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先日、Thinkings株式会社というHRテックの会社さんの「採用あるある川柳」に応募しました。
※「HRテック」は「ヒューマンリソーステクノロジー」の略称で、採用や労務管理など人事業務をIT化したサービスの総称。採用に特化していたり労務に特化していたり、ワンストップですべて対応するものなどさまざまなサービスがあります。成長市場でさまざまなプレイヤー(会社)が出てきています。
採用あるある川柳は以下のようなものです。
「採用あるある川柳」は、採用担当者の視点で採用の仕事をよむ、公募川柳です。面接や採用イベントなど応募者と向き合う仕事から、社内調整や進捗管理など日々の業務まで、採用担当者の仕事は幅広い。でも採用の仕事の苦労や喜びはなかなか伝わりにくいかも?そんな採用担当者だからこそ「あるある!」と共感できる川柳を募集します。私たちはこの「採用あるある川柳」を通して、世の中には見えにくい採用という仕事にスポットライトを当て、採用担当者を応援したいと考えています。
我が社はまだまだ人事専任がおりませんでして(今募集中)、私を含む幹部が対応しております。
Thinkings株式会社の社長、吉田さんとは友達以上の関係(恋人ではない笑)でして、ぜひ応募してよとお声掛けいただきまして。。。
過去にはいろいろなスタッフがいました。今となれば笑い話ですが、当時はそれなりに苦しんだかな(苦笑)
そんな当時の思いにはせながら、ワタクシも2句ほど応募しましたら、そのうちの1句がなんと佳作に!!
868句も応募があったらしく、大賞こそ逃しましたが、入賞4つの中の1作品として選ばれました。しかも、Thinkings株式会社の社員さん投票ではダントツ1位だったとのことです(もちろん吉田さんとの関係は伏せて)。うれしい(涙)
どんな句だったかは、ぜひ「採用あるある川柳」のページをご覧ください(ペンネーム「つくちゃん」)。
実はもうひとつの句も個人的にはかなり好きだったんですけどね。それがこちら。
- もう辞めた 「社長一生ついてきます!」
「一生ついていきます!」なんて熱いことを言っていた社員がすぐに辞めてしまう悲哀を歌った句でございます。
私なんかは「一生ついていきます!」とか熱い言葉にほだされやすい性格でして、でもそういった「経営者がほしい言葉を投げかける社員たち」で残っている人はいないという現実。。。さすがに反省しております。
私はどうも一攫千金を狙いやすい性格のようで、過去にはそういう「なんかありそう」な人を採用して「大当たり」か「大外れ」するという傾向が強かったように感じます。
「大外れ」したケースで思い出すのが、10年前に採用したTくんです。
Tくんは専門学校を卒業したばかりの子でした。そのTくんと銀座のお客さまのところに同行したときのこと。地下鉄の駅の階段を登り地上にでると、目の前に「カルティエ」のお店がありました。私はカルティエのロゴを指差しながら、「あれ、なんていうブランドか分かる?」とTくんにたずねました。
Tくんは言いました。「カルチャーですか?」
たしかにカルティエのロゴはちょっと筆記体っぽい感じで可読性が弱いし、ハタチそこそこの子では知らない可能性もあります。でも嫌な予感がしたんですよね。で、となりにある「シャネル」のビルとロゴを指差し、「じゃあ、あれは?」と再度たずねました。
「チャネル」
自信満々でした。
「チャネル」は私が高校のときに流行ったバッタモンですから(笑)。まあそれすらも知らない様子でしたが。。。
そんなTくんは、その数週間後に辞めてしまいました。
辞める数日前のできごとです。1通のメールが届きました。
「チャックお願いします」
当時は今のチャットワークやSlackと呼ばれるようなコミュニケーションツールがあまりなく社員間のやり取りもメールだったのですが、そのメールの件名が「チャックお願いします」だったわけです。
私はたしなめました。「社内のメールだったからよかったものの、これがお客さまへのメールだったら問題だよ。気をつけなさい」。Tくんは「すみません!」と元気にお詫びをしてきました。
その日の夜のことです。メールが1通届きました。
「チャックお願いします」
差出人はTくんです。さすがにツッコミました。「おい!」と。天丼かと(笑)
その後、Tくんが退職し、Tくんが作業していたデータを拾おうと彼の使っていたパソコンを立ち上げたときのことです。Outlook(というソフト)が自動で立ち上がり、彼のタスク表(やることリスト)が出てきたんです。
そこには、こんなふうなリストが載っていました。
- チャック 〜〜〜〜
- チャック 〇〇〇〇
- チャック △△△△
- チャック □□□□
- チャック 〜〇△□
- チャック ・・・
- チャック ・・・
- チャック ・・・
- チャック ・・・
