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先週はゴールデンウィークだったので、コラム休刊でした。
みなさんはどのようなゴールデンウィークをお過ごしでしたでしょうか?私は・・・暇でした。
ヨメとムスメだけ実家に帰ってしまい、家には高2の長男と中2の次男と私だけ。
男3人で何をするわけでもなく、全員自分のスマホをずっと見ているという、しょうもない状態で時間だけが過ぎてしまいました。あとはサッカーのコーチ。
仕事は仕事で忙しくまあ大変ですが、休みは休みで長すぎるともういらないと思っちゃいます。
ゴールデンウィークが終わると、お盆休みまでは突っ走る企業も多いのではないでしょうか?ビズアップも6月はわりと忙しくなります。
そういう意味ではしっかりと集中して仕事に向き合う期間って、どの会社も1年間の中で長期休みと長期休みの間の2〜4月半ば、5月半ばから7月、9月から11月半ばくらいなのかも。
それ以外は長期の休みに向けて徐々にスローダウンしていくイメージがあります。
連休明けにコ□ナが5類になりましたが、まだまだマスクを外せない残念な人が多いですね。元に戻るつもりはないのでしょうか?こんな窮屈な日本を子どもたちに引き継ぐつもりでしょうか?情けないな。
というわけで、本日のコロコロニュースはひとつだけ。
竹花さんという経営者がいます。You Tubeなどでも有名な方。その方の動画がTwitterに上がっていましたので、ちょっとご紹介したいです。熱いメッセージです。日本人はこれを見て反省したほうがいい。
本当に竹花さんの言うとおりだと思います。
消費税を上げないと財源がないとか、ウソも大概にしてほしい。1万歩譲ってウソじゃないとしても、政治家や官僚に言いたいのは「お前ら金がねーなら頭使えや。高学歴なんだろ?」ってこと。
民間企業は金がなければ頭使うしかないんだよ、国を預かっているお前らこそ率先してそれをやれよって思う。何か間違ってますかね?
では、本日も頭をもっと使えるものにするためのウンチクをお話したいと思います。
まずはあるクイズをお出しします。みなさん、答えられますかね?
●答えがわかりますか?「ブラックサンダー」に関するクイズ
こちらの商品、ご存知でしょうか?
はい、このコラムでも何度か取り上げているチョコレート菓子「ブラックサンダー」です。
よく見るのがコンビニのレジ横ですね。ヒット商品となり今ではもはや定番商品だと思いますが、この商品が出はじめたころは実はあまり売れていなかったそうなんです。
ブラックサンダーは1994年に発売されました。ネットからの情報ですが、前述のとおりそのころは全然売れず、九州で細々と展開していたそうです。
赤字にはならずなんとか採算ベースには乗っていたため、また製造メーカーであるユーラクさま(お客さまです)が当時は中小企業だったため、ブラックサンダーは生き残りました。大手食品メーカーだったらすぐに打ち切るレベルの売れ行きだったということですね。
その後、販路拡大のチャンスをつかみじわじわと広まりはじめ。。。今では1個35円の菓子で累計2億個以上売っており、ユーラクさまも100億円企業だそうです。
では、何が理由でヒット商品となったのでしょうか?
以前、弊社に常駐していたデザイナーが、このブラックサンダーを手にしてみんなにクイズを出しました。
そのクイズはテレビ番組でやっていたものらしいのですが、パッケージデザインのある部分を変えてから売れ行きが大きく増したそうなのです(その後、ユーラクさまとお仕事をしたときに担当の方にお聞きしたら「本当です」とおっしゃってました)。
みなさんは何をどう変えたかわかりますか?シンキングタイム!
もう一度写真をお載せします
さて、ちょっと自慢が入ります。このクイズ、私はノーヒントで正解しました!
どうですか?何か閃きましたか?
