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7月ももう終りを迎えますね。梅雨だというのに雨が降りません。なんかおかしいですね。
先週のコラムで、高知県に行ったとお伝えしました。高知の気温は32〜33℃。暑いには暑いですが、東京のほうが気温が高い。湿気も多い。高知のほうが南にあるのに。
ヒートアイランド現象とかもたしかにあると思いますが、本当にそのせいだけなのかな、と都市伝説好きの私は勘ぐってしまいます。
ネットで、これからは「ある資源」の奪い合いになると見ました。その資源とは、レアメタルでもましてや石油でもない、「水」だというのです。
お隣の中国は、世界中の水資源を買い漁っているといいます。日本も例外ではないですね。北海道などの水資源の土地が買われています。
梅雨に雨が降らないのも何か関係あるかも(汗)。
ちなみに、「雨をわざと降らせないようにすることなんてできるわけないじゃん」と思うかもしれませんが、「科学なめんなよ」という話で、気象兵器なんていうものはもう何十年も前から存在しています(Twitterでどうぞ検索してみてください)。
というわけでコロコロニュース。
さて、今月の頭のコラムでもネーミングについてお話しましたが、今日もネーミングのお話。
先日、久しぶりに「怪獣の名はなぜガキグゲゴなのか」という本を読み返したのですが、今日はそのあたりのお話をしてみたいと思います。
●ネーミングを変えて売れたヒット商品の例
ネーミングは誰もが重要だと思っていると思います。人間だって、子供の名前をつけるのにさまざまな想いを持ってつけますし、会社名や商品名をつけるのも同様だと思います。
ただ、「想い」というと、とても抽象的というか、内面的というか、定性的というか。「重要だと思うけど具体的になぜ重要か」と言われると実利(メリット)を伴うような回答になりづらいと思うんですよね。
まずは、そういう意味ではネーミングがビジネスにおいては売上を左右するという事例をご紹介してみたいと思います。
7月頭のコラムでは、「モイスチャーティッシュ」の例を挙げました。「モイスチャーティッシュ」は「鼻セレブ」という名前にした途端、売れ行きは3割増し、最終的には4倍にまでなったそうです。
他にも「おーいお茶」の例も挙げました。こちらは「缶入り煎茶」から「おーいお茶」に変更したことで、売上6倍になったとか。。。
ネットで調べると、まだまださまざまな商品がネーミング変更により売上増となっていたことがわかりました。
- 日清食品「カレーメシ」
最近、ビズアップの社員でもこれを食べている人がチラホラいます。カレーとご飯を混ぜたようなインスタント食品。
自宅でもカレーがご飯にかけるほど残っていないと、その中にご飯を入れて水で引き伸ばして味付けして食べたりしますが、あんな感じでしょうか?(食べたことない)
こちら、当初は「カップカレーライス」というネーミングだったそうです。ただの説明文みたいですね。売れ行きは当初の計画比で1.5倍になったんだとか。
- 龍角散「龍角散ダイレクト」
「龍角散」の認知度を存分に活かしたネーミングですね。「龍角散」と言えば、誰もが「喉に効く薬」というイメージを持っていると思います。このイメージは、長年かけた「龍角散」の「資産」と呼べるわけです。
「龍角散ダイレクト」はもとのネーミングは「クララ」だったそうです。たしかによくわからない。アルプスの少女ハイジ??
特筆すべきは、「クララ」は1960年代から40年以上つづいていたブランドだったということ。「クララ」と聞いても何もイメージがわかないことから、こちらは40年を資産化できなかった例と言えそうです。
ちなみに売れ行きは「龍角散ダイレクト」にしたことで2倍以上とのこと。
- スズキ「スペーシア」
軽自動車を得意とするスズキの「スペーシア」。
こちらはもともと「パレット」というネーミングでした。その想いは絵の具を出す「パレット(図工の時間で使いましたね)」の上の多彩な色に象徴されるような、様々なライフスタイルを楽しんでほしい、というものだったそうです。
想いはとてもすばらしいですよね。でもその想いも虚しく売れ行きは「スペーシア」に軍配が上がっているようです。ちなみに競合商品としては、ダイハツ「タント」とホンダ「N-BOX」だそうです。
「パレット」と「スペーシア」、どちらがお好きですか?
