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書き出しはちょっとしょうもない世間話というか。。。少し長いですがお付き合いください(読み飛ばしてもらってもけっこうです)。
先日、家族で函館と札幌に旅行しました。
我が家では一昨年から、春休みに家族で旅行をすることが通例となりました。
一昨年はちょうど我が家の子どもたちが全員1年生になった年でした。高校1年生、中学1年生、小学1年生。
今までは家族旅行はあまり行ったことがありませんでした。というのも、盆と正月はヨメの実家に帰り「だらける」というのが慣例だったからです。
それもどうかな、ということもあり、全員1年生の記念に家族旅行を毎年1回することを決めました。
今回の旅はとても不思議でした。
まず、羽田から函館行きの飛行機の中で、偶然長男の同級生(我が家にも遊びに来たことがある)に会いました。そんな偶然ありますかね?
同級生は隣の駅に住んでいるのですが、どうやら乗ってきた電車(井の頭線、山手線、京急線)も全部同じ時刻の電車だった模様(笑)
で、ついた日の夜は函館山に。そこでロープウェイで行き帰りに1時間並ばされ、でも山頂には5分しかいませんでした(夜景しかないし人が溢れかえっていた)。もう二度と行かないと心に誓いました(泣)
夕飯を食べてタクシーでホテルに帰る途中、ヨメが具合を悪くしました。どうやら食あたりの模様。
2日目はヨメは日中動けず寝込み、私たちは大した函館観光もせず夕飯。夕飯時にはヨメも回復してきたので外食。
3日目は札幌に移動しました。
私が味噌ラーメンで一番美味しいと思っている、しかもビズアップでロゴをつくらせていただいた一粒庵さんに行きましたが、ホテルにチェックインして15分ほどだらけてしまったがために、お昼の営業時間を5分ほど過ぎてしまい食べられず。。。
4日目(最終日)のお昼に来ようと思ったら、火曜日は定休日とのこと(泣)。結局食べられませんでした。子どもたちに食べさせたかった。
夜は適当に入った居酒屋で、ばったり仲良し経営者に遭遇。このコラムでも何度か登場する、リピーターコンサルタントの一圓克彦氏。
札幌在住ではあるものの、おそらく月の半分以上を出張で飛び回っているので、まさか適当に入った居酒屋で偶然会うとは。しかも聞いたら一圓さんもはじめて入った店だったとのこと。長男の同級生といい、こんなに偶然の遭遇が重なることって人生初。
ちなみに一圓さんはユーチューバーとしても活躍中です。フェリーに乗りまくりで登録者数11万人超え!エンイチぶらり旅。
4日目はがっつり予定を組み、円山動物園からの早めに新千歳空港に行き、晩ごはんを食べ、空港併設の大浴場に入ってから19時半の飛行機に乗って帰る予定でしたが。。。
まず、ムスメが子供用ケータイをなくしたことが判明。捜索で1時間ロス。すっかり予定から出遅れました。動物園を出たあと、空港に向かうリムジンバスの中でヨメの体調が再度悪化。バスの中で嘔吐。
空港についてもまだ「動けない」ということで、諦めて空港併設のホテルにもう1泊。
ヨメをおいて空港内の松尾ジンギスカンで夕食。その後行ったゲームセンターで今度は次男がスマホをなくし、こちらは閉店時間ギリギリで見つかりなんとか事なきを得ました。
その日の夜中、ゲーゲーと吐く声で目が覚めると、次男がトイレで嘔吐していました。ヨメの食あたり(ノロとか?)が感染ったかと戦々恐々としました。これはさらに1泊もあり得るなと。。。
結局、ヨメも次男も翌日は帰れる程度には回復したので(次男はジンギスカンがあたった?)、昼前の便で帰京。最後に渋谷駅で初日にあった長男の同級生にまた会うという謎のオチがついて旅が終了。
この珍道中をなぜかみなさんにも共有したくて長くなりましたが書きました。珍道中というか、我が家が不注意なだけ説がありますが(笑)。仕事と違ってプライベートはいい加減なんです(汗)。
それと、ムスメのケータイは見つかりました。新千歳空港のトイレの中。ムスメには「自分の大切なものは自分できちんと管理しないとダメだぞ」とたしなめていましたが、なくしたのはどうやらヨメのようでした(預かっていた)。ムスメ、ごめん。
ではコロコロニュース。本日は小林製薬特集!