では、ここでヒントを出したいと思います。答えは以下の選択肢のいずれかです。
- 写真を変えた
- 「若い女性に大ヒット中!」のコピーを入れた
- 英語だった商品タイトルをカタカナに変えた
- 色を黒と金に変えた
ここでまたシンキングタイムです。
・
・・
・・・
さあ!答えを発表しますね。
答えは「3」の「英語だった商品タイトルをカタカナに変えた」です。
さて、自慢を半分しながらなぜ津久井がこのクイズをノーヒントで正解できたのか、どのように考えたのか説明してみたいと思います。
まず、この商品は小さいです。写真だとわかりづらいかもしれませんが、タテ4cm×ヨコ8cm程度です。
小さいということは、そこに入るデザイン要素がすべて小さくなることを意味します。そうすると、コピーはほとんど読まれない可能性が高いです。
実際に「若い女性に大ヒット中!」のコピーはものすごく小さく、かつパッケージの下の方に入っていますので、これはおそらく読まれないだろうと。
特に、レジ横のついで買い商品であればなおさらキャッチコピーなどをよく読んでから買うという行動を取る人は減ります(レジでのんびりコピーを読む人はほぼいない)。なので、これは選択肢から消えます。
私のコラムではキャッチコピーの重要性などもよく書いていますので、これだと思われた方は多いかもしれません。
次に、色について。色については、パッケージの場合は役割が2つあります。
- 存在を目立たせる
- 印象を良くする
「存在を目立たせる」は、このコラムで何度も登場する「メリコの法則」で言えば「メ」の「目立つ」になります。
しかし、レジ横で売るのがメインのこの商品は、他の商品と比べられるケースが相対的に少ないため、もともと目立っている可能性が高い。
であれば、色を変えた程度ではおそらく効果は薄いだろう。
「印象を良くする」ほうは多少可能性がありつつもよっぽどへんな色使いをしていない限りは。。。結論は保留だけど、大きな効果は望めなさそう。こんなふうに考えました。
つづいて、写真について。
写真については、はじめは可能性が一番高いと考えていました。パッケージデザインでは写真がとても重要ですし、この小さいパッケージでも十分な大きさを保てているからです。
しかし、写真そのものは普通のチョコレート菓子と大きな違いはないので、これも大ヒットにつながるような効果は期待できないのではないか、他にもっと効果的な「何か」があるだろうな、と考えました。
このパッケージを改めてよくみてみると、おそらく店舗で人が認識できるのはその大きさから言ってタイトルと写真だけだな、こんなふうに考えている時にふと思いつきました。
「タイトルのブラックサンダーって、なんで英語にしなかったんだろう。。。」
英語っぽい単語でカタカナを使用していることに違和感がありました。
そもそもブラックサンダーはレジ横においてあることが多く、商品の存在は認識されてはいたはずです。なのに買われなかったということは「買ってみよう」と感じさせる何かが足りなかったのだろう、という仮説が立ちます。
「買ってみよう」と感じさせるには、他のチョコレート菓子と違う何かをパッケージから感じさせる必要があります。ということは、売れるような変更をする前は「特徴のない普通のチョコレート菓子」だと思われていた可能性が高い。
ここで保留にしていた「色で印象が良くなった」はなくなります。色のみで「他とは違う魅力」を感じさせることが今のパッケージでできているかというと、そこまでではないからです。なので、
4.色を黒と金に変えた
は選択肢から消えます。そうするとやはりタイトルに答えがあるのだろうということになります。
さて、ブラックサンダーというのは変わった名前ですよね。ここで見ていただきたいのですが、
- ブラックサンダー
- BLACK THUNDER
英語の方は、パッと見て「ブラックサンダー」と読むというのがわかりづらいです。ややもすれば、それこそ他のチョコレート菓子のように意味なく英語を使っているものとの違いがわかりづらいわけです。
「ブラックサンダーという変わった名前のチョコレート菓子」ということが、英語のタイトルロゴでは直感的にわからない、ということです。
加えて何度も言いますが、まじまじとパッケージを眺める人はほとんどいないわけで、数秒で、「ブラックサンダーという変わった名前のチョコレート菓子」と認識させるためには英語は不適切ということになります。
という考えから、「タイトルを英語からカタカナに変えた」という回答をしたところ、見事正解だったというわけです。
●「まさかあの有名デザイナーが?」ーブラックサンダーとまったく逆の事例ー
では、ブラックサンダーとはまったく逆の事例を挙げましょう。
森永製菓が販売している「ウイダーインゼリー」という商品をご存知でしょうか?
