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3月最終日。2023年も4分の1が終了。
今月末が決算という会社さんも多いことと思います。また、4月から新卒が入社するという会社さんや、部署異動などがあるという会社さんも。なのでこの時期は忙しいですよね。
ビズアップは決算は3月末ではないのですが、やはりこのような理由から忙しくさせていただいております。
さて、コロコロニュースを。ちょっと多いですけども。。。
ハトもカラスもスズメも死んでるの見たことない!鳥界もインフォデミック!
コロコロニュースはテレビをはじめとした大手メディアでは報道しないだろうことを取り上げています。この中で知っているニュースはいくつありましたか?ほとんど知っていたというあなた!すばらしいです!!
では本題です。
今日のお話は、「男性商品」「女性商品」というものについての考察です。ちょっとBtoCよりのお話になると思いますが、御社の商品は「男性商品」でしょうか?「女性商品」でしょうか?
●「人間失格」のとある描写
以前もお話したことがありますが、私はサラリーマン時代の途中まで、「ビジネス書」というものを一切読んだことがありませんでした。
それどころか、大学に入るまでは活字といえるものは教科書以外ほとんど読んだことがなく、読み物といえばほとんどがマンガでした。
大学時代に大学生協でジャケ買いしたエッセイが大当たりの面白さで(内容はとてもくだらないのですが)、それから活字の面白さを知りましたが、読んでいたのはもっぱらエッセイや小説。社会人になってもビジネス書なんて本当に読まなかったんです。
いろいろと好きな小説はありますが、私にはなんだか退廃的なものに酔うというカッコつけた時代がありまして、そのときに読んでいたのが太宰治の「人間失格」でした。これ、つづけて3回読みました。頭おかしかったと思います(笑)。
「人間失格」って改めて考えるとすごいタイトルですよね。客先では元気に振る舞って、移動のために電車に乗るとすぐに「人間失格」。よく「営業失格」にならなかったな。。。
で、「人間失格」の中ですごく好きな描写が出てくるんです。その描写は主人公とその親友の会話なんですが、「名詞」には「喜劇的なもの(喜劇名詞)」と「悲劇的なもの(悲劇名詞)」がある、というものです。主人公と親友は、「タバコは?」とか「注射は?」とか「死は?」などとお互いに話し合います。
彼らは、「タバコ」は悲劇名詞、「注射」も悲劇名詞、「死」は喜劇名詞と位置づけます。理由はそれなりにあるのですが、どちらかというと「そう感じるから」という感じ(だったと記憶しています)。
今回のお話でテーマにしたい「男性商品」「女性商品」の話は、わりとこの描写から着想しています。
また、いくつかの言語には「男性名詞」「女性名詞」というものがありますね。
たとえばフランス語では、「絵画(peinture)」は女性名詞、「芸術(art)」は男性名詞だそうです。「ビール(bière)」は女性だけど、「ワイン(vin)」は男性だそうです。
これも、なぜ「絵画」が女性名詞で「芸術」が男性名詞なのかといえば、身も蓋もないことをいえば「そう感じるから」です。「ビール」は男性名詞ちゃうんかい、と私は突っ込みたくなりますが、日本人はけっこうこの傾向が強いのではないでしょうか。「男は黙ってサッポロビール」的な(古い)。
そして「そう感じるから」ということでいくと、やはり言語によって(つまり民族によって)感じ方が違うため、「月」はフランス語では女性名詞だけどドイツ語では男性名詞、「太陽」はフランス語では男性名詞でドイツ語では女性名詞だそうです。「死」はフランス語では女性名詞だけど、ドイツ語だと男性名詞なんだそう。
おわかりと思いますが、商品も同様に、「男性商品」「女性商品」があると思うんですね。そして、それを見誤ってパッケージをデザインしたり広告を考えたりしてしまうと、「売れない」という現象が起こると考えています。
●男性商品、女性商品の例
では、具体的にどんな商品が男性商品で、どんな商品が女性商品なんでしょうか。考察してみたいと思います。
それこそ、先ほども出ましたが「ビール」はどうでしょうか?私は完全に「男性商品」だと考えています。
フランス語では「ビール」が女性名詞で「ワイン」が男性名詞とありますが、直感的には「逆ちゃうんか!」と感じませんか?
