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本日はいきなり本題。ブランディングのお話です。いつもよりブランディングを体系的に語ってみたいなと思います。
先日、とある会に弊社の営業7人と参加しました。
そこで講師をしていた女性が、ブランディングの話をしはじめたんですね。その方も良かれと思ってやったのかもしれません。
しかし、その人は我々がロゴとブランィングの会社だとわかっています。それなのにブランディングの講釈をはじめたもんですから、ちょっとイラッとしてしまいました(しかもそもそもの会の趣旨ではない)。
話の内容も「ブランディングとはこうなのよ!」という決めつけがはげしく、なんだかなー、という感じでした。
その女性は、ブランディングを「想起させること」と言い切っていましたが、私に言わせればそれでは片手落ちもいいところです。
というわけで、うっぷんを晴らすかのように(笑)津久井流ブランディング理論についてお話したいと思います。こんな構成でお話します。
- ●「ブランディング」と聞いてよくする間違い
- ●なぜ間違いなのか?
- ●では、「ブランディング」とは?
- ●ブランディングにはステップ(階層)がある
- ●知られる・知られている
- ●理解される・理解されている
- ●記憶されている
- ●2階層目と3階層目は逆なのではないか?
- ●「知ってもらって、理解してもらって、覚えていてもらう」は営業活動でもできる?
- ●リピーター化
- ●ファン化
今日はボリューミーなのでコロコロニュースはお休みです。それでは張り切っていきましょう。
●「ブランディング」と聞いてよくする間違い
「ブランディング」と聞いて、多くの人がする「よくある間違い」は以下のものです。
- かっこよくすること
- ファンにすること
- 想起させること
まあ、正確には間違いではないのですが、これだとブランディングの一面しか語れていない、ということになります。
そもそも「ブランディング」とは「フワフワ語」です。「フワフワ語」とは私の大好物でして、「世間的によく使われているけど、誰もきちんとわかっていない、なんとなくで使われている言葉」です。
たとえば「コンセプト」とか(「コンセプト」に関してはこのコラムで何度も説明しております)。
「ブランディング」もまさにこれで、だから「かっよくすること」とか「ファンにすること」とか「想起させること」とか人によってそれっぽいものがいくつも出てしまうわけですね。
なので、これから「ブランディング」をはじめとした「フワフワ語」を語る人は、「私の定義では」を前置きとしてきちんとつけてから語ってほしい(実は私はこのコラムではそれを地味にやっています)。
●なぜ間違いなのか?
さて、なぜ上記の3点だと片手落ちなのかをお伝えしましょう。
まず、ブランディングを「かっこよくすること」と定義してしまうと、「じゃあ驚安の殿堂ドン・キホーテはどうなるんだ?」ということになってしまいます。
ドン・キホーテはきちんとしたターゲティングのもとプロモーションを考えています。そしてそれが当たっているからあそこまでの企業になっています。
お金を持っている人からは「ダサい」と感じるかもしれませんが、あの店内の雰囲気、POPのデザインだから刺さる人がいます。そしてそれを狙ってやっている以上、そこには「ブランディング」が存在します。
つづいて、ブランディングが「ファンにすること」だと片手落ちの理由は、ファミリーレストランを思い浮かべてみるといいでしょう。
ファミリーレストランのファンという方、いますでしょうか?まあ、いないわけではないでしょうが、日本や韓国のアイドルグループを好きな人たち(つまりファン)と同じレベル感でファミレスが好きな人はそうそういないと思います。
アイドルグループとリアルであって感動、興奮する人はいますが、「もう、私デニーズを見ると居ても立ってもいられない!」とか、ガストを見つけて泣くほど喜ぶ人とか見たことありません(もちろんいるかもしれませんよ笑)。
では、ファミレスは「ブランディング」をしていないのでしょうか?そんなことはないだろうということは想像に難くないと思います。
私の理論では、彼らは「失敗を避けるブランディング」をしています(これについてもコラムでお話したことがありますが、ここでは詳細な説明は割愛します)。
「乾電池」などもこれと近いです。パナソニックのアルカリ乾電池を見つけて卒倒するくらい感動する人は、今のところ見たことがありません(笑)。
最後の「想起させること」について。「想起させること」はブランディングにおいてたしかに非常に重要な要素です。しかし、これだけではやはり片手落ちです。「想起させるだけでは購買に至るかわからないから」です。
ブランディングはビジネスのために行います。購入されなければ意味がありません。では、人は想起したら買うのでしょうか?そんな単純なわけがありません。想起はしたけど売り場にいったら別の競合商品を買ってしまった、というケースもあります。
また、想起させることがブランディングだとしたら、「衝動買い」の説明がつきません。「はじめて知って即購入」というケースの説明がつかないわけです。
たとえば、街を歩いていておしゃれなカフェに入ることを想像しましょう。そのカフェを知ったのは道を通ったとき。つまり「今はじめて知った」状態です。
それでも入店しようと思うこと、ありますよね。「はじめて知った」状態なわけだから、想起もクソもないわけです。
●では、「ブランディング」とは?
