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暖かくなってきました。花粉症、大丈夫でしょうか。
私はこの時期の花粉症ではないので、今のところは「鼻と喉が多少不快」という程度で済んでいます。
来週月曜日、3月13日から、いよいよ「もともと任意だったマスク着用が任意に」なります!
まあそれでも多少メディアで報道されているので前進してはいるのかもしれません(いまだにマスクなしの不安を煽っているところもあるようですが)。
なんでこの時期なのかを下衆の勘繰りで考えてみると、花粉症の時期だからじゃないかなと思います。
ほら、日本人って同調圧力に弱いでしょ。コ□ナ気にしていない人でも花粉症だからマスクしないと辛い、という人は一定数います。
そうすると、「あ、まだみんな外さないんだな。じゃあ私もー」みたいな意思の弱い人も一定数出てきてしまいます。こういうのを狙ってそうな気がするんだよなー。
「マスクなしの人を嫌がる人もいるから」という意見もあると思うけど、それは本当の優しさではなく甘やかしだと思う。こういう考えをしている限り「嫌だと主張したもん勝ち」の世の中がつづきます。優しさと甘やかすことはぜんぜん違う。
というわけで今週のコロコロニュース。
馬鹿だからでも悪意があるからでもなく命令だから(誰からのかは調べて)
鳥インフルで鳥が死ぬと困るので1羽でも出たら全部殺処分します(爆)
さて、本題です。
今日は「ネーミング」について。またしても長いです。あまりに長いので2週にわけてお話しますね。
●ネーミングの重要性
このコラムでは何度かお話していますが、ワタクシ休日は子どものサッカーのコーチをやっております。かれこれ6年以上。これが結構忙しくて、土日はまるまる潰れることもザラ。
それはさておき、サッカーのコーチをやっていて自分の時代との違いを感じることがあります。
それはいろいろなことに「名前がついている」ということです。
たとえば、サッカーにはドリブルで相手を交わして抜き去るときに使う「フェイント(ひっかけ)」というものがあります。
これ、いろいろなフェイントがあるのですが、その多くは私がサッカーをやっていた学生時代から存在するものです。
しかし、名前はなかったんですよね。
キングカズこと三浦知良さんが得意な、ボールに触るふりをしてまたぐだけ(触らない)フェイントは私たちの時代はそのまま「またぐ」とか「またぎ」とか呼んでいました。ところが、今は「シザース(はさみの意)」というネーミングがされているんです。
他にも
- ダブルタッチ
- マシューズ
- シャペウ
- エラシコ
- ヒールリフト
などなど。
フェイントの名前以外にもウェーブ(大回りして動く)とかギャップ(敵と敵の間)とか、さまざまな名前がつけられていることをコーチをしていると実感します。
私たちの時代はサッカー用語はせいぜい「スルーパス」という言葉(名前)が、私が大学生のころに新しく出てきたくらいだったとうろ覚えですが記憶しています。
ワタクシのヒーロー中田英寿が試合でスルーパスを出しまくり、そのころ日本が初のワールドカップ出場を果たしたこともあり、「スルーパス」は一気に認知されることとなりました。
余談ですが私が組んでいたメジャーデビューしかけたバンド名が「スルーパス」でした。サッカー同好会のメンバーとつくったため(笑)。
キャプテン翼が流行ったのは、「ドライブシュート」とか「タイガーショット」とか「スカイラブハリケーン(実際にやったらファール説あり)」とか、男の子が興奮する(何かしら感じてしまう)技の名前があったからだとマジメに思っています。
まあこれはマンガの話ですが、現実のサッカーにおいて名前をつける(名前がついている)ということは、当時はそう多くなかったと思います。
ちなみに少し話が飛びますが、マイケル・ジャクソンがダンスの中でよくやっていた「ムーンウォーク」ってありますよね。
あれ、マイコー(マイケル)が開発したと思っている人が多いと思いますが、そうではないらしいです。もともとあったそうです。
ただ、名前が「バックスライド」だったんです。
流行ったのはもちろんマイコー(マイケル)ほどの人がやったからという媒体力があると思いますが、あの技が持っているイメージも含め、「バックスライド」というただの説明的なネーミングよりも「ムーンウォーク(月を歩く)」のほうが人々の記憶に深く突き刺さったことは間違いないでしょう。
あの技の本当の開発者の人、「どんまいける」という感じです。
さて、サッカーの話に戻ります。
名前があることによってコーチである私にどんなメリットがあるかというと、それは
- 格段にコーチングしやすい
ということです。これが何を意味しているか。
それは言語化の重要性です。
