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2021年09月10日 インナーブランディング ブランディング メールマガジン 【第591回】CI(コーポレートアイデンティティ)のつくり方

最近は、アマゾンプライムビデオで相席食堂というお笑い芸人「千鳥」の番組をよく見ています。

千鳥、面白いですね。言葉のセンスとそれがでてくるまでのスピードがやはり他の芸人さんと比べて群を抜いているというか。

アマゾンプライムビデオといえば、私が好きな番組で「バチェラー・ジャパン」というものがあります。

どんな番組かというと、いわゆるハイスペック男性(お金持ちでイケメン)を20人とか25人とかの女性が取り合うという、「とても下品な番組」です(笑)。

私もこの番組を知ったときは「けしからん!」と思いましたが、人間「けしからんもの」を見たりやったりしてしまうクセがスゴいですよね。で、見てみたらこれが予想以上に面白い!結構感動したりして。。。(ぜひ見てほしい)

バチェラーはシーズン3まであり、男女逆パターンのバチェロレッテもあります。昨日は実は日本の初代バチェラー久保裕丈さん(写真の方)のセミナーを受けてきました。

久保さんは、起業して立ち上げたアパレルEC事業をmixiに売却、その後、さらに家具のサブスクサービス(≒月額サービス)を立ち上げて今も経営の第一線にいます。

なので昨日のセミナーは「女性の落とし方」的なものではもちろんなく(汗)、経営者として登壇されたというわけです。

しかしやはりセミナーはリアルがいいですね。昨日も感染対策だけはしっかりした中でのクローズドなセミナーでした。

人間はノンバーバル(非言語)で何かしらの情報を受け取っています。やはり同じ時間だけでなく同じ空間を共有したほうが得られるノンバーバル情報は多いわけです。

また、人間はテレビやパソコンの画面を見るときとモノを見るときとでは、脳の機能する部分が違うと言われています。たとえ同じ内容のものを見たとしてもです。

ワタクシ、そういう意味では怒っていることがあります。

うちの子が通う世田谷区は小中学生に対してオンライン授業をはじめました。毎日ではありませんが、週のうち2〜3日は支給されたiPadで授業を受けるというのです。

これ、バカを生産するシステムですよ。

まず前述の通り、画面越しでは脳の使われる部分が違います。おまけに、先生の目もすべてには行き届かないですし、先生側も生徒のリアクションを得づらい。つまり、わからない生徒はどんどん取り残されていきます。

しかも、長男(中3)のほうなんて、自分のカメラをオフにしてもいいというルールらしく、つまり先生側からは生徒が見えません。サボっていても見えないし、マジメでも勉強が苦手な子などは先生に気づいてもらえません。

さらにさらに、音楽や美術、技術、体育などはどうするんだと。。。座学だけが勉強ではないはずです。ヨメのママ友の子が通う小学校では、体育と称して子どもがiPadの前で体操をさせられていたらしいです。バカなの?

子どもたちの大切な時間と経験が犠牲になっている中で、こういう人が132億円の補助金をゲットしていると知ると、「今からそいつを殴りに行こうか(チャゲアス)」と思ってしまいます。

 

まあ話がそれましたが、昨日の久保さんの話はとてもおもしろかったです。本当に頭のいい人だと感じました。

なぜなら、難しそうなことを誰でもわかるように伝わるように話をしていたからです。やはり千鳥と同じように頭の回転が速い人なんだろうと。そして相手に伝わるようにという優しさと想像力を持ち合わせているのだろうと感じました。

そんな久保さんが話していた内容に少しだけ触れると、経営者として重視しているポイントは実はあまり多くないということです。絶対に外してはいけないポイントは大まかに言うと3つくらいでした。

そしてそのうちのひとつが「CI(コーポレートアイデンティティ)」でした。本日はCIのお話。

 

●CIとは?その役割は?

CIとは、前述の通りコーポレートアイデンティティの略称です。具体的には、以下のようなものを総称してそう呼びます。

  • 企業理念
  • ビジョン
  • ミッション
  • 行動指針
  • コアバリュー
  • クレド
  • フィロソフィー
  • その他

そして、こういったものを言葉で表した上で、さらに画(え)に落とし込んだものもCIに含みます。具体的には私たちがサービス提供している「ロゴマーク」がその代表です。

CIがなぜ大事なのかは、CIの役割を考えればわかります。私は主に3つの役割がCIにはあると考えています。

ひとつめは「組織をまとめるため」です。

私の理論となりますが、会社が社員を雇いつづけたいかと社員がその会社で働きつづけたいかを表した図が以下のものです。

カンタンに説明すると、左の円は会社を、右の円は社員を表しています。そして重なり合った部分が大きければ大きいほど、お互いに一緒に働きつづけるということになります。つまり、重なる部分をどれくらい大きくできるかが重要です。

