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2024年09月27日 メールマガジン 人財 公開する 所感 本の紹介 【第737回】組織を蝕む「ゆるさ」と「しじみ」の話

火曜日から出張に出ておりました。高知からの北海道で昨日の夜遅く帰宅。

コ□ナで良くも悪くもZoomなどのオンライン通話が主流になってから、人と直接会う機会は減ってきていると思います。でも、だからこそ直接会うことの価値は高まっているとも思います。

今回もいつもお世話になっているお客さまからはじめてお会いするお客さままで、いろいろとお話をさせていただいたり会食をさせていただくことができ、とても楽しかったです。

ビズアップは基本的にはインターネットでお客さまに来ていただいていますが、だからといってネットですべてを完結させるべきではないと考えています。

私たちは「出会いはデジタル、お付き合いはアナログ」をモットーにしています。これからも私や弊社スタッフが直接お客さまに会いに行くと思いますので、その際はぜひよろしくお願いします。

さて、コロコロニュースです。手短に。

公約達成率98%で天下りや湾港利権と戦っていたそう

金に魂を売った悪魔たち

そういえば今日総裁選ですね

兵庫県知事の件はおかしいと思っていたらやはりボロボロと情報が出てきましたね。天下り、利権と戦っていたと。で、都合が悪い人たちが潰しにかかったというのがどうやら真相のようです。

そもそも、なんでおかしいと思ったか。テレビやネットの主要メディアが一斉に斉藤知事を叩き出したからです。主要メディアはウソつきです。各社が同じことをいい出したらウソを疑って自分で調べたほうがいい。逆にわかりやすい。

東京都の緑のおばさんは公約達成率実質0%です。それに対して98%の実行力を持つ知事。東京都知事になってほしい。

さて、本題です。

先日、Twitter(現X)を見ていたら、お笑い芸人キングコングの西野さんの投稿で考えさせられるものを見つけました。以下のものです。

すごく考えさせられました。これは言い方を変えれば「泥臭いことをできるかどうか」だと思います。

自分も含め、今のビズアップのスタッフは泥臭いことをできるのか、しているのか?御社はどうですか?

本日はだいぶ所感チックですが、そんなお話をしてみたいと思います。

 

●緊急ミーティング「このままでは組織崩壊する」

私はお笑い芸人の「おぎやはぎ」が好きなのですが、以前おぎやはぎは「ゴッドタン」という深夜番組で、東京は足立区竹塚のキャバクラ嬢「あいな」に次のような鋭い分析をされていました。

「No1になるのがカッコ悪いと思っている」

一キャバクラ嬢とは思えないほどの鋭すぎて図星過ぎるコメントにはずかしがるおぎやはぎと爆笑する他の出演者が印象的なシーンでよく覚えています。

おぎやはぎをはじめとした関東の芸人は、関西の芸人に比べて「ゆるい」イメージで、それが関東と関西の芸人を分けるひとつのスタイルになっていることは間違いありません。関東芸人の良さでもあります。

しかし、「あいな」がいうことはもっともな部分が色濃くあります。

これはおぎやはぎや関東芸人に限らず、多くの日本人に特徴的なものだと思います。なんとなく1番を目指してがんばることや泥臭いことをやることが「カッコ悪い」という風潮があると思うんですよね。

しかし本当にそれでいいのでしょうか?そして「泥臭い」は本当にカッコ悪いことなのでしょうか?

先週、先々週のコラムではビズアップの昔話をさせていただきました。創業してから6年目くらいまでのビズアップは規模も小さく、よく言えばベンチャースピリットにあふれているという面がありました。

社員や合同事務所に在籍しているデザイナーは、おそらくではありますが私の影響で「マインドを強く、高く持たなくては」と思っていたと思います。

なので私が勧める本を読んだり、私と同じセミナーに参加してみたりというメンバーが全員とはいいませんが少なからずいたのです。

当時のNo2とNo3だったNとTももちろんそうでした。

ところが、あるデザイナーが合同事務所にジョインしてから、ちょっとずつ様子が変わってきました。そのデザイナー「W」は、とても「ゆるい」タイプだったのです。まさにがんばることや泥臭くやることがカッコ悪いと思っているタイプ。

それはそれで個人の自由ですし、W自身も悪気があったりそれ(ゆるさ)を人にも勧めたいと思っていたわけではないのですが、しかしながらWの謎の影響力により、徐々に社内は悪いゆるさに侵されていきました。

No3のTをはじめとした数名のメンバーが、常にギラギラしている私に少しずつ反旗を翻すようになってきたのです。

もっとも、私がギラギラしていた理由も「未来」や「希望」といったキーワードに代表されるものもありつつも、先週のコラムでお話したように「不安」といったネガティブな部分も色濃かったため、なんとなく不満を感じつつも態度に出せなかったものが、Wのゆるさや存在感をとおして出てきた、という感じでした。