お酒つながりで行くと、「ウイスキー」はどうでしょうか?これも「男性商品」っぽいなと感じます。「焼酎」も「日本酒」も基本的には男性商品っぽいですね。お酒全般がそうなのではないかと考えます。
ただ、前述のとおり「ワイン」は女性商品っぽい感じもありますよね。日本酒も一部にはそういった女性商品っぽいブランドもあります。
お酒がなぜこのように感じるのかは、少しわかりやすいかもしれません。お酒は全般的に「ガッツリ」という言葉がハマりそうだからです。「ぐいっと」という言葉でも良いかもしれません。
これがあまり女性の作法っぽくなさそうに感じるから、「男性商品」なのではないでしょうか。逆にワインや一部の日本酒は、上品に呑むイメージがある。だから「女性商品」っぽいのかもしれません。
「ラーメン」も同じように「ガッツリ」と食べるイメージから「男性商品」っぽいですよね。「焼き肉」とかもそうかもしれません。「定食」なんかも「男性商品」っぽい。
「コーヒー」はどうでしょう?「ブラックコーヒー」と言われると「男性商品」っぽいですね。「カフェオレ」だと「女性商品」っぽいです。「パン」や「ケーキ」は女性商品といえそう。
「床屋さん」は「男性商品」だけど、「美容室」は女性商品ですね。美容室は男性も行くにも関わらず。逆に「床屋さん」に女性が行くことはほとんどないといっても差し支えないでしょう。不思議。ちなみに「シャンプー」は女性商品ですね。
つづいて、「パソコン」はどうでしょうか?これもイメージが湧きやすいと思いますが、「男性商品」と言って良さそうではないですか?
「冷蔵庫」や「洗濯機」はどうでしょう。「男性商品」と言い切れるかというと難しいですが、「女性商品」とも言い切れなさそうです。「機械」がそもそも男性のものっぽいからだと思われます。ファンシーすぎる冷蔵庫とか洗濯機だと、機能的に劣っていそうに感じますよね。
「タバコ」はいかがでしょうか。おそらく一昔前だと「男性商品」だったのではないかなと感じますが、女性商品っぽいタバコもありますね。女性商品っぽいタバコだと、イメージとして細くて長いタバコが出てきます。同じ商品でも男性商品的なものと女性商品的なものの両方を有するものがあるわけですね。葉巻は完全に男性商品っぽいな。
男性商品か女性商品かを考えるとき、ほとんどの場合が「使用シーン」をイメージすると言えそうです。食べているとき、呑んでいるとき、使っているときなどなど。
パソコンは、男性にも女性にも日常的に使われているにも関わらず、使用シーンをイメージすると「プログラミング」や「ハッキング」みたいなシーンを思い浮かべ、誰がやっていそうか考えるとやはり「男性」です。
他にも、冷蔵庫や洗濯機などは使用するのは女性が多いですが、「設置」や「修理」するとなると「男性」が出てきますね。「機能が求められるもの」は男性的なのかもしれません。
ここで、何度も登場する言葉があります。「〜〜っぽい」です。「〜〜っぽい」とは「それらしく感じる」ということです。そして「〜〜っぽい」はこのコラムで何度も登場する「メリコの法則」が関係してきます。
「メリコの法則」は、「売れるデザインやプロモーションを判断するためのフレームワーク」です。「メリコ」は「目立つ」「理解できる」「好感が持てる」の頭文字からつけられた言葉で、私の師匠である伊吹卓先生が考案したものです。
「〜〜っぽい」は、「メリコ」の「リ」に当たります。それが何か、どういったものなのか「理解できる」ことがデザインやプロモーションでは重要ということです。
「リ」は大きく2つに分けられます。「考えてわかる」と「直感的にわかる」です。「考えてわかる」はキャッチコピーなどを読むことでその商品の特徴や他との違い、強みがわかるということ。
対して「直感的にわかる」はパッと見て瞬時に「感じる」ということです。「〜〜っぽい」はまさにこの「直感的にわかる」です。
たとえば、リンゴジュースなのにブラックコーヒーのようなパッケージデザインにすると、それがリンゴジュースだと直感的にわかりません。人はわからないものに不安を感じやすく、結果売れません。
「男性商品」「女性商品」も同様で、「男性商品」なのに「女性商品」っぽく表現されると、人は混乱します。
その商品が「男性商品」か「女性商品」かを見極めて表現することが重要です。
ただし、現実的にはそうかんたんにはいかない面もあります。
●男性商品、女性商品の四象限
缶ビールは誰が買いますか?