大量の「チャック」が出てきたのです。そのときに私はうなだれながらこう思いました。「なぜ採った?」。
そんな経験が私のあの句を生んだというわけです。
さて、かなりどうでもよい前置きとなりました。そして長い。。。本題に行きましょう。
ちなみに今週はたいしたネタもないので(ないこともないのですが)「コロコロニュース」は割愛します(あ、緊急事態宣言明けましたね)。
●「感じる言葉」
私はデザインももちろん好きなのですが、言葉も好きです。先ほどの川柳などは、実は15分くらいで2句つくってしまいました。
このメルマガでも何度も「コンセプト」についてお話ししていますが、コンセプトは私の定義では「言葉」です。
コンセプトの特徴は、短い言葉なのに画(え)が浮かぶほどの圧倒的な情報量を含んでいるというものです。
何度も例に出していますが、タイトルでもありコンセプトになっている秀逸なテレビ番組の名前が「料理の鉄人」です。
「料理の鉄人」と聞くと、おそらくこのようなイメージをすると思います。
- 厳しい修行を積んだ料理人っぽいな
- 男の人っぽいな
- 腕組みとかしてそうだな
- 三ツ星シェフとかかな
このように自然と「感じてしまう」というものがコンセプトです。これは「感じる言葉」と置き換えてもいいです。ちなみに「感じる言葉」はビズアップで商標登録出願中です。
「言葉」というと論理的だったりロジカルに解釈するものという印象があります。「論文」とか「説明文」とか。
しかし実はそういったものばかりではありません。デザインなどの画(え)を見るのと同じように、聞いただけ、読んだだけで「感じてしまう」言葉というものがたしかにあります。
こういったものは、歌などによく出てきます。特に最近のJ−POPとかよりもひと昔前の歌謡曲のときのほうが多かったように感じます。
たとえば私は「感じる単語」みたいなものをメモっているのですが、それは以下のようなものです。
- バトン
- チケット
- パスポート
- 道
- あの日
- やがて(ノスタルジーを感じる)
- 酒
- 涙
- 男と女
- 部屋
- 雨
- 架け橋
などなど。
「バトン」というと「受け継がれていくもの感」を感じます。「チケット」は未来への通行手形のようなイメージを持たせることができます。「パスポート」も同様です。
- 酒
- 涙
- 男と女
のくだりは完全に河島英五の「酒と泪と男と女」から来ています(笑)
これもよく例に出していますが、
- ダイヤル回して 手を止めた
という歌詞は寂しげな情景が浮かぶ優れた例で、「感じ」ます。
これが「ダイヤル」ではなくて「スマホ」だったら、急に奥ゆかしさみたいなものを感じられなくなります。「ギャラクシー起ち上げて 手を止めた」だと、もうそれは客先に電話する歌かとなります(笑)。
つまり「感じる単語」にはある程度の「抽象度」みたいなものが求められます。具体的すぎる言葉よりも、少し抽象的な言葉のほうが「感じやすい」ということです。
「あの日」という言葉を聞いたとき、どの日を思い出すかは人によって違います。しかし、多くの人が印象的だった日を思い出すことは間違いないはずです。このように人によって微妙に感じ方が違うほうが奥行が出ます。つまり「感じ」ます。
「ダイヤル」は具体的な単語なのに、なぜか「さびしさ」とか「切なさ」などの情景にもハマる抽象度みたいなものを持っていて、これが「感じる単語」の面白いところなんですね。
まあ「スマホ」も「感じる単語」になる時代がこれからくるかもしれませんが。言葉は生き物なので時代によって捉えられ方(感じられ方)が変わりますし。
●「言い換え」は価値観を表す
まだあまりネタがたまっていませんが、こういったものもメモりはじめました。
- 言い換え集
たとえば「不安」という言葉を言い換えてみると、私の解釈では
- 思い込みからのズレとその大きさ
となります。これはビジネスにおいてではありますが、当初の計画などが思い通りにいかない、つまりズレが発生すると不安が生じはじめます。そのズレが大きくなればなるほど、不安も大きくなるわけです。
「メモ」を言い換えてみましょう。これは私的には
- 未来の自分への手紙
です。メモのとり方が雑だったり下手だったりすると、未来の自分を苦しめることになります。メモをしっかり取る人、取り方が上手な人は、「未来の自分を大切にしている人」とさらに言い換えられるというわけです。
「赤字」であればこうなります。
- 覚悟があれば投資に、なければ死につながるもの。赤字とは覚悟してやるものであり、結果的に出てしまう赤字ほど会社を蝕むものはない。
つまり、問われているのは業績そのものというよりも、そのプロセスにおいての経営者の覚悟だということです。
他にもこんなのはどうでしょう。
- 品質と書いてプライドと読む(または技術と書いてプライドと読む)