というわけで、「がんばれ小林製薬!」という応援の気持ちも込めて、本日は小林製薬特集。
個人的には小林製薬は好きな会社です。なぜかというと、ブランディング(選ばれるための施策全般)が上手だからです。私の師匠である故伊吹卓先生も、小林製薬を高く評価していました。
本日は、以下の内容でお話してみたいと思います。
●小林製薬はなぜヒットメーカーになれたのか?
●自社の勝ちパターンを理解したネーミング
●小林製薬の失敗
それではいってみましょう!
●小林製薬はなぜヒットメーカーになれたのか?
小林製薬は、ヒット商品メーカーです。その名を聞けば、誰もが「知っている」という商品を多数輩出しています。
小林製薬は、「今現在は存在しないものを商品化する傾向」があります。つまり、二番煎じではない、ということです(もちろん二番煎じ商品もありますが)。
言い換えるならば、小林製薬が生み出しヒットした商品のほどんどが、それまでは市場になかった商品だということです。
これって、商品ジャンルやテイストはまったく違えど、やっていることの本質は実はアップルと同じです。
古くはiPod、そこからiphoneやiPad、アップルウォッチなど、まだ市場にない商品を送り込むことでその地位を確立したアップル。
「熱さままシート」や「トイレその後に」、「ブルーレットおくだけ」などの、市場にはなかったヒット商品を生み出した小林製薬。
つくっているものやブランディングの雰囲気は違えど、ここに本質的な共通項を私は見出しています。だから好きな会社なのかも。
そして、この企業コンセプトとでもいうべき核を明確に表したのが、小林製薬のタグライン(≒キャッチコピー)です。それが、
- あったらいいな!をカタチにする
「あったらいいな!」は「まだない」わけで、それをカタチにして人々に届けるのが使命だとよくわかるタグライン。
そういう意味では、アップルだけでなく「ドラえもん」にも似てますよね。「♪こんなこといいな、できたらいいな」みたいな(今はもうこの曲ではないんですよね汗)。
小林製薬のホームページには、「独自のビジネスモデル」としてこのあたりのことが紹介されています。
- 「小さな池の大きな魚」戦略
- “あったらいいな”開発
- わかりやすさのマーケティング
- 販売・育成・定着
【「小さな池の大きな魚」戦略】は、100億円の市場規模に挑戦して5%の5億円を売り上げるよりも、10億円の市場規模に挑戦して50%の5億円を売り上げるほうを、同じ売上5億円でも目指すべき、としたものです。
既存の大きな市場(池)に参入するのでは競争が激しく、シェアを広げられず、利益確保ができません。そのため、まだ誰も見つけていない新市場(池)を見つけ出し、その市場にファーストインして高シェアを獲得し、利益を確保します。その後、市場を牽引しながら拡大していきます。
小林製薬ホームページより引用
売上よりもシェア率が大切と言われます。わかりやすい明確な戦略です。
【“あったらいいな”開発】は、前述のとおり、「人々が“あったらいいな”と思うアイデアを生み出し、まだ誰も見つけていない新市場を見つける。(小林製薬ホームページより)」ということです。
ちなみに、小林製薬は商品開発会議で、消費者が商品購入後にどのような行動をし、どんなメリットを享受できるかを徹底的にシミュレーションし、ストーリー仕立てにし、さらにそれを営業用資料に落とし込むため、小売店バイヤーに強い説得力を持って営業できると聞いたことがあります。
●自社の勝ちパターンを理解したネーミング
3つめの【わかりやすさのマーケティング】もとても重要です。
私は、このコラムでたびたび出てくる伊吹卓先生の理論「メリコの法則」の中でも「リ」が一番重要だと考えています。
「メリコの法則」は、「メ」「リ」「コ」とそれぞれがある頭文字を取っていて、
- メ・・・目立つこと
- リ・・・理解できること
- コ・・・好感が持てること