では「ブランディング」とは何なのか?
私の定義では(笑)、「ブランディング」とは「選ばれる、選ばれつづけるための施策全般」となります。
ドン・キホーテはかっこよくはないけどある一定層に選ばれています。ファミレスは涙を流して感動するほどのファンはいないけれど、ある一定層に選ばれています。街で偶然見つけたカフェは、その場で「いいな」と思われ(または他の理由で)選ばれています。
これを再現性を持ってやりましょう、というのがブランディングだということです。
ブランディングは「かっこよくすること」ではなく、その商品、業界において「選ばれるため」に「たまたまかっこよくするというブランディングを使用した」だけです。逆に多少ダサいほうが「選ばれる」商材、業界もあるということです。
ブランディングにおいて「ファン化」は非常に重要な要素であることは間違いありませんが、商材、業界によってはファンになってもらわなくても「選ばれつづける」ようにブランディングすることもできます。
ブランディングでは「想起させること」も重要ですが、その場で「すごくいい!」と思ってもらえるような「選ばれ方」のほうが、商材、業界によっては「想起させる」よりもよっぽど重要だったりします。
●ブランディングにはステップ(階層)がある
それでは、ブランディングについてより具体的、体系的にお話してみたいと思います。
ブランディングにはステップがあります。そのステップが次のようなものになります。
まず、「知られる・知られている」というフェーズがあり、次に「理解される・理解されている」というフェーズがあります。つづいて「記憶されている」というフェーズがあり、ここまではまだ消費者に購買経験がない状態。
つづいて、購買してもらい、「リピーター化」という再購入してもらうフェーズが来ます。最後に「ファン化」となります。
ちょっと説明しましょう。
●知られる・知られている
極端な思考実験をしましょう。
めちゃくちゃにうまいラーメンをつくるラーメン職人が起業して自分の店をひっそりと出しました。サハラ砂漠の真ん中に。。。
さて、あなたはこのラーメン屋さんがオープンしたことを知ることはできるでしょうか?
今ではSNSもあり、こんな変わったラーメン屋さんがあったらもしかしたらあっという間に広がるのかもしれませんが、大抵の場合は「知られる」ことなく、そのお店の生涯も誰にも気づかれずひっそりと終えることになるのは想像に難くないですよね。
人は、その存在を知らなければ購入することができません。至極あたり前のことですが、では知ってもらうための活動を戦略的に再現性を持ってやっている企業というのはいったいどのくらいあるのでしょうか、という話です。
ここでポイントとなるのは、「知っただけで一定の割合の人が購入する」という現象が起こることです。
ひとつは「タイミングがバッチリだった場合」。「ちょうど〇〇しようと思っていた!」という場合です。
たとえば飲食店であれば、人間は1日3食の食事をとることがほとんどですから、「タイミングが合いやすい」となります。「ちょうどラーメン食べたいと思ってた!」ということで、知られてすぐに購入してもらえるわけです。そういう観点で(それを狙って)立地を選ぶとしたら、それもブランディング活動の一環です。
また、「強烈にほしいと思わせられた場合」というのは、「衝動買い」などに代表されるケースです。女性が洋服を買うときなどが多いですよね。
●理解される・理解されている
一般的には「知る」だけでなく、それがどういうものか、どんな特徴があるかを「理解」してから購入しようとするのが人間です。
「このラーメン屋さんは食べログで何点なのか?本当においしいのか?自分の好みの味なのか?」
「このデザイン会社は競合他社と違ってどんな特徴を持っているんだ?何のデザインが得意なんだ?」
「このエステサロンのエステティシャンはどんな人なんだろう?気が合うかな?」
などなど、購買の前には自分が購買すべき正当な理由をほしがるため、その会社、商品の特徴や強み、らしさを「理解」しようとします。
私がよくお話している「言葉と画(え)」の話や「コンセプト」の話、「比較の戦場(第三次比較戦争)」の話や「差ではなく違いで勝負するのが本当の差別化」という話は、この「理解される・理解されている」のフェーズでのお話となります。