仕事の期日を守らなくなったり、始業に遅刻したり。私も当時はギラギラしていたので「遅刻してんじゃねーよ!!!」と怒鳴り飛ばしたりもしていました(汗)。

私はこのままでは組織崩壊すると思い、Wに事務所から出ていってもらうように画策しました。そして緊急ミーティングを開き、所内の全員を集めて、Wに「出ていってほしい」と伝えました。

結果、Wに影響されているメンバーは私を批難し、私の味方をしてくれると思っていたNo2のNを含む数名は急に中立の立場を取りはじめ、私一人が孤立し、最終的に私が全員にお詫びしてミーティングが終了しました。当然、Wの退所もなしになりました。

その後、社員のほとんどが辞めてしまったというのは、先週のコラムでお話したとおりです。

別にギラギラしたりオラついたりすることが必要だとは思いませんが、一方で「ゆるさ」というのは危険もはらんでいると、これらの経験をとおして私は強く感じています。

 

●「一生懸命生きているだけで滑稽に見えてしまうもの」

「川の底からこんにちは」という映画をご存知でしょうか。

10年以上前にたまたまTSUTAYAでDVDを借りて見たのですが、内容も評判もわからないまま借りたわりにはものすごく面白くて、ずっと「また見たい」と思っていました。

そうしたら、アマプラ(Amazonプライムビデオ)にあるではないですか。過去に検索したときにはアマプラにもNetflixにもなかったのに。見たらやっぱり面白かった。

Amazonプライムビデオで見れます

「川の底からこんにちは」はヒューマン・コメディ映画です。主演は満島ひかりさん。彼女の他の映画(愛のむき出し:園子温)とかも見ましたが、役者としてはすばらしいですね。

どんなストーリーかざっくりお話しますね(ネタバレになっちゃいますが)。

主人公の佐和子(満島ひかり)は東京でOLをしていましたが、毎日非常にゆるい生活をしていました。OLの先輩たちもゆるければ、付き合っている彼氏(バツイチ子持ち)もゆるく、本人も自分の感情を表に出したり人生にやる気を持つ意味や価値なんてない、と言わんばかりの生活をしていました。

そんな中、実家で潰れかけの「しじみの加工場」を経営しているお父さんが倒れます。それがきっかけで、ダメ彼氏にそそのかされ、会社を辞め連れ子と3人で実家に帰ります。

実家の工場はゆるく適当な仕事をしている古株のおばちゃんばかり。そこで陰口を叩かれまくり、それでもやる気のない佐和子は気にも留めません。

ダメ彼氏は連れ子をおいて、工場で唯一の若手であり佐和子の同級生の女性と駆け落ちしてしまいます。それでもまだ佐和子は妥協して感情を表に出すこともなく、ゆるく生きています。

転機は連れ子を迎えに来たダメ彼氏に退院したばかりのお父さんが大雨の中突き飛ばされたとき。

それほど関係性が良い親子ではありませんでしたが、何を感じたのか、すべての糸が切れたかのように佐和子はブチギレます。ブチギレた爆発の方向は、なぜか「がんばるしかない!」というほうに向いていました。

  • 「(連れ子に対し)あんただって所詮、たいした子どもじゃないんだからね。だからがんばるしかないんだよ」
  • 「あたしなんて所詮、中の下の女ですからね!あ、でも逆に中の下じゃない人生送っている人なんているんですか?いたら手挙げてください!いないでしょ!?」
  • 「みんなちょっと普通より下なんですって。でもそれの何が悪いんですか!!あたしなんて男に何回捨てられてもがんばりますからね!ていうか、がんばるしかないんですから!!」

といった、自己肯定感を上げようとしているのか下げようとしているのかよくわからないセリフの数々がまた面白いのですが、ここにやはり「泥臭さ」を感じます(しじみだけに笑)。

これに謎に感化された工場のおばちゃんたち。こうして実家の工場は息を吹き返すというお話です。

「一生懸命生きているだけで滑稽に見えてしまうもの」

というセリフも出てくるのですが、「滑稽でもいいじゃん!」「がんばろうぜ!」というメッセージをすご〜く遠回りに発信しているのがこの映画の面白いところです。

「一生懸命生きているだけで滑稽に見えてしまうもの」。もしもそうだとして、それでも一生懸命生きる道を選ぶのか、それとも滑稽に見られないことを選ぶのか。最終的に笑って人生を終えられるのはどちらなのでしょうか。

ちなみに完全に余談ですが、佐和子がブチギレてから、この工場のしじみが飛ぶように売れるようになります。

そのときのパッケージや販促物のデザインがこちら。

陰口を叩いていた工場のおばちゃん(リーダー格)

子どもはダメ男の連れ子

なぜか飛ぶように売れる(笑)

これをやる(このデザインを採用する)勇気(ある意味「泥臭さ」)がある企業なら復活できると思ってしまいました。メリコの法則の「コ」があるかはわかりませんが、「メ」はダントツだし「リ」も強い。。。

学びが多い映画だな(笑)

 

●「オンリーワン」を言い訳に使っていないか?

