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本日は、青森県は八戸市に来ております。
八戸は5回目。特に3回はこの1年の間に来ております。八戸出身の経営者の先輩に、こちらの企業の経営者の方を紹介いただいたり。
いい街ですね、八戸。ご飯もおいしいしお酒もおいしい。
というかですね、出張に行くたびに思うのですが、八戸が〜、とか、どこどこが〜というよりも、東京のご飯がまずいのではないかと最近は考えています。
もちろんそれなりのお金を払えば美味しいものも食べられますが、リーズナブルな金額で同じかそれ以上のクオリティのものを出張先では食べられるんですよね。
東京と地方で食べ物の違いがあるとすれば、それは「素材」です。地方は圧倒的に素材がいいので、特別な調理をしなくてもおいしいわけです。
そういう意味では、東京は東京でがんばってはいるんですね。「素材」をカバーするために「調理」のレベルが上がります。創作的な料理はたしかに東京のほうが多いですもんね。
素材が悪かったからこそ、ソースのクオリティがあがり文化にまでなったフランス料理みたいなものですね。
しかし、どんなに調理技術が上がったり新しい調理方法が確立されても、やはり素材の良さに勝てない部分もあると思うんです。だって、どんなに美味しくされたってコオロギは食べたくないですよね。
知ってました?今、食糧難を「演出」されてコオロギを食べさせられそうになっているの。ここまでバカにされても日本人はまだ政府のいうことを聞くんですかね。
ワク◯ソを安全だ、政府がウソをつくわけがない、という人は、次はコオロギもどうぞ。
ネットに書かれていましたが、私たちの祖先が、イナゴは食べてもコオロギは食べなかったのには理由があるはずですし、「長い歴史の中でほとんど食べられてこなかった」という事実だけで他の理由はいらないと思います。
というわけでコロコロニュース。本日はFacebookより3本。
それでは本日のお話。
本日は「ヒット商品を生む【境界線】」のお話を、あの有名バンド「米米CLUB(R-35かもですが)」を題材にお話します。
●ただの「イロモノバンド」??なぜ売れたのか?
米米CLUBってご存知ですかね?若い方だといまいちわからないとか、親が聞いていたよ、という方もいるかも知れません。
こちらの曲を聞けばわかるのではないでしょうか?
はい、浪漫飛行という米米CLUBの代表曲とも言える大ヒットナンバーです。これは若い人でも知っているんじゃないかな。
浪漫飛行は、私が中学2年生のときの曲です。1990年の曲なので、今から33年前!そんなに経つのかとちょっと涙目になりますが、当時はこれで米米CLUBというバンドを知った人が大半だったのではないでしょうか。
しかし、米米CLUBは実は結成は1982年です。つまり、浪漫飛行が出たのは結成してからだいぶたった8年後のことなんです。
ワタクシ、浪漫飛行の前から米米CLUBを知っていたんです。たぶん小学校の4年生か5年生のころです。友人が米米CLUBが大好きで、家に遊びに行ったときに聴かせてもらいました。
正直、何が良いのかさっぱりわからなかった。。。なぜなら、Wikipediaにも載っているのですが、当時は「イロモノバンド」感がものすごく強かったからです。
おまけに曲調はファンク。ドラゴンボールのエンディング曲とかをテレビにラジカセをくっつけて録音していたような私にとって、コミックバンドのような歌詞とファンクの融合など意味がわからないわけです。
今思えば音楽をやっていた人間からすると高い楽曲の作曲能力と演奏能力があると分かるのですが、当時は無理でした。教えてくれた友人もだいぶ「変わったやつ」でしたし(笑)。
ちなみにこの曲はご存知ですか?
