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8月に入りましたね。もうすぐお盆休み。
ビズアップは今月が決算です。9月から新しい期に入ります。創業から18年目、株式会社としては17期に入ります。
早いな。あっという間。。。人生の3分の1以上がビズアップの社長。
丸っと17年。生まれてからだったら高校2年生だし、小学1年生からなら24歳で社会人2年目とかです。それと同じだけの時間を過ごしたようには感じないのですけども。。。
もっともこれはマーフィーの法則などでも言われていますね。時間の感じ方は歳をとるごとに早くなるって。計算式としては「1÷年齢」だそう。
たとえば5歳の子どもは1年のスピードが「1÷5=0.2」くらいの感覚ですが、50歳の人間であれば「1÷50=0.02」くらいのスピードで1年が過ぎていくと。。。
根拠はないのでしょうが、言い得て妙ですよね。
さて、コロコロニュース。
河野デマ太郎は政治家どころか人間としてクズだと思うけど、岸田くんはもしかしたらあえてわかりやすく批判されることをやっているのではないかと思ってきました。「日本人よ、立ち上がってくれ!」というメッセージで。んなわけないか(泣)。
では本題です。
今日はブランディングについて。中でも「不安払拭型ブランディング」についてお話してみたいと思います。
●かっこよくすること、おしゃれにすることがブランディングだと思ったら大間違い
とその前に、ブランディングについておさらいしてみましょう。このコラムでは何度もお話していることではありますが。。。
世の中の多くの人が「ブランディングとは?」と聞かれると、「かっこよくすること」「おしゃれにすること」と答えると思います。
たとえば、ルイ・ヴィトンやエルメスのようなハイブランドをイメージする人もいるでしょう。
「じゃあ、驚安の殿堂ドン・キホーテはブランディングができていないの?」と聞き直すと、「うーん」となります。当然、驚安の殿堂ドン・キホーテもブランディングができています。
つまり、「かっこよくすること」「おしゃれにすること」は、「ブランディングとは何?」の回答としては正確ではありません。
もう少し筋の良い人だと、「ブランディングとは?」の回答に「ファン化」と答えたりします。「ルイ・ヴィトンもエルメスも、好きな人はもはやファンだよね」と。「ハーレー・ダビッドソン」などのコアなファンのいるブランドを思い出す人もいるでしょう。「ドン・キホーテ」にもファンがいそうです。
「じゃあ、セブンイレブンはブランディングできていないの?」と聞き返すと、やはり「うーん」となります。
「もうセブンイレブンが好きすぎて、毎日セブンイレブンにいかないと、あたしどうにかなっちゃいそう!」という人はたぶんいませんが(いるかもですが笑)、当然、セブンイレブンもブランディングができています。
ということは、
- かっこよくすること/おしゃれにすること
- ファン化すること
- 驚安の殿堂ドン・キホーテ
- セブンイレブン
これらすべてが「ブランディングができている」としたとき、共通する定義が必要になってきます。もうひとつ抽象度を上げた定義が必要なわけです。
「抽象度を上げる」とは、三毛猫もアメショーもチンチラも雑種も、共通して「猫」と言えるよね、ということで、この場合「猫」は三毛猫やアメショーよりもひとつ抽象度が高い定義です(中には「アメショー以外猫と認めん!」みたいな人がいるかもですが笑)。
つまり、「かっこよくすること/おしゃれにすること」、「ファン化」、「驚安の殿堂ドン・キホーテ」、「セブンイレブン」は、「三毛猫」や「アメショー」などの猫の種類のようなもので、これらをひとくくりにする「猫」にあたる定義がブランディングでも必要です。
そこで、ビズアップではブランディングを以下のように定義しています。
なぜかっこよくしたりおしゃれにするのでしょう?なぜファン化するのでしょう?なぜ驚安の殿堂ドン・キホーテの店の雰囲気や販売戦略はあのようなものになっているのでしょう?
そうです。すべて消費者から「選ばれるため」です。そしてなるべく長く(永く)「選ばれつづける」ためです。
もうおわかりかと思いますが、「選ばれるため、選ばれつづけるため」であれば、必ずしもかっこよかったりおしゃれであったりする必要はありません。
ターゲットがなぜ自社を(自社商品を)選んでくれるのか、これにあわせてブランディングをしていけば良いわけで、そのやり方は百社百様でも構わないわけです。
それはまるで、花や草木がさまざまな色やデザイン、特徴で昆虫やさまざまな生物に選ばれるようなものとも言えます。
蝶に選ばれたい植物、カブトムシやクワガタに選ばれたい植物、ミツバチに選ばれたい植物、選んでもらうための特色は植物の生存戦略であり、これは取りも直さず企業にも置き換えられるというわけです。
●ファミレスは「感動」など売っていない
だいぶ前の話ですが、埼玉県の北のほうに車で仕事に行きました。商談を終えたのがちょうどお昼前くらい。昼食を取ろうと大きな幹線道路を走っていました。
このとき、私は普段はいかない「デニーズ」を選択しました。
さて、「デニーズ」はブランディングができているでしょうか?いないでしょうか?