見込み客にどのように理解されるべきなのか?そのために必要な言葉と画(え)は何なのか?ということですね。
ただし、「言葉と画(え)」は「知られる・知られている」のフェーズに寄与する場合も多くあります。タイミングが合った場合や衝動買いを起こす場合というのは、言い換えるならば「知られた瞬間にどう理解されるか?」ということにほかならないからです。
●記憶されている
知って、理解されたからといって即購入されるとは限りません。業界、商材によってはその傾向は顕著です。主に高額商品の場合がわかりやすいでしょう。たとえば家とか車など。知ってから購入するまでにタイムラグがあります。
ここで重要なのが、「1番に思い出してもらえるか」です。1番に思い出してもらえれば、接触してもらえる可能性が高まります。接触してもらえれば、購入してもらえる可能性が高まります。
これを、私の友人でリピーターコンサルタントの一圓克彦氏は「脳内SEO」と名づけています。
記憶されているか、脳内SEOで1番に思い出してもらえるかを知るには、このコラムで何度かお話している「ブランディング魔法の質問©」が有効です。
「ブランディング魔法の質問©」は、とてもカンタンな質問をするだけです。それは「〜〜と言えば?」という質問。
たとえば「液晶テレビと言えば?」という質問には、多くの人が「SHARPのAQUOS」と答えそうですよね。この場合、1番に思い出してもらえていることになります。
「この商店街でうどん屋さんと言えば?」のようにエリアを限定すれば、その商店街で1番に思い出されているうどん屋さんがわかります。あなたがうどん屋さんを経営しているとして、そこに名前がどのくらい上がるかどうかがキモになるというわけです。
3階層目は「想起させること」と言い換えても間違いではありませんが、冒頭で「想起させること」がブランディングの一面しか見ていないとお伝えした理由は、この3階層目の話のみに終始しているためです。
さて、この「魔法の質問」が魔法たる所以(ゆえん)がもうひとつあります。質問をひっくり返すと、自社がどう思われているかを知ることができるということです。
たとえば、「自動車メーカーと言えば?」という質問であれば、多くの人が「TOYOTA」とか「NISSAN」と答えると思いますが、これをひっくり返して「TOYOTAと言えば?」と質問するのです。
そうすると、TOYOTAがどう思われているかがわかります。ここで得られた情報は、2階層目の「理解される・理解されている」のフェーズの見直しに非常に有効です。
自社がどう理解されているのか、それは狙ったものなのかそうじゃないのか、好ましいものなのかそうじゃないのか、などがわかり、それらをさらに言葉と画(え)で磨いていくことで2階層目が強くなるというわけです。
●2階層目と3階層目は逆なのではないか?
ちなみに、2階層目と3階層目は逆なのではないか?という疑問を持たれた方もいるかもしれません。「知って、覚えていて思い出し、そこから理解しようとする(調べるなど)」が正しい順番なのではないかと。
そういうケースもなくはないですが、これが成立するのは大量のテレビCMなどで露出しつづけられる大企業のみだと私は考えています。
そうではない会社は、知ってもらった瞬間になるべく「良い形」で理解してもらうことが重要です。「良い形」とは伝えたいことが瞬時に伝わることです。
このコラムで何度もお話している「コンセプト」。「コンセプト化」が重要なのは、短い時間(文章量)に圧倒的な情報が含まれていて、瞬時に伝わるからです。
つまり、コンセプト化できれば知ってすぐに「良い形」で理解してもらうことができます。そうすれば、良い記憶を持ちつづけてもらうことができます。これが、2階層目と3階層目の順番をこのようにしている理由です。
なお、3階層目の「記憶されている」状態をつくるためには、良い形で記憶されているだけでは足りなく、やはり記憶されている状態を保つための施策は必要になります。
さて、3階層目まで見てきましたが、ここまでは「購買前」に起こることです。
●「知ってもらって、理解してもらって、覚えていてもらう」は営業活動でもできる?