の3つが、デザインや商品開発において重要という考え方を表した、伊吹先生が開発したフレームワークです。小林製薬はこの「リ」を非常に重要視している会社です。
そのDNAとも呼べるべきものが色濃く反映されているのが、小林製薬が開発した商品のネーミングです。特徴的なネーミングが多いので聞いたことがあるものばかりではないでしょうか。
- アイボン
- トイレその後に
- 熱さまシート
- チクナイン
- アンメルツヨコヨコ
- コムレケア
- オイルデル
- ガスピタン
- アセモア
- ハッキリエース
- のどぬ〜る
- キズドライ
- サカムケア
- ナイシトール
- イララック
- イージーファイバー
- 糸ようじ
- 消臭元
- ブルーレットおくだけ
- ケシミン
- ゴホナース
- コリホグス
- さぼったリング
- シミトリーナ
- スミガキ
- 洗浄中シリーズ
- タフデント
- タフグリップ
- チン!してふくだけ
- 爪ピカッシュ
- 天使のミミクリン
- トイレットペーパーでちょいふき
- ナイトミン
- なめらかかと
- パーシャルデント
- ハナノア
- フェミニーナ
- ブレスケア
- 無香空間
- やわらか歯間ブラシ
- ワキガード
- イージーファイバー
- セサミン
ここに挙げたのが小林製薬のブランドの一部ですが、知っているもの、耳馴染みがあるものや知らないけど聞いたらどんな商品かなんとなく理解できるものが多いのではないでしょうか。
- かっこいい
- オシャレ
といった印象に重心をおいたネーミングではなく、徹底的なわかりやすさ重視。
小林製薬は「あったらいいなをカタチにする」を軸に、まだこの世にないスペックのものをつくっているわけですが、まだこの世にないということは、基本的にはその商品は導入期です。
導入期の商品は、「わかりやすさ>印象の良さ」が必要です。もちろん、印象が悪くてもいいということではありませんが、わかりやすさを犠牲にして印象の良さを優先してはいけないということです。
新しいスペックを持った商品なわけですから基本的には消費者は「どんなモノか」知りません。
- 知らないものを
- 買うつもりのない状態の人に
- 一発で理解してもらう
そのためには圧倒的な「わかりやすさ」が必要になります。
これが、たとえば美容室などであれば、すでに成熟期というか「新しい価値」を届けているわけではないので、「わかりやすさ<印象の良さ」が重要になります(もちろんわかりづらくていいわけではない)。
私のネーミングの理論では、ネーミングは3種類に分かれます。
- コンセプト型
- 語感型
- ハイブリッド型
コンセプト型は、何を言いたいか、伝えたいかがわかるネーミングです。しかも短い名前の中にたくさんの情報量を含んでいます。
たとえば「料理の鉄人」といえば、ただ単に「料理がすごく上手い人」という以上の情報を含んでいます(厳しい修行を積んでいそうとか、腕組みしていそうとか)。
語感型は、意味よりも語感で印象づけるネーミングです。「ポッキー」とか「パナップ」とか「パピコ」とか「ギャランドゥ」とか。
ハイブリッド型はどちらもあわせもったネーミングです。このハイブリッド型のネーミングが一番優れていると私は考えていますが、なにせ考えるのが難しい。
たとえば、「キタナシュラン」という汚いけど美味い隠れた名店を探すテレビ番組の1コーナーがかつてありました。「汚い」ことが理解でき、「ミシュラン」を連想できる(コンセプト型要素)ことと語感の良さがあいまったすばらしいネーミングでした。
後に「キタナシュラン」はミシュランからクレームが入り、「キタナトラン(汚い+レストラン)」に変更されてしまいましたが、「キタナシュラン」ほどの語感の良さはなくなってしまいました。
小林製薬は、「ハイブリッド型ネーミング」を目指しつつもわかりやすさに軸足をおいています。場合によっては語感の良さを捨ててコンセプト型ネーミングに振り切っています。
もちろん、中には意味がわからないけど語感の良さで覚えている商品もありますが(アンメルツヨコヨコとか)。