アルミのパックに入ったゼリー飲料で、発売は奇しくもブラックサンダーと同じ1994年、日本では初めてのゼリー飲料だったようです。
私が大学生のころ、たしか1995年か96年だったと思いますが、大学のサッカーサークルでサッカーの大会に参加したとき、協賛だった森永製菓からウイダーインゼリーを大量にもらいました。
ずいぶん気前がいいななんて思いましたが、まだ当時はそんな商品の存在は知りませんでしたし、そもそもご飯の代わりにゼリーなんてと、どちらかというと否定的なイメージを持っていました(けど食べたら美味しかったのは意外でした)。
それから程なくして、木村拓哉さんが出演するテレビCMが流れはじめたと記憶しています。
キャッチコピーは「10秒チャージ、2時間キープ」。
改めて、良いコピーですね。ここからウイダーインゼリーはそのポジショニングもありヒット商品として確固たる地位を築きました。
そんなウイダーインゼリーが発売20周年を記念してパッケージデザインの刷新を行ったときの話。
デザインを手掛けたのは佐藤可士和氏。今やデザイン業界の人でなくてもご存知の方も多いのではないでしょうか?
ところが、佐藤可士和氏のつくったデザインに変えた途端に売上は激減。そして慌てて再リニューアルしたところ売上が戻ったということから、これはどうにもパッケージデザインに原因があるだろう、という話になったわけです。
さて、どんなデザインからどんなデザインにリニューアルし、どんなデザインに再リニューアルしたか気になりますよね。こんな感じです。
旧デザイン:画像はこちらの記事からお借りしました
リニューアルデザイン:画像はこちらの記事からお借りしました
再リニューアル後:画像は森永さんのサイトからお借りしました
※画像の出典元の記事もとても良い記事なのでぜひお読みください。
さて、そもそも佐藤可士和氏はセブンイレブンのコーヒーメーカーをデザインした時にも失敗しています。
その時も、コーヒーメーカーを使う人よりも自分の感性を優先させたデザインをつくってしまいました。はっきり言いますが「使いやすさ」よりも「オレのセンスってすごくね?」を優先したとも言えます。
その結果、セブンイレブンの多くの店舗では、お客さんが使い方を間違えるというトラブルが多発。
そこでセブンイレブンの店員たちは佐藤可士和氏のデザインを無視し、使い方がわかるようなテプラシールをベタベタと貼りまくりました。「アイスコーヒーはこちら」とか「大きいサイズはここを押す」とか。
想像してみてください。洗練されたデザインのコーヒーメーカーに野暮ったいテプラが大量にはられているさまを。もうめちゃくちゃです。
さて、ウィダーインゼリーはなぜリニューアルパッケージは失敗し、再リニューアルのパッケージで売上が元に戻ったのでしょうか?先ほどのブラックサンダーの例と比べるとよくわかるのではないでしょうか。
消費者はなぜウィダーインゼリーを買っていたのでしょうか?なぜウィダーインゼリーがほしいのでしょうか?
ここを押さえなければ、どうすれば売れるパッケージデザインになるかはなかなかわかりません。
このウィダーインゼリー事件はとても貴重な事例です。なぜなら、
- 売れていた時のデザイン
- 売上が落ちたデザイン
- 売上が復活したデザイン
がそれぞれ明確になっている上に、どれも少しデザインが違うことから、ウイダーインゼリーはどういうデザインだと売れてどういうデザインだと売れないかの仮説が立てやすいからです。
売れていた、復活したデザインと売れていないデザインの違いをみると、以下の2つが挙げられます。
売れなかった時のデザインは
- 成分ではなくカロリー表示を優先している
- 英語ばかりで日本語がない
1.成分ではなくカロリー表示を優先している
なぜウィダーインゼリーがほしいか、の質問に直結するのがこちらです。買い手はカロリー表示を基準に買うのではなく、成分を基準に買うと考えられます。
「カロリーがゼロだから買う」のではなく「マルチビタミンを摂取したいから買う」わけです。これが今回の失敗からわかったことのひとつ。
実は、私自身も一時期ウイダーインゼリーをよく買いました。その際はダイエットが目的でした。食事の前にゼリーを飲むことで、そのあとの食事の吸収を抑えることができると考えたわけです。吸収を押さえられれば痩せる可能性があるわけですね。
でも、そんな時でも購買基準は
「今日はビタミンを摂ろうかな」
「今日は鉄分にしよう」
でした。ダイエット目的ならカロリーが購買基準でも良さそうなのに。。。
2.英語ばかりで日本語がない
これがまさにブラックサンダーの事例と真逆の事例。英語にしたら売れなくなっちゃった。さて、なんででしょう?
●時代は「コ」優先から「リ」優先へ
今回の話は「英語を使ってデザインしちゃいけないよ」という浅い話では当然ありません。
では、なぜブラックサンダーはタイトルが英語のときにはあまり売れず、ウィダーインゼリーはパッケージをリニューアルして売上が減少したのでしょうか?