ネーミングはすなわち言語化のひとつの手法であり、しかも上手なネーミングをつければ相手に格段に伝わりやすくなる効果を生みます。
考えてもみてください。インターネットで何かを検索するとき、名前がないもの、名前を知らないものは非常に検索しづらい。
私たちがインターネットで多くのお仕事をいただけるのは、企業のシンボルに「ロゴマーク」という名前があるからです。これがあるから検索されて探してもらえる。
名前がないものはとても検索しづらいです。質問が文章になっているようなものはまだあまり検索できません。なのでヤフー知恵袋のような人的質問サイトがいまだにあるわけです。
おそらくGoogleは単語がなくても検索できるような仕組みを今後生み出していくだろうと思います。けど、今の時点では名前(単語)がないものは検索精度は高くありません。
まあ最近では、「ChatGPT」というAI搭載のチャットボットというものができました。質問を文章で入れるとAIが回答してくれるというものです。つまり「名前」がなくても必要な情報を教えてくれるというものです。
が、これもAIに何を学習させるか、それを誰がするかでいくらでも作為的な結果を跳ね返すことができてしまいます。
さて、名前がないと困るのは検索だけではありません。
子どもにお使いを頼むとしましょう。たとえば「かたくり粉」を買ってきてもらう。「かたくり粉」という名前を使わずにこれをやろうと思うとどうなるか。
「白い粉買ってきて」
もうこれだけでイリーガルな感じがしますが(笑)、「白い粉」は他にも
- さとう
- しお
- 小麦粉
などありますし、はたまた洗剤を買ってきてしまう恐れもある(場合によってはイリーガルなものも。。。笑)。
つまり、かたくり粉を買ってきてもらおうとしたら
「その白い粉は食べ物である」
「その白い粉は料理にとろみをつける」
という説明を付け加えなければならず、しかもスーパーに並んでいる商品のどれが「食べ物にとろみを付ける白い粉」なのかは、その場で体験できない(使ってみることができない)からわかりません。
もうコミュニケーションの量が膨大になり、めちゃめちゃになっちゃうわけです。そうすると生産性が著しく低下します。
「何をアタリマエのことを偉そうに語っているんだ」と思うかもしれませんが、逆に言えば御社はさまざまなことにどれだけ名前をつけられていますか?
商品やサービスの名前はもちろんのこと、会社で起こるさまざまな事象や社長の理論など、それらに名前がついている=言語化できている会社の生産性はできていない会社に比べ格段に高いはず。
名前をつけるということは相手に何かを伝える上でコミュニケーションの量を圧倒的に圧縮できるということなんです。
先ほどのかたくり粉の例では、かたくり粉の機能や特徴を伝える以上のコミュニケーションは特に必要ありませんでしたが、ネーミングには機能や特徴を伝える以上の情報量を伝える力があります。後述しますが、機能だけではなく、ある特定のイメージを持たせることもできます。
たったひとこと、短い単語でおどろくほどの情報を伝えることができる。上手なネーミングにはこのような効果があります。
●ネーミングの種類は3種類
私が考えるに、ネーミングには3種類あります。
- コンセプト型ネーミング
- 語感型ネーミング
- ハイブリット型ネーミング
ざっくりの説明をすると、
- コンセプト型ネーミングは「目で感じる」ネーミング
- 語感型ネーミングは「耳で感じる」ネーミング
- ハイブリット型はその両方を持ち合わせたネーミング
です。もう少し詳しく見てみましょう。
1.コンセプト型ネーミング
「料理の鉄人」という人気番組をご存知でしょうか。今はもう放送されていませんが、3人の「鉄人」と呼ばれる料理人にさまざまな料理人が料理対決を挑む番組です。
この「料理の鉄人」がまさにコンセプト型ネーミングです。
「料理の鉄人」と聞くとなんとなくイメージが浮かびませんか?
- 男性っぽいな
- すごい修行を積んだ凄腕料理人
- なんか腕組みとかしてそう
- すごく厳しそう
このように「料理の鉄人」は「料理がものすごい上手な料理人」というよりもはるかに多くの情報量を含んでいます。しかも何らかのイメージ(≒画)を伴います。なので、耳から入るけど「目で感じる」ネーミングです。
「コンセプト型」とありますが、「コンセプト」は私の定義ではイメージを言語化したものです。
なのでイメージ ≒ 画(え)や映像を伴うものがコンセプトになります。
以前、とんねるずの番組でやっていたコーナーで「キタナシュラン」というものがありました。これは「汚いけど旨い飲食店」を紹介するコーナーです。
「汚いけど旨い店紹介コーナー!」というコーナータイトルだったらどうでしょう。それと比べて「キタナシュラン」はどうですか?