- ラ・フランス
変わったところでは、フルーツの「ラ・フランス」もネーミング変更を経験したことがあるそうです。改名前の名前は「みだぐなす」。
ラ・フランスの生産シェアは80%が山形県だそうですが、「みだぐなす」は山形弁で「見たくなし」。つまり「見栄えが悪く見たくないもの」という意味だったそうです。どんなネーミングだ!ラ・フランスに恨まれるぞ!
いつから「ラ・フランス」という名前になったのか、それにより売れ行きがどうなったかの情報はネットでは見つかりませんでしたが、「ラ・フランス」が醸し出すその上品なイメージから、「フルーツ界のシンデレラ」とも言われるそうです。
- アサヒシューズ「通勤快足」
紳士用靴下「通勤快足」。名前はよく聞きます。ヒットしていることも知っていました。ただ、履いたことはありません。
消臭機能やムレ防止機能がついた靴下で、足の臭いが気になるおっさんたち(自分含む)の強い味方です。
こちらはもともと「フレッシュライフ」という名前で1981年に発売されたようです。当初の売上は3億円程度。1987年に名前を「通勤快足」に変えたことで、売上は15億、その後1989年には45億になったそうです。すごっ!
- 岡本「まるでこたつソックス」
靴下メーカーの岡本の商品、「まるでこたつソックス」。こちらはもともと「三陰交をあたためるソックス」だったそうです。説明的すぎますね。
「三陰交」って何かのツボだろうということはわかるのですが、それがどこにあって温めるとどうなるかが直感的にわかりません。
「三陰交」を暖める効果を謳うことを諦めてつけた「まるでこたつソックス」のほうがわかりやすくて売れてしまった。
たしかに電子レンジの仕組みを知らなくてもみんな電子レンジを買いますからね。三陰交を温める効果を知らなくても冷え性の人にとってはわかりやすいネーミングのほうがいいのでしょう。
「まるで〜〜」と比喩を使うネーミングの例は、住友不動産の「新築そっくりさん」が有名ですね。
- ノートパソコン
なんと、「ノートパソコン」もネーミング変更を経験した商品だったんですね。今や商品というか商品カテゴリですね。
それまでのノートパソコンは、「ラップトップ」と呼ばれていたそうです。たしかに昔はわりと聞きましたね。
「ノートパソコン」は、製造業のマーケティングコンサルタントである「弓削(ゆげ)徹」さんという方が名づけたそうです。知らなかった。失礼しました。お世話になっております(笑)
それにしても「ノートパソコン」は秀逸ですね。カテゴリ名になっちゃうんだから。「ラップトップ」じゃ直感的には意味がわかりませんしメリットも感じないですね。
引用1:山形味の農園
引用2:週刊女性PRIME
引用3:日本ネーミング&リサーチ
引用4:弓削徹オフィシャルサイト
引用5:パッケージ松浦
●ネーミングは3種類ある
私が提唱するネーミングは、主に3種類あります。
これについてはガッツリ解説した過去のコラムがあるので、今回はかんたんにまとめてご説明したいと思います。
- コンセプト型ネーミング
- 語感型ネーミング
- ハイブリッド型ネーミング
コンセプト型ネーミングは、「意味」にある程度の重きを置いたネーミングです。しかし、「意味」にフォーカスしすぎると、ただの説明文となってしまいます。
そこで、「画(え)」が浮かんだり背景が想像できるほどの情報量を短いネーミングの中に含んでいるかが重要になります。名前は聴覚ですが、コンセプト型ネーミングは「目で感じる言葉」といえます。
たとえば、「カップカレーライス」や「三陰交を温めるソックス」では、説明的すぎるわけです。「カレーメシ」となると「B級グルメ感」がでるし、「まるでこたつソックス」となると、自分がこたつに入っている画(え)が浮かんだり、どのくらい温まるかを直感的に「感じる」ことができます。