●小林製薬の失敗
そんな小林製薬もおそらく失敗をしています。
これはかなり前のYahooニュースの記事で見たことなのですが(すでにその記事はありませんでした)、どうやらある商品ジャンルが不調だったようです。
本当に失敗したかは数字がわからないので定かではないですが、思い当たる節があります。
10年前くらいでしょうか、よくテレビを見ていたころの話です。CMがわりと好きだった私は、いろいろな企業のCMをよく観察していました(今でもyoutubeで80年代や90年代のCM集を見ます)。
そのある商品ジャンルにおいて、小林製薬は当時、相当力を入れたかったんだろうなと強く感じるほどCMをバンバン打っていました。
ほどなくして、それらの商品群のCMを小林製薬はぜんぜん打たなくなりました。直感的ですが、「うまくいっていないのだろう」と感じました。
何のジャンルの商品かというと「サプリメント」です。
種類はいろいろあります。マルチビタミンやらヒアルロン酸やらなんやらと。。。
サプリメントは薬事法の絡みがあるからなのか、小林製薬お得意のわかりやすいネーミングではなく、普通に「ビタミンC」とか「大豆イソフラボン」とかそんなネーミングになっていました(今も)。
なにせ、「ビタミンC」を「美肌と風邪予防」的なコンセプト型ネーミングにしてしまうと、薬事法にひっかかる可能性があるわけです。それならば、「ビタミンC」といったほうがわかりやすい。
まずはこの部分で勝ちパターン外のことをやってしまった(やらざるを得なかった)。
また、サプリメントを新商品として販売しはじめた時のキャッチコピーが
- 製薬会社がつくったサプリメント
でした。つまり「製薬会社推し」をしていました。
「小林製薬ブランド」があれば新商品が売れると思ってしまったのでしょう。しかし、これはアル・ライズというブランディングの大家に言わせるならば、「やってはいけないブランディング」です。
さらにもっと言えば、サプリメント業界はすでにDHCやFANCLなどの強いブランドがいました。彼らは消費者のイメージにおいて、当然ながら先行者利益を得ていました。
「製薬会社推し」は、そういった会社と「違い」ではなく「差」で勝負してしまったということです。
なにせ、小林製薬らしくない「二番煎じ」での勝負でした。いや、二番どころか、もはや出がらし状態の市場だったと思われます。
サプリメントで売れるようにしようと思ったら、スペックがまったく違う成分のサプリを一番に世に出すしかないと思います。
好例は、もう古い例になりますが、「美しくなる」「若返る」「アンチエイジング」という今までにないスペックを打ち出したサプリ、「コエンザイムQ10 」です。ただ、すぐパクられますけど。
「あっちのビタミンCより、こっちのビタミンCのほうがいいよ」
という「差の主張」はブランディングにおいて効果が薄いですが、薬事法の問題で輪をかけてそれがしづらい(できない)上にすぐパクられるのがサプリ業界です。
- 大きい市場で勝負してしまった
- 「まだないもの」ではなく二番煎じの勝負をしてしまった
- 「小林製薬」というブランド力のみに頼ってしまった
- ネーミングで「らしさ」と「わかりやすさ」を表現できなかった
自慢じゃないですが、残念ながらCMを見た当時、「こりゃ売れないな」と感じました。
しかし、どんな企業でも失敗はつきものです。「チャレンジする余裕がない」「失敗したら終わり」みたいな会社がゴマンとある中で、失敗できるくらいチャレンジできるその礎をつくった小林製薬はやはり尊敬できる企業です。
今回の苦難も、小林製薬ならきっと乗り越えてくれると信じています。がんばれ小林製薬!!
今回はここまでです!
津久井
投稿者プロフィール
-
ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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