これも「品質」を言い換えています(これは私が考えたものではなく誰かが言っていたか書いていたものだと思われます)。そこには商品や技術へのこだわりという価値観が含まれています。
つまりこの「言い換え」、何がいいかというと自分の価値観が整理される点です。
単語や言葉を言い換えてみるという行為は、自分と自分の価値観を言語化する行為です。
会社の理念やビジョン、ミッション、行動指針なども、単純に「お客さまにはていねいに接しましょう」といったような直接的な表現で行うのではなく、そこに何らかの「言い換え」が入るようにすることで経営者の価値観が差し込まれます。経営者の価値観を「感じさせる」言葉になるということです。
●タグラインという名の「会社の宣誓文」
このような言葉の感覚を駆使しながら、「タグライン」と呼ばれる「会社の宣誓文」をつくることをオススメします。ビズアップでもサービス化しております。
たとえばタグラインはこのようなものがあります。
- “あったらいいな”をカタチにする
- お、ねだん以上 ニトリ
- 地図に残る仕事
- ココロも満タンに コスモ石油
これらは個人的に好きなタグラインです。
小林製薬の「“あったらいいな”をカタチにする」なんかは、日常的に「あったらいいな」と感じる機会は意外と多いですから、やはり「感じ」ますね。
ニトリの「お、ねだん以上」もダジャレ感もありながらも価値と企業の姿勢をしっかり伝えられるタグラインです。
大成建設の「地図に残る仕事」。これ私大好きです。ビジネスで何かを残したいと考えている人はわりと多いと思います。もし自分の仕事が地図に残るとしたら?こんなことを感じさせる、承認欲求を上手にくすぐる秀逸なタグラインです。
「ココロも満タンに コスモ石油」。これも長く使われているステキなタグラインです。「満タン」という単語からは「満たされる感」を感じることができます。オマケに「満タン」という単語が登場するのは主にガソリンスタンド。つまり、業種も一発で理解できる。すばらしい。
ちなみに番外編というか、どこかで誰かに聞いたのか見たのか忘れましたが、解体屋さんのタグラインがこちら。
- 人の人生以外なんでも壊します
これもいいですね。「人の人生は壊せないというより壊したくない」という姿勢と「壊せないものはなにもない」という技術力を感じさせるタグラインです。
さて、最後に大番外編という形でもう少し言葉のお話をします。
「ネガティブなようでポジティブに使える言葉」というものがあります。たとえば以下の言葉。
- あきらめが悪い
一見すると「しつこい」「くどい」「潔くない」というイメージですが、マンガ「スラムダンク」ではこのように使われています。
- オレは三井寿 あきらめの悪い男
ご存知でしょうか(ちょっとマニアックでしょうか)。スラムダンクはご存知の通りバスケのマンガですが、全国大会の大一番で終了時間が迫る中、逆転を狙う三井寿(ひさし)が言ったセリフです。シーンによってはネガティブな言葉がものすごくポジティブで強い力になることがある例です。
まあ三井寿といえば「安西先生・・・バスケがしたいです」のほうが有名ですが。。。
「不思議だけどなんか分かるなー」という言葉でいくと、こんなものがあります。
- 言葉はさんかく こころは四角
これは「くるり」というバンドの曲なのですが、曲調と相まって人間模様というか「人間って」みたいなことを感じます。
大番外編の最後は、「背景がわかると感じ方が変わる」ということについて。
最近You Tubeで知って好きになったシンガーソングライターがいます。「カネコアヤノ」という人です。「はっぴいえんど」などに影響を受けたという彼女の曲のひとつに「閃きは彼方」という曲があります。
まずは歌詞を見てみましょう。
何の曲か。「会って話したい 君と」や「触りたい 君を」などの歌詞から、一見すると恋愛の歌のように感じます。
これ、真実は定かではないのですが、この曲のビデオクリップがYou Tubeにアップされたのが、2021年3月11日なんです。このことから、この曲は恋愛の歌でも何でもなく、震災で生き残りながらも大切な人を亡くしてしまった人へ向けた歌ではないかと言われています。
その背景に照らし合わせて歌詞をよくよく見てみると、急に感じるものがあります。「気づけば怖いくらい強くなった」けど、そんなものは君がいなければ「意味がない」、「会って話したい」「君を触りたい」、でもそれはかなわない。
この絶妙な抽象度と彼女の歌声から、ものすごく深い何かを感じます。You Tubeのコメント欄には「もはや聖歌」と書かれているものがありましたが、私もそう思います。最近私が一番聴いている曲です。ぜひ聴いてみてください。
今回はここまでです!
津久井
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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