「FUNK FUJIYAMA」という曲です。この曲を聴くと、「イロモノ感」という意味が少しわかるかもしれません。
この曲は当時テレビCMで使われていて、インパクトがでかくてよく覚えていました。1989年にリリースされているようですね(Wikipedia先生より)。私が中1のとき。小学校のときの記憶がありますが記憶違いのようでした。
こちらがそのCM(You Tubeにありました)。
まあ、この曲なんかはCMでも使われていたしちょっとおもしろいと当時も感じたのですが、もっと他にもマニアックな曲があったと記憶していて、総合的に見てイミフ(意味が不明)だと感じていました。
そんな「イロモノバンド」がなぜ売れたのか。「浪漫飛行」が発売されるまでは、おそらくボーカルのカールスモーキー石井さんのカリスマ性が大きかったのではないかなと感じます。
なぜなら、社会人になってから同年代の女性(一部男性も)で「米米CLUBのファンだった」という方がかなり多いということを知ったからです。というか、カールスモーキー石井さんのファンという感じですかね。
当時のカールスモーキー石井さんはこんな感じでした(写真はこちらから出典させていただきました)。
どうでしょう?「たしかにかっこいい、けど別に普通じゃない?」と感じるかもしれません。一昔前のホストっぽい感じ。
しかし、今の時代だとそれほど珍しさを感じないかもしれませんが、当時はかなり衝撃的だったのだと推察します。
想像してみてください。まだトラディショナルなヤンキーたちが暴走族として走り回っている旧時代(?)です。大人の男は大体角刈りかパンチーパーマか七三分け(偏見?笑)。
そんな「男ってのはよー!」みたいな時代に、ピアスを開けている男なんて!!服装も当時の人達からみたら「チャラチャラしている」という印象だったはず。
ある意味前衛的なファッションとか存在感で、新しいポジションを生み出したのがカールスモーキー石井さんだったと私は推測するのです。
●「浪漫飛行」の制作秘話に隠された「ヒットの境界線」
という感じで、とにかく当時の男たちからしたら意味がわからないファッションや存在感で、意味がわからない歌を歌っているバンド、しかしカールスモーキー石井さんのカリスマ性で一部の人たちから強烈に支持される、それが米米CLUBだったと私は考えています。
先日、そんな米米CLUBの面白いエピソードを仕入れました(どこでだったか忘れました汗)。それは「浪漫飛行」の制作過程での話です。
実は、「浪漫飛行」を制作、発表することについて、メンバーのほとんどが反対だったらしいです。
なぜかというと、それは「売れ線の曲」だったから。悪い言い方をするならば、「商業的音楽」だからということで、自分たちのアイデンティティを崩してまで売れたいのか、という葛藤がバンド内であったということです。
カールスモーキー石井さん以外は全員ほとんど反対。その結果、なんとレコーディングにはバンドメンバーの中でカールスモーキー石井さんしか参加しなかったそうです(ドラムの人がちょっと手伝ったらしいですが)。
浪漫飛行、もう一度聞いてみてください。実はコーラスもカールスモーキー石井さんが自分でやっているんです。
これって、非常に示唆に富んだ話だと思うんですよね。
たとえば私自身の話で恐縮ですが、やはりバンドをやっていたときに同じような葛藤を持っていました。
私たちのバンドは人見知りが過ぎてお客さんをあまり呼べなかったし、対バン(同じライブにでるバンド)の人たちとも仲良くなれなかったのですが、とにかく「業界関係者」からの評価は高かったんです。
「業界関係者」というのは、ライブハウスの店長やスタッフ、音楽プロデューサー、対バンで出た他のバンド、一部の音楽好きなどです。こういう人からは「このバンドはすごい!」と言われていました。
だから人を呼べなくても仲良くなれなくても「自分たちが正解」と勘違いしていました。
しかし、残念ながら商業的成功はしませんでした。そこには「大きな溝」があったと感じています。言い換えるならば「レベルが高いことと売れることとは別の問題だ」ということです。
私たちのバンドは、人見知りな上にスノッブな感じ(鼻についてマウントしてくる感じ)でした。「わかるやつだけわかればいい」という思いがどこかにあったんだと思います。「売れるためにダサいことはしたくない」と思っていました。
いや、正確に言うと私は「売れてから好きなことやればいいじゃん」と思っていたし実際にメンバーにもそう伝えていましたが、他のメンバーはそうではありませんでした。
あるとき、レコード会社(たしかBMG)の人に言われました。「英詞じゃなくて(私たちはカッコつけだったので英語で歌っていた)日本語の歌詞にしたらデビューさせてあげてもいい」。
ボーカルはじめみんなきっぱりと断っていました。そんなダサいことできるかと。というか、ボーカルは日本語のセンスがなさすぎて歌詞を書けなかったんだと思いますけども(笑)。
「英詞じゃなくて日本語の歌詞ならデビューさせてやる」、これはまさに芸術性と商業的成功の話です。
私たちは「芸術性が高ければ売れる」と思っていた。カールスモーキー石井さんは、しっかりと商業的成功を取りに行った。
私たちのバンドは「良い商品をつくってさえいれば売れる」といって売り方を考えていないのとまったく同じでした。良い商品だからといって売れるとは限らないのです。「良い商品をつくってさえいれば・・・」は思考停止なのです。
しかし、では音楽で言うところの「芸術性」を求めなくてもよいのか、「良い商品」をつくろうとしなくてよいのか、というとそれも違うわけです。
なぜなら、そんなもの(芸術性のない音楽やたいして良くない商品)は世の中にありふれているからです。
ではどうすればよいのか。そこで出てくる法則が「MAYA段階」というものです。