はい、男性も女性も買います。では、どちらのほうが多く買うでしょうか?実は私は女性のほうが圧倒的に買っていると考えています。
そもそも消費の7割は女性といわれますが、スーパーなどで売っている日用品を買うのは、ほとんどが女性です。考えてみましょう。
- 一人暮らしの男性:男性(自分)が買う
- 一人暮らしの女性:女性(自分)が買う
- 結婚している男性:女性(奥さん)が買う
- 結婚している女性:女性(自分)が買う
- 実家ぐらしの男性:女性(お母さん)が買う
- 実家ぐらしの女性:女性(お母さんまたは自分)が買う
共働きやら家事の分担やらで最近は少し様相が変わってきているかもしれませんが、ほぼほぼこう考えて良さそうではないでしょうか?見てください。このパターンで考えると、男性がスーパーなどで日用品を買うケースって単純に見てかなり少ない。
ここで思い出してみましょう。「ビール」は「男性商品」でしたっけ?「女性商品」でしたっけ?はい、「男性商品」です。
つまり、男性商品なのに女性が買うという現象が起こっているわけです。これが話をややこしくしています。ちょっとまとめると、
- 「男性商品」で「男性」が買う
- 「男性商品」で「女性」が買う
- 「女性商品」で「男性」が買う
- 「女性商品」で「女性」が買う
という4パターンがありそうなんですよね。この情報整理は非常に重要だと考えます。
では、それぞれどんな商品が当てはまりそうでしょうか?図にしてみましょう。
他にもいろいろとあると思いますが、ざっと挙げてみました。
「男性商品で男性が買う」、「女性商品で女性が買う」というものは、デザインやプロモーションにおいてはそれほど難しく考えずにすむかもしれません。
問題は「男性商品で女性が買う」、「女性商品で男性が買う」というパターンのものではないでしょうか。
「女性商品で男性が買う」ケースというのがあまり思いつかないのですが(なので「プレゼント全般」としました)、「男性商品で女性が買う」というケースは見てきたようにかなり頻繁にあります。日用品などになると特にそうです。
購入者が女性だからといって女性に受けそうなデザインをするのはもちろん間違いで、かといって完全に男性寄りでよいのかというと、そうとも限らないです。
ポイントは、以下の2つだと考えます。
- その商品で相手が喜びそうか
- その商品を相手に使ってほしいか
説明しましょう。
まず、「その商品で相手が喜びそうか」という観点で考えると少しわかりやすいのではないでしょうか。
たとえば何度も例に出てくる「ビール」。
最近では女性向けの可愛らしいパッケージデザインのビールも多数あります。が、奥さんが旦那さんにビールを買って帰る場合、ファンシーなパッケージデザインのビールを見て旦那さんは喜びそうでしょうか。いまいち喜びそうにないですよね。「なんでこれにしたの?」と思ってしまいそうです。
それに単純に、ガッツリ呑みたい女性からしても男性商品であるビールを買うのにファンシーなものを買うということも考えづらいですよね。ファンシーなビールを呑む人は、あまりお酒に強くなさそうというか、量を呑まなそうですよね。
ファンシーなパッケージデザインのビールがいまいちヒット商品となりづらいのはこういったことが考えられるわけです。
つづいて、「その商品を相手に使ってほしいか」という観点で考えてみます。当たり前の話ですが、女性から見て「自分が使うなら可愛くて素敵」と感じるものを相手の男性に使ってほしいでしょうか。「私が着るならかわいい服」を男性に着てほしいでしょうか。