当然、このコラムの文脈からしたら「ブランディングできている」と言えると想像すると思います。もちろんそのとおりです。
しかし、デニーズのブランディングは、おしゃれでかっこいい銀座の高級レストランのような「うわーすごいな」というブランディングでは当然ありません。
さて、私はなぜ普段はあまりいかないデニーズを選択したのか。
それは「失敗したくなかったから」です。
知らない土地の知らない飲食店。もしかしたらおいしいかもしれません。しかし体験したことがないからわからない。時間もそれほどない。駐車場に入ってしまって混雑している店だと困るし、ガラガラでも「うわ、大丈夫かな」と思ってしまう。
でも、デニーズなら普段はいかなくてもだいたいわかっている。ファミレス全般「きっとこんな感じだろう」と想像がつく。そこに感動はないけれど、失敗もない。これが私のそのときの選択基準でした。
感動はないけど失敗もない。不安要素を極力排除したブランディング。これが「不安払拭型ブランディング」です。
不安払拭型ブランディングは、ネガティブな要素を極力排除する形で行われます。チェーン店がどこにあってもほどんど同じ内容の商品、店内のデザイン、外観であることの意味は、感動させるためではなく不安要素を払拭することにあります。
もっといえば「すでに体験したことがある」と感じさせるわけです。人は体験したことがないことに不安や恐怖を感じる生き物だからです。
私の師匠の伊吹卓先生は、「人は好きなものよりも嫌いなものに万倍敏感」とよく言っていました。ポジティブなものよりネガティブなものへの反応のほうが強いわけです。
たとえば、複数人で呑みに行くことを想定しても、ポジティブ要素があることよりもネガティブ要素が少ないことが選択基準になりがちです。
- Aさん:お寿司や焼肉は高いからやだな
- Bさん:鍋は暑いからやだな
- Cさん:イタリアンは昨日食べたからやだな
- Dさん:◯◯店は遠いからやだな
- Eさん:△△店は店員の態度が悪いからやだな
こういった、いろいろな人のネガティブ要素が排除された店が選ばれやすいわけです。こういう点でもチェーン店の居酒屋などは一定の強さを持っていますね。私は安い居酒屋はお酒の質がもうだめで選ばなくなってしまいましたが。。。歳をとると体が贅沢になります(泣)。
不安払拭型ブランディングは、「これ(ここ)がいい!」ではなく、「これ(ここ)でいいか」で選ばれることにフォーカスしているとも言えます。
余談ですが、ネガティブ要素を払拭できなくても、というかネガティブ要素が多くても、選ばれる場合があります。
それは、「好奇心を刺激したとき」です。
人の脳は不快や危険に万倍敏感なわけですが、それは人間の脳の生命維持装置的な役割がそうさせています。この生命維持装置を通過せずに物事を判断してしまうことが人間にはあるわけですが、それが「好奇心を刺激されたとき」です。
ただし、好奇心を刺激できたとしても、商品力が弱ければ「選ばれつづける」ことはできないので注意が必要です。
●「りんごパイ」と「お漬物」、どちらを買いますか?
不安払拭により選ばれる商品やサービスは、ファミレス以外には何があるでしょうか。
ファミレス以外にも、多くのチェーン店はある一定のレベルで不安払拭をしていると言って良さそうです。
他に私がよく例に挙げるのは、「お土産」です。
出張先で会社の人たちへのお土産を買うとしましょう。以下の2つであれば、どちらを選びますか?
多くの人が、左の「りんごパイ」を選ぶのではないでしょうか。もちろん右の漬物だと「社員で分けられない」という問題はありますが、そこはちょっと本質的ではないので今回は議論しません。
私が言いたいのは、左の「りんごパイ」であれば、「めちゃくちゃおいしいかわからないけど、失敗はしない」と感じるということです。
人は見た目を拒否できません。「デザインの無拒否性©」というものがあります。
左のりんごパイは「三越や高島屋などのデパ地下スイーツほどの感動は絶対にないが、きちんとしたメーカーでつくられているので、大失敗はしない」ということが直感的に理解できます。
会社の人たちへのお土産は、失敗したくない。「なんでこんな変なもの買ってきたんだよ」「お土産のセンスねーな」と思われたくないわけです。
取引先へお伺いするのに何かしらを持っていくのも同じですよね。「もらって困るな」とは思われたくない。
まさに「これ(ここ)がいい!」ではなく、「これ(ここ)でいいか」で選ばれるわけです。
よくよく考えたら右のお漬物が「超感動する!」レベルのお漬物である可能性だってあるわけです。でも、「大当たり」を狙うリスクを取るのではなく「合格点」を確実に狙って失敗を避ける。
さて、不安払拭型ブランディングは、ターゲットの嗜好だけでなくそのときの状況にも大きく影響されます。
たとえば先ほどのお土産の例で考えてみましょう。
想像してみてください。ある晴れた日に奥さんと車でドライブ。山の上の趣のあるドライブインに到着。そこで何か自宅用にお土産を買って帰ろうとなったとします。もしくはとても仲の良い人や自分の両親にお土産を買って帰ろうとなったとする。
ドライブインにはお漬物が。どうやら地元の人たちが地元で取れた野菜をつかって、昔から伝わるつくり方でつくったお漬物らしい。
そうなったら、「りんごパイ」と「お漬物」、あなたはどちらを買って帰るでしょう?
けっこうな人が「お漬物」を選ぶと思います。なぜなら、その時の「失敗」とはせいぜい「まずかった」「漬物代が無駄になった」程度だからです。仲良しや両親であれば「漬物、いまいちだったねー」程度。嫌われたり人を困らせたりすることはない。
それよりも「ここでしか手に入らないかも」という希少性のほうが勝ちます。
このように状況次第で選択基準は変わります。私が「デニーズ」を選んだのも、「そのとき」「その状況」だったからです。だって普段なら選ばないわけですから。
こう考えると、ターゲティングって本当に難しいですね、という身も蓋もないセリフでコラムを終えたいと思います(笑)。
御社のビジネスは「感動させる」ブランディングと「不安を払拭する」ブランディング、どちらが向いていそうですか?
今回はここまでです!
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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