なんとなくわかると思いますので、もう単刀直入に言っちゃいましょう。答えは、
「わかりづらいから」
です。違う言い方をするならば、「メリコの法則」の「リ」=「理解できること」が超弱いからです。「BLACK THUNDER」ではパッと見で読めないし、英語と数字だらけのパッケージでは直感的に何が言いたいかわからないからです。
「メリコの法則」はこのコラムで何度もお伝えしているとおり、私の師匠である故伊吹卓先生が提唱したノウハウです。頭文字のそれぞれをとって、
- メ・・・目立つこと
- リ・・・理解できること
- コ・・・好感が持てること
とし、これらの「メリコ性」がそれぞれ強いデザインが売れるデザインだとしています。そんな中でも伊吹卓先生がよくおっしゃっていたのは、「コ(好感が持てること)」が一番重要、ということでした。
しかしながら、これは私は実は異論を唱えています。一番重要なのは「リ(理解できること)」だと。
伊吹先生が「コが一番重要」とおっしゃっていたのには理由があります。なぜなら、伊吹先生がメリコの法則を考案した時代は、まだまだパッケージも含めたさまざまなデザインがレベルが低いものだらけだったからです。
伊吹先生はこれらのレベルが低いパッケージデザインを「ブスデザイン」「ブスパッケージ」と呼んでいました。対して、いくつかの商品は美的センスが優れたパッケージデザインで発売されはじめ、それらが当時はものすごく売れたわけです。
ブスが売れ残り美人が売れていくという現象は、今では想像が難しいかもしれませんが、実は当時は新しい技術が開発された(たとえばスマホとか)くらいのインパクトがあったのだと私は考えています。新しい時代の波が押し寄せてきたような感覚だったのではないかと思います。
この現象に強い関心を示した伊吹先生は、逆に少なくなっていく「あまりにもブスなデザイン」の商品を購入してコレクションしていたほどでした。
このような時代背景から、「コ」が一番重要とおっしゃられたと私は考えています。
しかし今は違います。今は先進国であれば、ほとんどの商品が美人です。そしてさまざまな商品が生まれ、世の中は数え切れないほどの美人商品で溢れかえっているわけです。
こうなると、消費者は判断基準がわからなくなります。Aの美人(商品)はこう謳っているけど、Bの美人(商品)はこう謳っている、こんな状況がさまざまな売り場で、ネット上で繰り広げられていきます。
そんな中で、ちょっとでもわかりづらい商品があったらどうなるでしょう?売れません。選択肢から外しても、他にも似たような商品はあるからです。
たしかに、デザインが洗練されて美しいことには強い意味があります。「美的ユーザビリティ効果」や「魅力バイアス」といった心理効果が確認されていますが、これらは超絶平たくいうと、美しいデザインのものは価値が高い(≒売れる)と感じる心理効果です(ものすごいざっくり説明です)。
そういった面からも、ブスパッケージしかなかった時代には飛躍的な効果(売れる)があったと想像できるわけですが、その結果、デザイナーはみな美しいデザインを突き詰めることに盲進してしまいました。
美しいデザインだらけになった世の中では、美しいデザインが相対的に目立たなくなり(メリコの「メ」が落ちた)、デザイナーは美しさのみを追求するあまり、美しいが難解でわかりづらいパッケージが生まれました。その極みがウィダーインゼリーやセブンイレブンのコーヒーメーカーだと言ってもいいかもしれません。
デザインはひたすらに美しいものをつくる時代から、「美しさとわかりやすさの最大公約数」を見つける時代に入っています(もっといえば、そこに「目立つこと」も含みます)。ディレクターやデザイナーの役割は「最大公約数を見つけデザインすること」というわけです。
そして、企業の商品開発担当者の役割は、「リ」が損なわれていないかを徹底的にチェックすることです。「コ」を高めることは放っておいでもデザイナーがやってくれるので。
御社の商品が売れていないとしたら、パッケージに限らずその商品や商品を説明するツール、そこで表現されている言葉と画(え)がわかりづらい可能性が高いです。一度見直してください。「わかりづらい」は現代では一番の敵なのです。
最後に、「オレのセンスってすごくね?」を優先するデザイナーにはひと言、
「お前のセンスを発表するための場(商品)じゃねーんだよ」
と言ってあげてください(笑)。厳しい意見がデザイナーを育てます。
今回はここまでです。
津久井
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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