●人は新しいものが「好き」で「怖い」
芸術性と商業的成功の間には「大きな溝」があるとお話しました。これは、「感性のライン」と言い換えてもよいです。
たとえばお笑い芸人さんも、本当に面白いものとお茶の間が求めている笑いの違いを理解しています。ゴールデンタイムの笑いと深夜番組の笑いが違うのと同じです。「楽屋ネタ」みたいなものがあることがそれを物語っています。
私は長くデザイン業界にいますので、たとえばパッケージデザインにしても広告のデザインにしてもまったく同じ「大きな溝」「感性のライン」を感じてきました。音楽活動のときと同様に、私たちが良いと思うものと一般の人が良いと思うものに差がある、溝があると感じていたのです。
「いったいこれは何なんだろう?」とずっと思っていましたが、あるときに「MAYA段階」というものを知ってそれが一気に解決しました。
「MAYA段階」はある英文の頭文字を取ったものです。
- Most Advanced Yet Acceptable
この英文を訳すなら、「受け入れられるか受け入れられないかギリギリの前衛、先進性」みたいな意味です。Wikipediaには
とあります。
パッケージデザインや広告のデザインにおいてはデザイナーの感性が正しいかというと一概にそうとは言えず、これらの「ツールミッション」を考えたときに、それは「売れる」ですから、結果(売れたかどうか)を持ってしか正しさは証明できません。
しかし、デザイナーは自分の感性を信用しすぎます。ただでさえ芸術性を求めてしまいがちなポジションの人たちが、消費者を置き去りにした感性を発揮してもやはり売れないんですよね。
つまり、「ヒット商品」はこの「MAYA段階」に潜んでいるというわけです。
この「感性のライン」についてずっと漠然と思い悩んでいた中、私がそれに気づくはるか前から「MAYA段階」というネーミングでそれを提唱していたのが、レイモンド・ローウィという昔のデザイナーです(すでに亡くなっています)。
当時、レイモンド・ローウィがデザインした商品はほとんどがヒットしていて、高額でのデザインの依頼がたくさん来ていました(当時の日本円で1億円とかだったかな?)。
- シェル石油のロゴ
- 不二家のロゴ
- ナビスコリッツのパッケージ
- タバコのラッキーストライク
- タバコのピース
他にもたくさんあるんですが、こういったものが彼のデザインしたもので、そのほとんどはまだマイナーチェンジ程度しかされていないものばかりです。
女性は口紅やリップを使うと思いますが、ひねると中身が出てくるあの構造を考えた人でもあります。
私の師匠、故伊吹卓先生は、このレイモンド・ローウィの最後の弟子でした。伊吹先生はデザイナーではありませんが、売れるデザインを研究するに当たり最終的に行き着いたのがローウィだったようです。
以前たまたま購入した本にローウィのことや「MAYA段階」のことが書いてあって、しかもヒット商品の原則は「MAYA段階にある」とまで書いてあってまたまたびっくりしました。
本にはこう書いてあります。
人間はつねに
- 新しいもの好き
- 新しいものに対する恐怖
の両方を抱えている生き物で、心の中で常にこの2つの心理が綱引きをしている状態だと。そして、
- 最適レベルの新しさ
を求めている、ということなんだそうです。
言い換えれば、「なじみ感」と「驚き」の両立です。ここが「MAYA段階」だということです。新しさは十分でも売れていなければ「なじみ感」が足りないということになり、「なじみ感」が十分でも売れていなければその商品には「驚き」が必要ということです。
さて、米米CLUBと「浪漫飛行」についてもう一度考えてみましょう。まさに「なじみ感(売れ線の曲)」と「今までにないスタイル(ファッションや存在感)」という、ヒットの素養を十分持ち合わせた楽曲だったことがわかります。
ちなみにうちの両親は、古着屋さんで古いTシャツやGパンばかり買って着ていた高校生のころの私によく言っていました。「なんでそんな汚い中古の服ばかり着ているのか?」と。当時の高校生のセンスを両親はわかっていませんでした。
あるとき、夕飯どきに「また古着ばっかり着て」とたしなめてきた父親が、唐突に言いました。
「いいか、本当にかっこいい男というのはな、カールスモーキー石井のような男のことを言うんだ!」
食べていたご飯を吹き出しそうになりました(爆)
両親は今70歳前後ですから、当時からしてもカールスモーキー石井さんや米米CLUBは両親の「リアルタイム」ではありませんでした(両親のリアルタイムはもっと古い人)。なのであまりに唐突すぎてご飯を吹きそうになったわけです。
では、なぜそんなことを言ったのか。
おそらく、当時の両親にとっての「MAYA段階(受け入れられるギリギリの最先端)」がそこにあったのでしょう。カールスモーキー石井さんのブランディングにまんまとハマったのでした。
私はこれを勝手にカールスモーキー石井さんの武勇伝にしています(笑)。
今回はここまでです。
津久井
投稿者プロフィール
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ロゴ専門デザイン会社ビズアップを2006年に創業。
かつてバンドで大手レコード会社よりCDリリースするも、大事なライブ当日にメンバー失踪、バンドは空中分解。その後「社長になりたい」と思いすぎてヨメの出産5ヶ月前という非常識なタイミングで、各方面から非難を受けながらも独立、5ヶ月でビジネスを軌道に乗せる。
2009年から毎週書きつづけているコラムでは、ブランディングやデザイン、クリエイティブについてかなり独特な視点で切り込む。レインボータウンFMでパーソナリティも務めている。
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