大きくする方法は3つあります。ひとつは会社が成長すること。図で表すと、会社の成長は円が大きくなるということになります。円が大きければ重なる部分は大きくなります。ふたつめは同様に、社員が成長することです。社員の成長も円の大きさで表します。大きくなれば重なる部分も大きくなります。

そしてみっつめです。この円は、実は時間が経過するほどにお互いに離れるような作用があると考えています。2つの円が離れれば、当然重なりは小さくなります。

CIの役割は、この離れる力をお互いに近づくように向けることができるということだと考えます。つまり、ふたつの円を近づけるように作用するものであれば、理念でもビジョンでもクレドでもなんでも構いません。

実際にリッツカールトンホテルはクレドがメインですし、ジョンソンアンドジョンソンも同様です。昨日の講師だった久保さんの会社もビジョンとバリューの2つしかありません。

ちなみにビズアップはいっぱいあります。

  • 理念
  • ビジョン
  • ミッション
  • コアバリュー
  • 企業コンセプト
  • 理想の会社像

 

●CIとは「在り方」とも言える

個人的な話ですが、今から5年前に40歳になったときに、「在り方」みたいなところを意識するようになりました。選択、判断に迷ったときに「どうありたいか、どうあるべきか」が重要だと考えたからです。

たとえば、ビズアップでは毎年「ロゴマークオブ・ザ・イヤー」というちょっとしたイベントを開催しています。「ロゴマークオブ・ザ・イヤー」はその年にロゴを納品させていただいたお客さまに参加いただく、ロゴのアワードです。

一般の人300人にリサーチして、その年の世相をよく表していると感じるロゴを選定します。たとえば東日本大震災があった2011年は、人々のつながりとその大切さを多くの人が感じた年ということから「つながりを感じるロゴ」というテーマで一般の人にリサーチをかけました。

これ、自分たちでいうのもなんですが、結構手間がかかるんです(汗)。でも「日本一のロゴデザイン会社だったらやるかやらないか」という在り方から判断したときに、「やらない」という選択肢はなくなるんですね。

他にも、私たちは毎年6月5日を「ロゴの日」として日本記念日協会の認定をもらっています。これも「日本一だったらやるよね」ということのひとつです。

これは昨日のセミナーで久保さんもまったく同じことをおっしゃっていました。

「議論が紛糾したときは、よりCIに沿っている、CIを体現しているのは何か(どれか)?で判断する、CIに立ち返る」

まさしく、です。

さらには、次の一手もCIから判明します。理想の在り方が明確になっていれば、それに足りない部分を埋めることが次の一手になるからです。

これがCIのふたつめの役割です。

 

●お金以外の働く理由

現代社会では、日本においては餓死することはほとんどなくなりました。とてもすばらしいことです。その反面、働くことにお金以外の理由が必要となってしまいました。

こうなったのは私たちの世代からでしょうか。子供のころは家にいれば三度の飯がでてきます。お腹が減ればおやつを食べますし、温かい布団で寝て、具合が悪くなればすぐに病院にかかることができます。

つまり、苦しくないんです。そしてその「苦しくない状況」が「あたりまえ」だと無意識に刷り込まれているわけです。

これはある意味危険なことだと思います。

私たちのおじいさんの時代は、実はそんなことはありませんでした。裕福な家庭は一部でしたし、医療をはじめとした命に関わる技術はまだまだ発展途上でした。何より、戦争で死ぬ可能性も大いにありました。

仏教では「輪廻転生」という言葉があります。人間にまた生まれ変わるというものです。「死んでも人間に生まれ変われるならいいね!」と今の人たちは思うでしょうが、そうではないです。同じく仏教用語に「解脱」という言葉がありますが、これは輪廻転生から脱出するという意味です。生きているうちに悟りを開けば輪廻転生から脱出できるというわけです。

なんで脱出したかったのでしょう?「生きているほうが辛い」からです。怪我をすれば食べ物を収穫できくなり、破傷風などから感染症になり、それこそ死んだほうがマシという苦しい思いをする、だから脱出したかった、もう人間には戻りたくなかったそうなんですね(ちなみにこれは人から聞いた話なので不正確な部分もあるかもですが)。

そこからお金の時代が来ます(正確には労働者の時代)。私の父親の世代ですね。働けば働くほど自分の生活が進化していきます。自分も家族も幸せを実感します。お金以外に働く理由などいらなかったわけです。実際に私の父親は昭和23年生まれでまだ戦後の復興の時代に育ちましたが、はっきり言ってましたね。「おれは金が欲しくて仕方なかった」と。

その結果、私たちの代以降は「死なない時代」になりました。働かなくても死なないのなら、働く理由はなんなのか。

人間は低次の欲求が満たされればより高い欲求を求めます。有名な「マズローの欲求5段階説」ですね。その中には所属の欲求があります。人間は人との関わり、社会との関わりを求めます。自分が社会の役に立っている実感を求めます。今はそれが「死なない」ことにより、より色濃い時代です。