おわかりかもしれませんが、これはあの「ミシュラン」をもじったネーミングです。そこには、本物の人や通(つう)の人が認めている、というイメージや格付けの最高峰感などが内包されています。
そして誰でも1軒ぐらいは知っているような汚くて旨い店が映像として浮かびませんか?
これがコンセプト型ネーミングです。
コンセプト型ネーミングは商品やサービスの名称にもなりますが、事象につけられることが多いかもしれません(後述します)。
コンセプト型ネーミングでつけられた名前には、比較的男性が反応することが多いと考えます。
2.語感型ネーミング
以前、弊社スタッフが教えてくれました。「ギャランドゥ」の秘密について。。。
主に男性の体毛、特にへそ辺りの下腹部のオケケを「ギャランドゥ」というわけですが、そもそもこの「ギャランドゥ」はご存知かもしれませんが西城秀樹さんの歌の歌詞の一部です。
それがなぜ回り回って男性の下腹部のオケケを表すことになったのかは諸説あるそうですが(ユーミンがラジオで広めた説が有力)、この「ギャランドゥ」は作詞作曲をしたもんたよしのりさんが曲づくりの過程で勝手につけた意味のない言葉なんだそうです。「Gal & Do」ということのようですが、たしかに文法的には意味不明です。
しかし、もはや男性の下腹部のオケケは「ギャランドゥ」で定着した感がありますよね。意味がわからない言葉なのに。
これは語呂や語感から感じるイメージが「それらしい」から定着したと考えます。男性の下腹部のオケケのイメージとギャランドゥの語感のイメージが「らしさ」でつながったということです。
このように「耳で感じる」ネーミングが語感型ネーミングです。
詳しくは来週お話しますが、子どもが食べそうなお菓子に「パ行」がよく使われたりします。
この語感型ネーミングはなにかの事象に名前がつけられるというよりも商品やサービス、ブランドなどのネーミングになることが多いです。
語感型ネーミングは女性と子どもが反応することが多いと考えます。
3.ハイブリット型ネーミング
1と2を併せ持つネーミングがハイブリット型ネーミングです。
実は先ほどお話した「キタナシュラン」などは正確にはハイブリット型だと考えます。「シュラン」の部分に語感の良さを感じるからです。
この「キタナシュラン」、後にコーナー名が変わってしまいます。なんと「ミシュラン」からクレームが来たそう。「ミシュラン」とはひとことも言っていないのに「ミシュラン」だと感じてしまうわけですから改めて秀逸です。
で、改名後はどうなったかというと「キタナトラン」です。「汚い」と「レストラン」の掛け合わせ。
どうですか?「キタナトラン」よりも「キタナシュラン」のほうが語感がよくないですか?しかも「キタナ」と合わさると「トラン」が「レストラン」だと分かりづらいし。
イメージが浮かび(目で感じる)、語感の気持ちよさも感じる(耳で感じる)、なので「キタナシュラン」はハイブリット型というわけです。
さて、1にしろ2にしろ3にしろ、ネーミングは「感じる言葉®」になっているかが重要です。
考えて知覚するのではなく、感じてしまうということです。「料理にとろみを付ける白い粉」は考えて知覚することはできても何も感じません(まあ「かたくり粉」からも何も感じませんが)。
相手に感じさせたら勝ち。感じる言葉®をつけられるかどうか、聞いた人がどのくらい自然と感じてしまうかが良いネーミングかどうかの指標となります。
●コンセプト型ネーミングは市場をつくる
長くなるので今週はこの章までにしたいと思いますが、もう少しだけお付き合いください。
数年前に流れていたアリエールという洗濯洗剤のTVCMの中で次の言葉が出てきました。
「男脂臭」
「おとこのあぶらのにおい」と書いて「男脂臭」。「ひえー!おれのことか!」と思うと同時に、ある意味唸ってしまいました。なぜ唸ってしまったか。
「名前をつけやがった!!」
と思ったからです。
つまり、アリエールのメーカーであるP&GやP&Gの取引先である広告代理店のプランナーは名前をつけるということの意味、意義、価値、効果を知っていたわけです。
ちなみに余談ですが、P&GのCMを担当しているのはバンド「スルーパス」のボーカル(つまり元メンバーで友人)というウワサがあります(広告代理店勤務)。彼はパンテーン(同じくP&G)のCMで「#HairWeGo(ハッシュタグヘアーウィーゴー)」というプランを企画し、何かの生意気な賞を取っていました(笑)。
話をもとに戻します。「男脂臭」はまさにコンセプト型ネーミングなわけですが、このネーミングで何を狙っていたのかというと私の予想ではおそらく「市場形成」です。
コンセプト型ネーミングにより名前をつけるという行為は、
- フワフワとした何か
- でも確かにそこに存在していそうな何か
の存在を確定させる「存在証明」のようなものです。名前がついたとたんに「それ」は存在を認められ市民権を得だします。
たとえば、「コ□ナ変異株」にそれぞれ名前をつけようとするのも、「新しい恐怖市場」をつくることに一役買っています。ちなみに2019年(コ□ナ前)だけでコ□ナは12,000回くらい変異しているという話ですけどね。もともとそういうウイルスだし。だから風邪のワク●ソは絶対につくれないと私自身小学生のころから聞いてたし。
別の例を挙げましょう。「2.5次元ミュージカル」というものをご存知でしょうか?