先ほどの例では、「龍角散ダイレクト」や「通勤快足」もコンセプト型ですね。「通勤快足」と聞くと、おそらくサラリーマンなら誰もが電車の中でムレた不快な足を想像し、「あれを防いでくれるのか」とイメージできます。
つづいて、語感型ネーミング。語感型ネーミングは「聞き心地」「耳心地」に重きを置いたネーミングです。場合によっては意味はほとんどないことすらあります。
コンセプト型ネーミングが「目で感じる言葉」なのに対し、こちらは「耳で感じる言葉」と言い換えられます。
先ほどの例では「クララ」くらいしかありませんが、有名な商品だと以下のようなものがあります。
- パピコ
- パナップ
- プリッツ
- ポッキー
すべてグリコの商品です。これら、よくよく考えると意味はないですよね。語感が心地良いだけ。でも売れている。ここにネーミングの妙を私は感じざるを得ません。
ちなみに余談ですが、男性の下腹部のお毛々のことを「ギャランドゥ」と言いますよね。これも「語感型ネーミング」。そもそも西城秀樹さんの歌のタイトルでしたが、いつのまにか男性の下腹部のお毛々で使われるようになりました(ユーミンがラジオで言ったのがはじまりとか?)。
「ギャランドゥ」は、作詞作曲したもんたよしのりさんが、その過程で適当な言葉としてつけただけのものでした。「Gal&Do」ということで文法もメチャメチャですが、語感がよくそのまま歌詞に採用されたそうです。
ミュージシャンはこの「語感」に特別なセンスを持っている人が多いと思います。桑田佳祐さんのつける歌詞からも「語感」のセンスを感じます。
ハイブリッド型ネーミングは、コンセプト型と語感型を両方併せ持つネーミングです。私はこれが最強のネーミングだと考えています。
上記の例では、「スペーシア」や「ラ・フランス」がそうですね。意味もなんとなく「感じ」つつ、語感が良い。
ハイブリッド型ネーミングの例でよく私が挙げるのが、「キタナシュラン」です。
「キタナシュラン」は、とんねるずの「みなさんのおかげでした」という番組内の1コーナーでした。誰もが知っているような、汚いけどうまい店を巡るコーナー。
「汚いけどうまい店紹介コーナー」というネーミングでは説明的すぎて何も感じないし、情報量もこの説明以上でも以下でもないです。
「キタナシュラン」とすることで、「汚いけどうまい店紹介コーナー」以上の情報量を聞いた人に与えることができます。
「シュラン」の部分は誰しもが「ミシュラン」を連想しますから、「キタナシュラン」は「汚い店の格付け最高峰」だと直感的にわかるんですよね。
ところがこの「キタナシュラン」、名前を変えなければならない事態に陥りました。なんと、「ミシュラン」からクレームが入ったそうなんです。「シュラン」しか言ってないのに。。。
変更後の名前は「キタナトラン」。「トラン」は「レストラン」という意味だそうです。
「キタナシュラン」と「キタナトラン」、どちらが好きですか?私は圧倒的に前者です。このようなことからも「語感」の大切さを感じることができますね。
●「手相」や「人相」と同じで音にも相がある
冒頭で「怪獣の名はなぜガキグゲゴなのか」という本を読み返したとお話しました。この本はどんなものかというと、超絶ざっくり言えば「語感」について書かれた本です。
人の顔から性格を言い当てる「人相学」や、手のひらのシワから未来を当てる(?)「手相学」があるように、音にも「相」があるという「音相学」の観点から、さまざまな商品のネーミングの考察が書かれた本。タイトルが秀逸ですよね。
この本には、「語感型ネーミング」に関するヒントがたくさん詰まっているとも言い換えられるわけです。