CIはそのために必要な「働く理由」を示すものだと私は考えています。これがCIのみっつめの役割です。

実際にCIという言葉が出はじめたのはすでに世界的に人々の生活が安定しはじめてからです。一部の有名な経営者は昔から哲学をもって仕事をしてはいましたが、それはどちらかというと自分に課すものであって社員に求めるものではなかったと考えています。

 

●CIのつくり方

見てきたような3つの理由から、CIは今の時代においては非常に重要な役割りを果たすと考えています。

では、CIはどのようにしてできあがるのでしょうか。

ここではカンタンな説明に留めますが、以下のような手順となります。

  • 自分たちはなぜこの仕事をしているのか、なぜこの商品を売っているのかを深掘って考える
  • 自分たちのお客さまはなんと言っているのか、なぜ自社を選んでくれているのかを知る
  • これらを総合的に考えて言葉にする(できれば画にする)

まずは自分たちがなぜこの仕事をしているのかを深堀って考えてみることが重要です。一見なんの脈絡もないような過去の出来事や選択が、実は今の自分や会社に大きな影響を与えているということが往々にしてあります。

たとえば私がロゴのデザイン会社をやっている理由は、少年期の「普通コンプレックス」にあります。この話は長くなるので割愛しますが、自分の存在を認めてもらいたいがために無意識に得てきたスキル(「コアスキル」=私の場合は「表現力」)を使ってブランディングの会社をやっているということになります。

過去を深掘っても思いつかない場合は、今の仕事を通して喜びや快感を感じるシーンやできごとに着目します。どんなときに今の仕事をやっていてよかったと感じるか、どの仕事をしたときにそれを強く感じたかなどを列挙していきます。そして、なぜそのシーンで、その仕事を通して「そう感じてしまうのか」を考察します。

その次に、自分たちのお客さまはなんと言っているのか、なぜ自社を選んでくれているのかを知るようにします。つまり、お客さまの生の声を聞くということです。

お客さまの生の声は、CIを考える際にとても重要になりますが、それだけではありません。自社のビジネスを見直し改善するヒントもふんだんに盛り込まれています。つまり、「在り方」、「戦略」、「戦術」、すべてにおいてのヒントが隠されていますので、やらない手はありません。

私たちのサービスでこういうものがありますので、ぜひ依頼をご検討ください。

お客さまインタビューブック作成サービス

最後に、これらのことを総合的に踏まえて言葉をつけていきます。これも私たちのようなプロと一緒に考えることをおすすめしますが、ちょっとだけヒントをお話すると、「はじめからかっこよさやクリエイティブさを求めない」ということが大切です。

どんなに泥臭くても、かっこ悪くても、長くなってもいいので、すべて文章化することです。すべてを出し切る。そこから削るべきところ、飾るべきところの表現を考えます。つまり「つくる」というよりも「磨く」という言葉のほうが当てはまるかもしれません。

ざっと見てきましたが、これがカンタンなCI作成のプロセスです。

そしてCIをつくるのと同じかそれ以上に重要なことがあります。それは「運用する」です。

CIはつくっただけでは意味をなしません。運用=「組織に浸透させる」ことがとても重要になります。

運用する方法はいろいろとあります。

たとえばビズアップでは毎朝の朝礼で、CIにフィットしていると感じる社員を発表します。発表者は日替わりで全社員が行います。なぜフィットしていると感じたのかの理由とともに発表します。

また、3ヶ月に一度、「CIフィット者」としてもっとも多くの票を得た社員を表彰します。他にも月に一度、CIを考察するためのミーティングを社員で行っています。

昨日の講師だった久保さんも、会社では同様のことを行っているそうです。他にも朝礼時のCIの読み合わせなどもやっているそう。

また、採用時にもCIは役立ちます。応募者が本当にCIにフィットする人かを見極めるような面接を行うということです。こうすることで入社後の互いの思い違いやギャップが解消されやすくなります。

最後にこれも自社サービスとなりますが、運用のひとつとなるものを紹介します。「CIインフォグラフィック」と名付けているものです。見ていただいたほうが早いので画像を載せます。

これは、ビズアップCIを「登山」というコンセプトをもとに一枚のデザインで表現したものです。太陽は経営理念、山の頂上から見える景色がビジョン、山に登ることがミッション、山の名前は企業コンセプトである「デザイン業界のユニクロ」から「ユニクロ山」と名付けています。登山者の装備はコアバリューで、登山基地は「理想の会社像」を表現しています。

これをいつでも社員の目の届くところに貼り出しています。名刺やホームページでも紹介し、お客さまに語れるようにしています。

さて、コロナ禍の今だからこそ、今一度御社のCIを見直してみてはいかがでしょうか?そのためにこのお話が参考になれば幸いです。

 

今回はここまでです!

津久井

投稿者プロフィール

津久井 将信
津久井 将信
ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。

かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。

2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。

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