2.5次元ミュージカルは原作がアニメや漫画、ゲームなどのものが、舞台化されたもののことを言います。
- 漫画、アニメ、ゲーム(2次元)
- ミュージカル(3次元)
の中間を取って「2.5次元」とファンから呼ばれるようになったそうです。「テニスの王子様」という漫画がありますがこれが2.5次元ミュージカルの代表作。
名前がつくことにより存在が確定し、新しいジャンルができあがりました。
コンセプト型ネーミングはこのように「事象」や「ジャンル」みたいなものにつけられることが比較的多いですが、事象に名前がつくと(つけると)、ビジネスでいえばそこに「市場が形成」されることがあります。
先ほどの「男脂臭」はその狙いを感じたので個人的にすごさと恐ろしさを感じたわけですね。まあ、あまり流行らなかったので、ネーミングがいまいちだったか広告費の投下量(露出)が少なかったんでしょうけども。
たとえば、
- メタボ
について考えてみましょう。言わずと知れたメタボリックシンドロームですね。「おれ!メタボだ!」という「名前を伴った自覚」をしたとたん、
- 病院に行く
- フィットネスに通う
- ヘルシア緑茶を飲む
- その他
つまり、メタボを一括りにした市場が誕生するわけです。
「中年太り」ではダメ。そこまでの強さがネーミングにありません。「自然現象」のように「感じて」しまう。メタボリック「シンドローム(症候群)」ですもの。ヤバイ感じがしますよね。
- クールビズ
なんかも同様ですね。
「涼しく過ごすためのファッションです」
「クールビズファッションです」
名前になっていることによって伝わるものが全然違います。クールビズもファッション業界はじめひとつの市場をつくりましたね。
他にもざっと、市場を創出したんじゃないかという名前を挙げてみたいと思います。
- アキバ系
- 婚活
- 妊活
- イクメン
- 育休
- スマホ
- 女子会
- アラフォー
- 韓流
- ガーデニング
- サプリメント
- ハラスメント
「ガーデニング」は簡単にいえば「庭いじり」です。でも「庭いじり」ではなく「ガーデニング」だから市場が生まれたというこの禅問答みたいな事実。。。
「イクメン」なんて「子育てする男性(メンズ)」ですよ??(コトバンクより引用)
「それただの父親ちゃうんか」と突っ込みたくなりますが、「イクメン」だから反応する人がいてムーブメントを起こしたり何らかの経済活動が生まれるからすごいですよね。
男性の「育休」なんてもはや社会現象です。仕事を休むことすら正当化されてしまう。昔(江戸時代とかそれより前)の人からした意味がわからないと思います。「子ども育てるから仕事しません」という話ですからね。昔の農家さんとかからしたら「そんなことしてたら生きていけない!」みたいなことですものね。
これも不思議な話で、別に育休がダメというわけではないですが、名前がついていることによってその正当性みたいなものまで担保されるのはネーミングの妙だと思います。
「ハラスメント」なんかもすごいネーミングです。「ハラスメント」をつければ上司のほうが悪いというイメージを感じさせる力がありますからね。「スチュワーデス物語」なんてどうなっちゃうんだろ(古い)。
さて、相変わらず長いコラムで恐縮ですが、さらにさらに来週につづきます。
今回はここまでです!
津久井
投稿者プロフィール
-
ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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