そんな私も、一番を目指すのがカッコ悪いとか、別に一番じゃなくてもいいじゃん、と思っていた時期があったと思います。

サラリーマン時代の話ですが、先々週のコラムでお話したH社の社長(当時私と同い年の28歳で社員80人くらいの会社を経営していた)と、会社の呑み会(カラオケ)で一緒になったときのことです。

私の歌の番になり、SMAPの「世界に一つだけの花」を歌った際、その社長に言われたのが次のセリフでした。

「凡人の歌、歌ってんじゃねーよ!!」

ナンバーワンじゃなきゃダメだそうです(笑)。でも、起業してからこれはよくわかります。

ちょっとブランディングにも関わる話をするならば、オンリーワンでもいいんです。しかし、「ナンバーワンになれるオンリーワン」が正解です。そのオンリーワンを取りに行くことでナンバーワンになれるかどうか。これがブランディングの中でも「ポジショニング」と言われるものです。

社員であれば、その会社の中で「これだけは負けない」「これができるのは自分だけ(オンリーワン)」というものを見つけ、泥臭くそこに邁進しているかということになります。

「オンリーワン」は、間違っても「ナンバーワンを目指さないやる気のなさや自己肯定感の低さを容認するもの」ではないということです。そして、大抵の場合、ナンバーワンを目指すには「泥臭さ」が必要です。イコールオンリーワンを目指すにも泥臭さが必要ということです。

ここを履き違えて「私は今のままで(成長しなくても)いい、だってオンリーワンだから」という解釈(=言い訳)をする人のなんと多いことか。

昨日、出張中にオンラインセミナーを受けました。講師は、奥さんのお父さんの経営する工場を引き継いだ社長の話。総額40億近い負債を7年で返しきった経営者の話です(しじみの加工場ではありません笑)。

セミナーでは、「これをしたからうまくいった」という話はなく、100以上の打ち手を粛々と泥臭くこなしていった、ということでした。

話は変わらないようで変わりますが、セミナーといえば、私もたまに人前でお話をする機会をいただきます。

私のセミナーは、自己紹介だけで20分以上あります。そこでお話するのは、自分の恥ずかしい過去です。特に、自分がウジウジしていた小中学生時代の話。このコラムをよく読んでくださっている方ならばわかると思いますが、「普通コンプレックス」というものに苛まれていたときの話です。

そのときの私は、もしかしたら「川の底からこんにちは」の佐和子のようだったかもしれません。自分が友人や先生から認められないことを、やる気をなくし「認められなくてもいいや」というスタンスになることで有耶無耶にする、ごまかす、自分に言い訳をする。

そんな中でも、常に頭の中では自分をどう表現すれば人に認められるか、一目置かれるか、仲良くしてもらえるかということばかり「妄想」していました。それが「表現力」というコアスキル(人生を生きしのいできた力)となり、今の仕事につながっている、というお話をセミナーの自己紹介のときにするんですね。

セミナーに来る人は、私の場合は能動的、積極的に話を聞こうという人ばかりではありません。

なぜなら、どこかの商工会の会員や企業の社員さん向けに「呼ばれて」話すだけで、「この人の話を聞きたい!」と申し込んできた人のほうが少ないからです。「なんだかよくわからない会社の偉そうなヤツが講演しに来たな」くらいに斜に構えている人もいます。

そこで先ほどの自己紹介をするんです。自分の恥ずかしい過去や弱い部分を話す。そうすると、多くの人が私の話を聞こうというスイッチが入るんですね。今までの経験上、それは百発百中です。

特にこれは男性のほうが顕著です。以前、玉川大学のデザイン学科(?)みたいなところで講演したときのことです。

そのクラスは30名くらいの生徒に対し、男子は4名くらいしかいませんでした。私を講師として呼んでくれた先生は、「このクラスは男子が元気がない。やる気もない。女子はパワフルだけど男子はぜんぜんダメなんです」といったようなことを講演前に教えてくれました。

このときも長い自己紹介を経てから本題に入り、講演の最後に質問を受け付けたところ、男子が全員私に質問をしてきました。そんな積極性など持ち合わせていないと思っていた先生は、その光景をみてびっくりしていました。

みっともなく泥にまみれた姿を多くの人が見せたくない、見せないほうがいい、と感じていますが、果たしてそれは本当なのか。カッコ悪い自分を見せないのが正解なのか。私の経験上、それはノーです。

楽に、スマートに、賢く結果を出す。そういうことができる人ももちろんいるでしょう。

しかしそれは一部の天才か、またはそう見えているだけで実はものすごくカッコ悪かったり泥臭いことを乗り越えてきた人のどちらかだと私は考えます。

しじみのように小さくて泥にまみれていても味と栄養がぎゅっと詰まったような、そんな生き方をしたほうが、死ぬ前に「いい人生だった」と思えると思うんですよね。そしてもしかしたらしじみではない、もっと大きな貝であるかもしれない可能性にも気づける人生になると思うんです。

笑われてもいいので、どんどんカッコ悪い自分をさらけ出して泥臭く生きていこう!

 

今回はここまでです!

津久井

投稿者プロフィール

津久井 将信
津久井 将信
ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。

かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。

2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。

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