音にはその音の持つ「イメージ」があって、それは「意味」以上に重要だということなのですが(もちろん「意味」が重要じゃないわけではない)、そもそも人間は「意味」を認知するようになる以前から、つまり言葉を使うようになる前から何らかの音をその進化の過程で聞いているわけですから、「意味」以上に重要だということにはとても納得できます。
本にはさまざまな事例が載っています。
たとえば、「キツネ」と「タヌキ」では、人は「キツネ」のほうがずる賢く感じやすい。これも音相学で説明できるそうですよ。
車のネーミングは「C」の音ではじまるとヒットしやすいそうです。カローラ、クラウン、カムリ、シビック、セドリック、シトロエン、シボレー、コルベット、カマロなどなど。
ただし、ゲルマン語族の車の名前は、ボルボ、ベンツ、ポルシェなどの「ブレイクスルー系」と言われる音が並ぶそうです。
また、子供心を刺激する音としては「CH」「SH」「F」が挙げられるそうです。「CH」はチャ、チ、チュ、チェ、チョ、「SH」はシャ、シ、シュ、シェ、ショ、「F」はファ、フュです。
おもちゃなどにこれらの音の入ったネーミングをつけると売れるそう。「チョロQ」とか「チャンバラ」とか「機関車」とか。「ファイナルファンタジー」なんて「ファ」が2つも入ってますね。おそ松くんのイヤミは「シェー!」ですね(笑)。
こう考えると、グリコの商品の名前は改めて秀逸かもしれません。「パピプペポ」の半濁音(破裂音)がお菓子の楽しさを感じさせるのでしょう。
また、「濁音」は男たちを興奮させるそうです。「ハーレー・ダビッドソン」とかはたしかに男のロマン感がありますね。
漫画雑誌だと、ジャンプ、マガジン、サンデー、モーニングなどすべて濁音傾向があると本には書かれています。対して、チャンピオンとアクションは「濁音組」と比べて雑誌として苦戦しているとも書かれています。
この男が興奮する音=濁音の権化ともいうべき作品が「ガンダム」だそうです。ガンダムに出てくるモビルスーツ(すでに濁音が入ってますね)や武器は、以下のようなものです。
- ガンダム
- ガンタンク
- ガンキャノン
- ザク
- ドム
- ジム
- ズゴック
- ゴッグ
- アッガイ
- ゲルググ
- ホワイトベース
- ビームライフル
- ハイパーバズーカ
- ビームジャベリン
- ビームサーベル
濁音なしはコアファイターとスカイフィッシュくらいだと、濁音なしを探すほうが難しいとのこと(笑)。「ゲルググ」とかどうやったらこんな語感型ネーミングを思いつくのか(汗)。
ちなみにガンダムは一説には「シャンダム」というネーミング候補があったそうですが、「シャンダム」ではここまで流行らなかっただろうと本にはあります。
人の名前も音相の影響を多大に受けます。「アヤカ」はあっけらかんとした開放感を持ち、1文字変わって「アヤコ」のなるとおっとりした存在感に変わる。「カズミ」は親密感を感じる名前だけど、「カズマ」になるとリーダーシップを感じる。どちらも最後の音の母音が変わっただけなのに。面白い。
トマトジュースのブランドについても本に書かれています。「カゴメ」のトマトジュースは甘く感じ、「キリン」のトマトジュースはさっぱり、「デルモンテ」はしっかりなんだそう。
私はトマトジュースが好きではないので飲みませんが、飲まない人間からするととてもイメージがわきます。よく飲む方、印象はどうですか?
というわけでネーミングについていろいろと見てきました。普段何も意識していない名前が、人に大きな影響を与えたり売上を左右するということが理解してもらえたと思います。
今回はここまでです!
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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