ここでお伝えしなければならないポイントがあります。
「知ってもらって、理解してもらって、覚えていてもらう」は営業活動でもできるよね?と思われた方もいるのではないでしょうか。営業活動ですむならブランディングいらんやん、と。
私は営業活動は必要だと思うし、業種業界、商材によっては営業活動もブランディングの一環だと思っています。
とはいえ、では営業活動とブランディングの違いはなにか。これも明言しておく必要があるでしょう。
ほとんどの見込み客が、あなたの会社のことや商品のことを知りたがっています。ただし、あなたやあなたの会社の社員に接触せずに。
つまり、知って理解する前に接触されたくないんです。ここが重要なポイントです。
よく聞く話ですが、テレビCMやタクシー広告を打つと何がよいかって、営業マンが接触しやすくなったり採用活動がうまく行きやすかったりするわけです。
これはとりも直さず、テレビCMで「知って理解して記憶している」状態だから接触してもよいと思われた、ということです。
太陽光発電の訪問販売会社のお客さまは、テレビCM(地方ローカル)をやってから、営業マンが訪問時に話を聞いてもらえる確率が格段に上がったといっていました。
特にこれだけ選択肢の多い「モノ→デザイン→色の時代」の「色(バリエーション)の時代」となると、見込み客は選びたいわけです。候補があるわけです。その段階では接触されたくないわけです。
●リピーター化
見込み客が3階層を乗り越えて購買してくれたあと、我々がしなければならないのは「選ばれ【つづける】ための施策」である「リピーター化」です。
この階層は、商材によってはリピートがないものもありますが、リピートだけでなく「紹介」も含むこととしています。
リピーターをつくったり顧客流出を防ぐためのノウハウはたくさんあります。なのでここでは多くを語りませんが、ひとつだけお伝えするなら、
- お客さまが自社を選び【つづける】理由を明確にする
ということです。この「選びつづける理由」は、実は企業側が当初思っていることとは違ったりすることが往々にしてあります。購入体験を通して、顧客の企業への評価が良くも悪くも変わる可能性があるからです。
なので、改めて選びつづけてくれる理由を明確にする必要があるわけです。
ここで、先ほどの「ブランディング魔法の質問© 」がまた役に立ちます。購買経験がある人に「〇〇(自社名または自社商品名)といえば?」と質問するのです。
こうすると、選びつづけてくれる理由が(またはその逆も)わかります。
リピーターづくりについては、前述のリピーターコンサルタント一圓克彦氏のノウハウがおすすめです。人がリピートする理由をきれいにパターン分けした独自のノウハウで、講演会も大人気です。本も書いているので調べてみてください。
ちなみに一圓克彦氏は、「リピーターには4つの型がある」としています。
●ファン化
ここまでくると、一部の業界、商材ではファン化が起こります。アイドルなど芸能界、芸能人はイメージしやすいかもしれません。
他にもカリスマ美容師(今はもういない?)なんかもファン化の一形態でしたね。車(高級車)などもファン化しやすい商材のひとつ。いわゆるブランド品などもそうです。
「ファン化」できれば企業にとっては飛躍的成長を遂げることができるでしょう。
しかし、ここだけ切り取って「ブランディングとはファンをつくること」としてしまうと片手落ちだということ、業種業界、商材によってはファン化はしないことは、ここまでの話でご理解いただいていると思います。
「ファン」や「ファン化」については非常に言語化が難しい分野で、私もいまだに研究中です。
おそらく、ファンが言語化しづらいのは、「why」に関係しているからだと考えます。「why」とは、私の心の師匠サイモン・シネック氏が提唱する「ゴールデンサークル」という理論に出てくるものです。
この「why」は人間の脳の構造上、言語化しづらいものと私は考えています。人間が言葉を司るようになってから発達したと言われる「大脳新皮質」ではなく、もっともっと昔から存在すると言われる「大脳辺縁系」に関わるためです。
ひとつお伝えするならば、ファン化にはある種の距離感が必要になると考えます。
「好き」と「ファン」は似て非なるものです。奥さんのことが好きな場合、「奥さんのファン」とは言わないはずです。そこには近すぎず遠すぎずの距離感がある気がしてならないんですよね。
さて、相変わらず小難しいお話をしてしまいましたが、ブランディングの全体像はつかんでいただくことができたのではないでしょうか?
今回はここまでです!
津久井
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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