それはないですよね。なので、当たり前ですが、女性が買うからといって男性商品なのに女性ターゲットのデザインにするのは間違っているわけです。
さらに、異性に対して何かを買う場合、「こういうものを使っている男性がいいな」とか「自分の奥さんにはこれを使ってほしい(これが似合う女性であってほしい)」とか、ある種の願望が入ることが考えられます。
ここがデザイン的に難しいところなのですが、「男性商品なのに女性が買う」場合にしろ、「女性商品なのに男性が買う」場合にしろ、「僕(私)のイメージ(≒理想)の人になってほしいからそれを買う」という要望に応えられるデザインが要求されるわけです。
ちょっと抽象的で難しいかもなので、極端な例を出します。
奥さんが旦那さんに洋服を買ってくるとします。旦那さんはHIPHOP好きでストリート系の服装が好きだけど、奥さんはナチュラルな感じの無印良品などで揃えたようなスタイルが好きだとすると、奥さんの願望が入ったナチュラルな服を買ってくる可能性があるということです。
もちろん「その商品で相手が喜びそうか」という観点はあります。なので実際には「折衷案」となりうるものを購入してくる。つまり、旦那さんの要望も奥さんの要望も外さないデザインが求められるということです(このケースの場合そんな洋服があるかは疑わしいですが)。
なので、男性商品だからといって単純に男性向けにデザインをすればいいかというと、そういうわけにもいかないし、購入者が女性だからといって女性向けにデザインをしてもうまくいかない。どちらの切り口からも考えなければならない、というわけです。四象限でわざわざ表現したのは、それを理解するためです。
話がわかりづらくて恐縮ですが、まとめます。
- 「男性商品」「女性商品」というものがある
- 「男性商品」「女性商品」は、単純に購入者が誰か、という話ではない
- 「男性商品」「女性商品」は、単純に使用者が誰か、という話でもない
- 「男性商品」「女性商品」は、使用シーンを連想するとイメージが湧きやすい
- 「男性商品」か「女性商品」かを考えないデザインやプロモーションをすると売れない
- デザインやプロモーションは「男性商品or女性商品」と「購入者が男性か女性か」の2軸で考える必要がある
- 「男性商品だけど購入者が女性」は注意が必要、男性商品だから男性向けにデザインをすればいいというわけではないし、購入者が女性だから女性向けにすればいいわけでもない
- 上記の逆(女性商品だけど購入者が男性)もまた然り
こんな感じでしょうか。
ちなみに余談ですが、「女性商品で男性が買う」って相当ハードルが高いです。特に私にとっては。。。代表的な例は「女性に花をプレゼントする」ではないかと思います。
以前、結婚記念日にヨメから電話があり、「花くらい買ってこい」と言われたことがあります。私は会社の近くの花屋さんで「観葉植物」を買いました。花だとすぐに枯れてしまうけど、観葉植物ならば上手に育てたら長持ちするからです。
家に帰って観葉植物を受け取ったヨメが、怒り気味にひとこと言いました。
「草じゃねーか!」
このパターン(女性商品で男性が買う)の場合、「相手が喜びそうか」は個人的にはめちゃくちゃ難しいと感じています(汗)。私の中では花は「女性商品」、観葉植物は「男性商品」です。
あ、そういえばもうすぐ結婚記念日。。。
今回はここまでです。
津久井
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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