驚き」の両立です。ここが「MAYA段階」だということです。新しさは十分でも売れていなければ「なじみ感」が足りないということになり、「なじみ感」が十分でも売れていなければその商品には「驚き」が必要ということです。
先週のお話でも出た「進化系」。これについてもMAYA段階で説明できます。すでに受け入れたことのある商品がデザインやその他で「進化」しても、既知の範囲に収まっている可能性が高いから理解できる(=恐怖を感じづらい)。
この感性のラインをうまくコントロールしている日本の企業があります(私の推測ですが)。
日本人ならほとんどが知っているアパレル企業「ユニクロ」です。
私はわりと洋服が好きです(パリコレとかは意味がわかりませんが)。なので、そこそこ洋服屋さんに出入りします(メチャメチャ詳しい訳ではありません)。
オシャレな洋服のブランドやセレクトショップ、ファッション誌などは言い方を変えると実は「教育者」と言えます。
何を教育しているかというと、感性を教育しています。「新しいけど怖くないよ〜」的な。
これは業界全体、場合によっては社会全体の「感性のライン(MAYA段階)」を押し上げている、とも言えます。
アパレル業界の「教育者」たちが教育し、それを理解できる人が増えることで「最適レベルの新しさ」は少しずつ押し上げられます。
ではユニクロは教育者なのか?
私の推測では答えは「No」です。ユニクロは「刈り取る者」です。
人々が教育されてきたころを見計らって、同様のデザイン、シルエットの商品を安く大量に提供する。
そうして常にボリュームゾーンを取りながらターゲットに対しては「ハイセンスだ」と感じさせる、これがユニクロ手法だと考えます。
ユニクロが有名になりはじめたころ、店に行く前のはじめの印象は「安くてダサい服を売っている店」でした。「ユニバレ」という言葉があったくらいです。ユニクロを着ているのがバレることで、それが恥ずかしいことだと若者が感じる時代があったのです。
今は実際に行ってみると、「お、こんな感じの服がこの価格なら買いだな」と思わせる商品がけっこうあります。
ただ、私の個人的な感覚で恐縮ですが、「やはりユニクロはビミョーだな」と思わせる期間と、「ユニクロなかなかやるじゃん!」と思わせる期間が交互に来るんです。
洋服好きな人にとってこういう現象が起きるのは、ユニクロがタイミングを見計らって教育が完了した人(メインターゲット)を刈り取っているからだと考えています。
私のように少しファッションが好きな人は、そうではない人より教育されるのが早いです。なので、次のブームに行くのも早い。つまり私はユニクロにとっては正確にはメインターゲットではないわけです。
ユニクロはゆっくり教育される人、最後に教育される人をすべて刈り取ってから(こちらがメインターゲット)、次のブームがまた教育され、完了しそうなころを見計らって、それと同じようなシルエット、デザインの服を安く売りはじめるのです。
「最適レベルの新しさ」をターゲットの教育され具合に合わせてコントロールしているわけです。
その証拠に、ユニクロはロゴに関しても同様のことをしています。こちら、ユニクロの現在のロゴと少し前のロゴです。
どちらが好きか嫌いかの好みはあると思います。特筆すべきは、どちらのロゴも同時期にできていたこと。
その際、デザイナー界隈の会話ではみんな口をそろえて右、つまり現在のロゴのほうがよいと言っていました。「なんでダサいほうを使うんだ?」というようなことをデザイナーの多くは言っていたのです。
しかし、そこがさすがユニクロです。
右のロゴはまだ多くのメインターゲットが感性的に追いついていない(教育されていない)MAYA段階のだいぶ先だった、つまり、ターゲットとなる人にとっては「新しすぎて怖い」と思われる可能性があった。だから左のロゴを採用した。
そして、数年前にそろそろよいタイミングだろうということでロゴをリニューアルしたと私は推測しています。
さて、
- 今の商品を見直す
- これから新商品をつくる
という場合は、ターゲットの求める「最適レベルの新しさ」がどこにあるのかをぜひ検討してみてほしいです。
どうやって「最適レベルの新しさ」を知るかは簡単です。
- 既存のお客さんや見込み客に徹底的に聞きまくる
- 商品が売れる現場を観察する
私が師匠の伊吹先生に教わった、時間はかかるけどとっても簡単な方法です(笑)
そして先ほど紹介した本を読むと、どうやらそれはレイモンド・ローウィも徹底的にやっていたことだったようです。
感性のライン「MAYA段階」は「最適レベルの新しさ」であり、ヒット商品の大原則だというお話でした。
今回はここまでです!
津久井
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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